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新型コロナ後遺症 オミクロン株感染で「睡眠障害」訴える人増加、被害は従来株の2倍以上に

 更新日:2023/03/27
新型コロナ後遺症 オミクロン株による睡眠障害は従来株の2倍超

岡山大学病院が新型コロナウイルスの後遺症について調査した結果、睡眠障害の症状を訴える人の割合が従来株の2倍以上多くなっていることがわかりました。こちらのニュースについて郷医師に伺いました。

郷 正憲医師

監修医師
郷 正憲(医師)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。

岡山大学病院による調査結果とは?

岡山大学病院が発表した新型コロナウイルスの後遺症についての調査結果を教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回の調査は、岡山大学病院が2021年2月に開設した「コロナ・アフターケア外来」という新型コロナウイルスの後遺症に関する専門外来を、2022年末までに受診した526人を3つのグループに分類して実施されました。それぞれのグループは、新型コロナウイルスの従来株のグループ115人、2021年夏から流行したデルタ株のグループ133人、2022年初めから流行したオミクロン株のグループ278人に分けられました。調査の結果、後遺症のうち睡眠障害を訴えたのが従来株のグループでは12%、デルタ株のグループでは13%だったのに対して、オミクロン株のグループでは27%となりました。また、 倦怠感や頭痛、呼吸困難感を訴える人の割合も従来株やデルタ株のグループと比べて、オミクロン株のグループの方が多い結果となりました。その一方で、従来株やデルタ株で症状を訴える人が多かった嗅覚障害や味覚障害については、オミクロン株のグループの方が症状を訴える人の割合は少なくなりました。

睡眠障害とは?

岡山大学病院の調査結果で、従来株と比べてオミクロン株の感染者は睡眠障害を訴える割合が高くなったとのことですが、睡眠障害とはどのような状態を指すのでしょうか?

郷 正憲医師郷先生

睡眠障害とは、睡眠に何らかの問題がある状態のことで、いくつかの種類に分けられます。睡眠障害の中で最も多いと言われているのが「不眠症」です。不眠症になると、眠りにつくことが難しかったり、途中で起きてしまうなどが原因で必要な睡眠時間が十分に取れなかったりして、睡眠不足によって生活に支障が出てしまいます。不眠症のほかには、夜に十分な睡眠時間をとっているのに日中に強い眠気が発生して生活に支障をきたす「過眠症」、体内時計のリズムがズレてしまい、夜間に十分な睡眠が取れなくなってしまう「概日リズム睡眠覚醒障害」、寝ている時に呼吸が停止するなどの症状が出る「睡眠時無呼吸症候群」などがあります。

今回の調査結果の受け止めは?

今回の岡山大学病院の調査結果に対する受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

流行がオミクロン株に置き換わって軽症化したと言われていますが、やはり後遺症は一定数存在しており、新型コロナウイルスはただの風邪ではないというデータが蓄積されてきました。今回の調査結果も、そのうちの一部と言えるでしょう。また、これまでの株は、味覚障害や倦怠感、頭痛、「ブレインフォグ」という思考の障害が後遺症としてみられていたのに対して、オミクロン株ではそれらの症状が出現する割合が減ったということは少し安心できるデータと言えます。しかし、睡眠障害は以前の後遺症の症状と比べて見た目上軽い症状に思えますが、睡眠障害によって引き起こされる様々な疾患があることを考えると、決して軽視できる問題ではありません。

睡眠障害の症状がみられる場合は、無理せずに睡眠導入剤を使用するといった対策を講じましょう。睡眠時間をしっかり確保することで、睡眠不足による合併症を避けることができると考えられています。もしオミクロン株流行期に新型コロナウイルスに感染した人は、睡眠に違和感を覚えたら早期に心療内科や精神科で相談することをおすすめします。

新型コロナウイルスが広がり始めてから既に3年経っており、多くのことが分かってきましたが、後遺症については初期型ですら3年分しかデータが蓄積されていないため、今後どのような症状が出てくるのか分からないのが恐ろしい点です。例えば、麻疹の場合はワクチンを打たないと、治癒したと思った数十年後にいきなり脳炎を発症することが分かっています。新型コロナウイルスも同様に、遠隔期に突然発症する重篤な合併症がないとは言えませんので、やはり感染しないに越したことはありません。そして、ワクチン接種で後遺症が少なくなるという確実なデータもありますから、新型コロナウイルスワクチンの接種は重要であると考えられます。基本的な感染対策を継続していきましょう。

まとめ

岡山大学病院が新型コロナウイルスの後遺症について調査した結果、睡眠障害の症状を訴える人の割合が従来株の2倍以上多くなっていることがわかりました。新型コロナウイルスの後遺症に悩む人は少なくないので、今回のような調査結果は注目を集めそうです。

この記事の監修医師