【世界初!】iPS細胞で人工涙腺細胞の作製に成功
大阪大学の研究グループは、「世界で初めてヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から涙腺に似た立体的な組織をつくることに成功した」とイギリスの科学誌ネイチャーに発表しました。このニュースについて荒井医師に伺いました。
監修医師:
荒井 宏幸(医療法人社団ライト 理事長)
大阪大学の研究グループの発表内容とは?
大阪大学の研究グループが発表した内容について教えてください。
荒井先生
今回の研究は、大阪大学の林竜平教授と西田幸二教授らの研究グループによるものです。ヒトiPS細胞から機能的な3次元涙腺オルガノイドを世界で初めて実現したという内容で、4月20日のイギリスの科学誌ネイチャーに発表されました。オルガノイドとは、培養皿の中で幹細胞から作製される生体の臓器に似た培養物のことです。
研究グループでは、ヒトiPS細胞から角膜や結膜を作製することに成功していましたが、涙腺の作製はこれまでに報告がありませんでした。研究グループは作製した3次元涙腺オルガノイドをラットに移植したところ、成熟した涙腺組織へと分化したことが確認されたとのことです。研究グループは、これまで再生が不可能であった立体的な涙腺組織をヒトiPS細胞から作製することが可能となり、重症ドライアイに対する根治的再生治療法の開発が可能となったと評価しています。
今回の発表への受け止めは?
今回の大阪大学の研究グループの発表への受け止めを教えてください。
荒井先生
自己免疫疾患の難病であるシェーグレン症候群などの治療として期待できる研究結果であると言えるでしょう。
治療現場にどのような可能性をもたらす?
今回の研究成果が今後治療現場にどのような可能性をもたらすのか教えてください。
荒井先生
今後、同様な手法で唾液腺の作製も可能になれば、更なる朗報と言えるでしょう。また、早く実際の治療として使用可能となることを願っています。
まとめ
大阪大学らの研究グループがヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から涙腺に似た立体的な組織をつくることに世界で初めて成功したことが今回のニュースで明らかになりました。これまで根治的治療法が存在しなかった重症ドライアイに対する新しい治療法の可能性が生まれたことで今後も注目を集めそうです。