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iPS細胞からがんを攻撃する細胞作製 新たながん治療として期待【世界初】 

 公開日:2023/04/07
iPSからがん攻撃細胞 世界で初めて作製

神戸大学の研究グループは、がんを攻撃する「ガンマ・デルタT細胞」をiPS細胞から作製することに世界で初めて成功したと発表しました。このニュースについて上医師に伺いました。

上昌広 医師

監修医師
上 昌広(医師)

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東京大学医学部卒業。東京大学大学院修了。その後、虎の門病院や国立がん研究センターにて臨床・研究に従事。2010年より東京大学医科学研究所特任教授、2016年より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を務める。著書は「復興は現場から動き出す(東洋経済新報社)」「日本の医療格差は9倍 医療不足の真実(光文社新書)」「病院は東京から破綻する(朝日新聞出版)」「ヤバい医学部(日本評論社)」「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか(毎日新聞出版)」。

研究グループが発表した内容とは?

今回、神戸大学の研究グループが発表した内容について教えてください。

上昌広 医師上先生

今回紹介する研究は神戸大学らの研究グループによるもので、2023年3月23日に学術誌「Stem Cell Reports」に掲載されました。研究グループは、様々な種類のがんを攻撃することが知られているガンマ・デルタT細胞を世界で初めてヒトiPS細胞から作製することに成功しました。ガンマ・デルタT細胞は、元となった細胞の提供者とは他人の関係にある大腸がん細胞、肝がん細胞、白血病細胞を攻撃することが確認されたとのことです。この結果から、ガンマ・デルタT細胞はその元となった細胞提供者以外の人のがん治療に有効であることが示唆されました。

研究グループは今後の展開について「将来的にはガンマ・デルタT細胞をがんに対する免疫細胞療法に用いることが期待されます」とコメントしているほか、「iPS細胞は遺伝子操作をおこなうのが比較的容易なため、その段階で遺伝子操作をおこなうことで、より高機能な免疫細胞療法製剤を作ることも期待されます。具体的には、細胞の活性を上げるような遺伝子操作や、がんや感染症に対するCAR-T療法やTCR-T療法への応用をおこなうことです。いずれも、患者ごとのオーダーメイドではなく、あらかじめ大量製造しておくことで、品質の安定や患者あたりのコストの大幅な低減が見込まれます」と期待感を示しています。

研究の背景とは?

今回の研究がおこなわれた背景について教えてください。

上昌広 医師上先生

ガンマ・デルタT細胞は複数の種類のがんを攻撃することが知られており、患者の正常細胞を攻撃してしまうことがありません。こうした性質をがんの免疫細胞療法に活用しようとする取り組みがおこなわれてきました。しかし、血液から調製すると増幅力に限界があるので、患者ごとに患者自身のガンマ・デルタT細胞を体外増幅して使用できても、提供された血液から本人以外の患者の分のガンマ・デルタT細胞を用意して治療に利用することは実現できていませんでした。研究グループはこうしたボトルネックを解消するために、iPS細胞に着目して研究を実施しました。その結果、ガンマ・デルタT細胞から作製したヒトiPS細胞から、ガンマ・デルタT細胞を作製することに世界で初めて成功しました。

発表内容への受け止めは?

神戸大学の研究グループが発表した今回の研究内容について受け止めを教えてください。

上昌広 医師上先生

基礎的な検討のレベルですが、大きな一歩です。日本が誇るiPS細胞を用いて、新たながん治療が開発される可能性があります。医療従事者として、今後に期待しています。

まとめ

神戸大学の研究グループは、がんを攻撃するガンマ・デルタT細胞をiPS細胞から作製することに世界で初めて成功したと発表しました。将来的には免疫細胞療法に用いることが期待されており、今後の展開にも注目が集まります。

この記事の監修医師