新型コロナ致死率、60~70代で0.18% 大幅に減少「インフルエンザと大差ない」
12月21日、厚生労働省は2022年7~8月の新型コロナウイルスの流行「第7波」において、致死率が減少したことを発表しました。このニュースについて甲斐沼先生にお話しを伺います。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
新型コロナウイルスの致死率などの最新情報は?
新型コロナウイルスの流行は依然として続いていますが、致死率についての最新情報を教えてください。
甲斐沼先生
現在、新型コロナウイルスの流行は「第8波」に突入しています。2022年7~8月の流行「第7波」に関するデータが12月21日、厚生労働省より発表されました。第7波では、オミクロン株の一種である「BA.5」と呼ばれるウイルスが主流でした。
厚生労働省は石川、茨城、広島の3県の新型コロナウイルス患者のデータを分析して、重症化率や致死率についての報告をおこないました。この報告によると、第7波の感染者数における致死率は60~70代で0.18%、80代以上で1.69%だったとのことです。デルタ株が流行していた第5波(2021年7~11月)の致死率は、60~70代で1.34%、80代以上で7.92%だったため、オミクロン株の流行に伴い、大幅な減少があったことが分かりました。
また、季節性インフルエンザの致死率は60~70代で0.19%、80代以上で1.73%であるため、第7波における致死率と大差はありません。これらは集計方法が異なるため単純比較はできませんが、新型コロナウイルスの感染症法の位置付けを「2類」から「5類」へ引き下げる議論がおこなわれている中、今回のデータは判断材料の1つとなっていくことが考えられます。
第7波における致死率低下の要因は?
新型コロナウイルスの流行「第7波」では、なぜ致死率が大幅に減少したのでしょうか?
甲斐沼先生
第7波における致死率の低下には、様々な要因が組み合わさっていると考えられています。現在流行しているオミクロン株がこれまでのデルタ株と比べてウイルスの病原性が低下したことや、自然感染やワクチン接種によって多くの人が免疫を獲得したことなどが致死率の低下に影響していると言えるでしょう。なお、今後については、新しい変異株の出現、致死率や重症化率が再び上昇することがないかなどに注目していく必要があります。
新型コロナウイルスの致死率低下についての受け止めは?
今回の新型コロナウイルスの致死率が低下したという報告についての受け止めを教えてください。
甲斐沼先生
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けについて議論が進んでいる中で、その判断根拠としてウイルスの病原性(症状の重篤性)と感染力、あるいは国民への影響を考慮する必要があります。病原性の指標となる重症化率と致死率については、2022年12月21日に開催された厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告された結果によると、「病原性が一定程度低いオミクロン株が流行主体となったこと、自然感染やワクチン接種で多くの人が免疫獲得したことで、重症化率や致死率がウイルス流行の発生初期と比べて低下した」と指摘されました。
重症化率や致死率が低下した原因としては、ワクチン接種の普及や治療効果、感染による免疫獲得、ウイルス自体の弱毒化などの複合的効果が推測されており、今後の新型コロナウイルスに関する政策や行動指針を考えるための参考情報につながる重要なデータと言えるでしょう。
ただし、データを分析する際に数字の評価方法が統一されていない部分もあるので、直接的に単純比較するのは適切ではないと考えます。また、現在の第8波の流行下においては、感染力が強く医療機関への負荷が大きい現状が認められており、引き続き医療ひっ迫を予防する観点からも徹底した感染対策を講じる必要があるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスのオミクロン株「BA.5」が主流となった第7波において、致死率が大幅に減少したことが今回のニュースで分かりました。今後、このデータをもとに、新型コロナウイルスの感染症法の位置付けに変更があるのか注目が集まります。