インフルエンザ西日本を中心に感染拡大「注意報レベル」超え 新型コロナとの同時流行はせず
厚生労働省は、1月23~29日に約5000の定点医療機関で報告されたインフルエンザの患者数について発表しました。1機関あたりの報告患者数が10.36人と、「注意報」の水準を超えたことが明らかになりました。このニュースについて郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(医師)
インフルエンザの流行状況とは?
厚生労働省が発表したインフルエンザの流行状況について教えてください。
郷先生
厚生労働省が発表した内容によると、約5000の定点医療機関で1月23~29日の1週間に報告されたインフルエンザの患者数は1月29日時点で5万1219人とのことでした。また、1機関あたりの報告数は10.36人でした。1機関あたりの報告数が10人を超え、4週間以内に大流行が起きる可能性を示す「注意報」の水準を超えました。
都道府県別で1拠点あたりの患者数が多いところを見てみると、最も多かったのが沖縄県で1拠点あたり41.23人でした。警報レベルの1拠点あたり30人という水準を3週連続で超えてしまっています。そのほかにも、福井県の25.38人、大阪府の24.34人、福岡県の21.70人、京都府の20.24人、石川県の17.52人、宮崎県の16.47人、奈良県の13.93人、兵庫県の12.13人、和歌山県の11.51人、高知県の10.04人、佐賀県の12.54人、長崎県の12.26人、大分県の11.90人、富山県の11.31人、青森県の10.47人の西日本を中心とする16府県で注意報の水準を超えました。
厚生労働省は2022年の12月28日にインフルエンザの流行期に入ったと発表しているので、流行入りからわずか1カ月で患者が急増している状況がわかります。
約1カ月で注意報の水準を超えたことへの受け止めは?
インフルエンザの流行入りからわずか1カ月で注意報が出されるほど患者数が増えていますが、現在の状況についての受け止めを教えてください。
郷先生
以前から指摘されていたとおり、インフルエンザの流行がコロナ禍以前のように起こっています。社会活動を再開したことも原因の1つですが、半年前に冬を過ごした南半球でインフルエンザが流行しており、そのウイルスが運ばれて日本の冬に流行することは必然と考えられていたため、予想通りといったところです。また、インフルエンザウイルスが国内に入ってくるとともに、人の流れも活発となっているため、コロナ禍以前と同じような感染拡大が広がっているのでしょう。
加えて、不思議なことに「新型コロナウイルスの流行のピークとインフルエンザの流行のピークは一致しない」という傾向がささやかれています。はっきりとした理由は不明ですが、新型コロナウイルスの流行の第8波がピークを越えてやや落ち着いてきた今、インフルエンザが流行するということはデータどおりです。実際、地域的にも新型コロナウイルスの流行のピークを早く越えた沖縄県などでインフルエンザの流行拡大が早期に起こっています。今後、ほかの地域でも新型コロナウイルス患者の減少とインフルエンザ患者の上昇を同時に観測する傾向はよくみられることが予想されます。
全国的に警報レベルまでインフルエンザの感染が急拡大しているため、本当に注意が必要です。
インフルエンザの感染を予防するためにできることは?
インフルエンザの感染を予防するために、私たちができることを改めて教えてください。
郷先生
この3年間は新型コロナウイルスばかりフォーカスされていて、インフルエンザは軽視されがちとなっています。しかし、インフルエンザも感染してしまうと重症化してしまう可能性がありますし、肺炎や脳炎を起こしてしまって死亡するリスクも存在します。仮にそこまで重症化しなくても、高熱や咳、喉の痛みに加えて、強い倦怠感や関節痛を引き起こすインフルエンザには、是が非でもかからずに過ごしたいところです。
そして、インフルエンザは飛沫によって感染するウイルスです。つまり、咳やくしゃみによって人に感染します。そのため、マスクの正しい着用や手洗いうがいの励行といった以前から言われ続けている感染対策をしっかり取ることで、感染の確率をかなり下げることができます。特に今回のインフルエンザの流行は、コロナ禍を過ぎた後ということで様々な場所に消毒液も設置されていますし、マスクの装着率も非常に高いため、インフルエンザを予防しやすい環境にあります。ぜひとも、これらの環境を活用して、しっかりとインフルエンザの感染予防をしましょう。
まとめ
厚生労働省は、1月23~29日に約5000の定点医療機関で報告されたインフルエンザの患者数について発表し、1機関あたりの報告患者数が10.36人と、4週間以内に大流行が起きる可能性を示す「注意報」の水準を超えたことが明らかになりました。インフルエンザは例年1月から2月にかけて流行のピークを迎えるとされており、引き続き注意が必要です。