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世界初! 遺伝子操作したブタの心臓を人に移植成功

 更新日:2023/03/27

アメリカのメリーランド大学メディカル・スクールが、遺伝子操作したブタの心臓を人間に移植することに世界で初めて成功したと発表しました。このニュースについて後藤医師に伺います。

後藤礼司 医師

監修医師
後藤 礼司(医師)

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藤田保健衛生大学医学部(現・藤田医科大学)卒業。その後、常滑市民病院、総合大雄会病院にて循環器内科医長、感染症科部長を経て2020年4月より愛知医科大学循環器内科助教。主な研究内容は冠動脈疾患、心不全、感染症。TBS「グッとラック!」、CBCテレビ「ゴゴスマ」などテレビ出演多数。雑誌、新聞などで多くの医療情報を発信している。日本循環器学会循環器内科専門医、日本内科学会総合内科専門医、インフェクションコントロールドクター。

今回発表された内容とは?

今回、アメリカのメリーランド大学メディカル・スクールが発表した内容について教えてください。

後藤礼司 医師後藤先生

アメリカのメリーランド大学医学部の研究チームは、1月10日に遺伝子を操作したブタの心臓を心臓疾患の男性に移植することに世界で初めて成功したと発表しました。重症の心不全・難治性の不整脈合併症例で入院している57歳の男性に対して移植手術がおこなわれました。男性は症状が重いため、通常の心臓移植の対象にならなかったそうで、ほかの治療法では回復が見込めない状態だったということです。

移植に使われたブタの心臓は、再生医療の実用化に取り組むアメリカの企業が遺伝子組み換えによって拒否反応の原因となる4種類の遺伝子を取り除き、さらに6種類の人の遺伝子を挿入した特別な心臓を作って提供されました。移植にあたっては、FDA(アメリカ食品医薬品局)が、人命に関わる疾患でほかに治療方法がない場合に限り承認前の医療技術を使えるようにする、いわゆる「人道的使用」の許可を出したということです。

ブタの心臓の人への移植成功の価値とは?

世界で初めてブタの心臓の人への移植手術が成功しましたが、この価値について教えてください。

後藤礼司 医師後藤先生

人にブタの心臓が移植できたというのは功績としてはやはり大きいですね。心臓移植を待つ患者さんは非常に多く、これからは更に心不全患者さんが高齢社会と共に増えていく「心不全パンデミック時代」に突入します。治療の選択肢が増えることは望ましいと感じます。

今後広く実用化されるためのハードルとは?

今回の移植は、FDAによる「人道的使用」の許可によっておこなわれました。今後この技術が広く実用化されるためにはどのようなハードルがあるのでしょうか?

後藤礼司 医師後藤先生

ブタの寿命は元々15年ほどと言われているため、この技術で移植をされたブタの心臓が人の身体の中でどれくらいの期間機能するのかは、今後の課題として挙げられるでしょう。また、移植については以前に比べると当たり前になってきましたが、まだまだ社会としての受け入れは不十分と考えます。今後、心臓移植の間口を増やすことと併せて、移植に対する理解や動物に対する倫理面の問題もしっかりと検討していかなくてはならないと考えます。

まとめ

今回のニュースで、遺伝子操作したブタの心臓を人間に移植することが世界で初めて成功したことが明らかになりました。今後さらに研究が進み、臓器移植を待つ患者の選択肢が増えることが期待されます。

この記事の監修医師