4月以降の新型コロナワクチン接種「年1回」「半年に1回」意見分かれる 公費負担継続も検討
1月26日、厚生労働省の専門部会は4月以降の新型コロナウイルスワクチン接種の在り方について議論をおこないました。会議では、現在の体制を維持するよう求める意見が相次ぎました。このニュースについて甲斐沼医師に伺いました。
監修医師:
甲斐沼 孟(医師)
著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。
日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。
新型コロナウイルスワクチンの接種体制をめぐる議論とは?
新型コロナウイルスワクチンの接種体制をめぐり、厚生労働省の専門部会の中で議論された内容について教えてください。
甲斐沼先生
新型コロナウイルスのワクチン接種における患者の費用負担について、現在は特例臨時接種に位置付けられているため、無料で接種がおこなわれています。しかし、2023年の3月末に特例臨時接種が期限を迎えます。期限を過ぎた2023年4月以降の接種体制について、1月26日に開かれた厚生労働省の専門家部会で議論がおこなわれました。
会議では、4月以降における接種の必要性や対象者、接種間隔などが議題となりました。接種の必要性については、「今後のウイルス変異がわからない中で、当面は従来株に由来する成分とオミクロン株に由来する成分を組み合わせた現在の2価ワクチンを打てるようにしておくべき」などの意見が出されました。また、接種対象者については「高齢者をはじめとする重症化リスクの高い人や医療従事者などは接種対象にするべき」などの意見や「当面は希望者を対象に、今の無料での接種を継続するべき」との意見が多くあがりました。接種間隔については、「少なくとも年1回は接種すべきだ」という意見が多く出されたほかに、「半年間隔の接種体制が望ましい」という意見も出ました。
接種体制をめぐる考えは?
専門部会では、年1回間隔にすべきなどの具体的な意見が出されましたが、新型コロナウイルスワクチンの接種体制はどのようにすべきか、先生の考えを教えてください。
甲斐沼先生
新型コロナウイルスの感染拡大抑止を考慮し、社会機能を維持できるワクチン接種の体制を検討した場合には、ウイルス感染が流行しやすい秋から冬の季節にかけて年1回、インフルエンザワクチンと同時期に接種するのが国民の理解が得られやすく、費用対効果の観点からも現実的な路線と考えられます。ただし、これまでの諸研究によって判明している新型コロナウイルスに対するワクチン抗体価の持続効果を考慮すると、年2回の半年ごとの接種が重症化予防や死亡率低下につながりやすいという意見も、十分に納得できるところです。
自己負担が増えた場合の懸念は?
新型コロナウイルスワクチンの接種が無料接種ではなく患者の自己負担が生じる形になった場合、どのようなことが懸念されるでしょうか?
甲斐沼先生
新型コロナウイルスに対する今後のワクチン接種体制に関しては、特に貧困家庭などを中心に物価高などの影響で家計に重い負担がかかっている経済的状況下では、ワクチン費用の公費補助が減少して自己負担を強いられると接種自体が困難になると予測されます。目の前の生活で手一杯な状況下では、毎日の暮らしを無事に送ることが何よりも大事という考えになるでしょう。たとえ新型コロナウイルスに対してワクチン接種ができなくても、普段の生活の中で手指衛生やうがい励行、定期的な換気などの感染予防策を徹底し、罹患(りかん)しないように配慮して乗り切るしかなくなると考える人も少なからず存在すると想像できます。
厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、2023年5月に「2類」から「5類」へ移行する議論に合わせて、公費負担による無料でのワクチン接種を従来通り継続するかどうかに関しても今年度中に結論を出すとしています。今後もワクチン接種を希望する人ができるだけ少ない負担で接種しやすい環境を行政の立場からも構築してくれることを願っています。
まとめ
1月26日、厚生労働省の専門部会は4月以降の新型コロナウイルスワクチン接種の在り方について議論をおこなったことが今回のニュースでわかりました。政府は今年度中には接種のあり方を決める方針で、今後の動きに注目が集まります。