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新型コロナ“5類相当引き下げ”議論加速「分類見直しを速やかに検討する」

 更新日:2024/03/08
新型コロナ分類見直し本格検討

厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類見直しに向けた議論を本格的に始めています。このニュースについて甲斐沼医師に伺いました。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

新型コロナウイルスを巡る分類見直しとは?

新型コロナウイルスを巡る、感染症法上の分類見直しの動きについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

現在、新型コロナウイルスは通常の感染症法上の分類からは独立した「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられています。入院勧告が可能になったり、医療費やワクチン接種が公費負担となったりしていますが、重症化率が低下していることが指摘され、5類への変更を求める声が上がっています。

11月30日に開かれた厚生労働省のアドバイザリーボードでは、加藤厚生労働大臣が「感染力の状況や最新のエビデンスに基づき、総合的に早期に議論を進めたい」と述べ、新型コロナウイルスの感染症法上の分類の見直し検討に向けて、現在の病原性や感染性などに関するリスク評価を示すよう求めました。

さらに、国会で成立した改正感染症法の付則に、新型コロナウイルス感染症の分類見直しを「速やかに検討する」と明記されており、季節性インフルエンザと同じ5類への緩和も視野に入れた見直しの議論が本格化しています。12月2日の記者会見で、加藤厚生労働大臣は「新型コロナウイルスの分類そのものは当面維持しつつ、専門家の意見も聞きながら総合的に検討を進めたい」と分類変更に向けた議論を加速させる考えを示しています。

感染症法上の分類とは?

感染症法で規定されている分類について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

感染症法では、1類から5類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分けられています。「1類感染症」はエボラ出血熱などが該当し、入院等の対人措置や消毒などの対物措置、交通制限等の措置が可能になります。「2類感染症」は結核などが該当し、入院等の対人措置と消毒等の対物措置が可能になります。「3類感染症」はコレラなどが該当し、就業制限等の対人措置、消毒等の対物措置が可能になります。「4類感染症」は狂犬病などが該当し、動物への措置を含む消毒等の措置をとることができます。「5類感染症」はインフルエンザや梅毒、麻疹などで発生動向調査が実施できます。

また現在、新型コロナウイルスが分類されている新型インフルエンザ等感染症は、入院等の対人措置、消毒等の対物措置が可能になるほか、政令により1類感染症相当の措置も可能になったり、感染した恐れがある被地に対する健康状態報告要請や外出自粛要請などの実施が可能になったりします。

新型コロナウイルスを巡る分類見直しへの受け止めは?

新型コロナウイルスの感染症法上の分類の見直しへの受け止めを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

パンデミック当初、新型コロナウイルスの特性が分からなかったため「2類相当」と規定されていましたが、2020年の2月に法改正で5つの類型に入らない「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられて、外出自粛要請や緊急事態宣言に伴う強い行動制限など通常の2類感染症よりも厳しい措置が採択されていました。

その後、「第6波」や「第7波」で拡大したオミクロン株は従来株と比べて重症化率が低い傾向にある、あるいはオミクロン株対応ワクチンの接種が広まっていることなどを受け、感染者の療養期間が見直されて、感染者の全数把握も簡略化されるとともに空港や検疫所での水際対策も緩和されました。

こうした経緯があり、2022年12月2日に成立した改正感染症法の付則に新型コロナウイルスの法律上の位置付けについて速やかに検討する規定が追加されたことによって、厚生労働省は季節性インフルエンザと同様に新型コロナウイルスの感染症法上の扱いを5類へ引き下げることも含めて、本格的に議論が開始されています。

議論が進む新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けに関しては、「新型コロナウイルス感染症の重症度、疾病としての対応状況が現行の法律上の位置付けと矛盾しており、感染症法上の分類の見直し議論を加速すべきである」と提案されており、そのうえで新型コロナウイルスの伝播性、疾患としての重症度、社会や医療へのインパクトを評価することが重要であると考えられます。仮に、新型コロナウイルスが5類相当となった場合には、原則として感染症指定医療機関に限られている入院患者の受け入れが一般の医療機関でも対応可能になり、流行拡大時には従来より病床のひっ迫度合いは軽減することが期待されます。

まとめ

厚生労働省が、新型コロナウイルスの感染症法上の分類見直しに向けた議論を本格的に始めていることが今回のニュースでわかりました。新型コロナウイルス対策にも大きな影響が出る議論なだけに今後も注目が集まります。

この記事の監修医師