塩野義製薬の新型コロナ飲み薬100万人分追加購入 厚生労働省「取り扱い機関も拡大」
塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」について、厚生労働省は新たに100万人分を購入する契約を結んだと発表しました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
ゾコーバを巡る動きとは?
塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」を巡る動きについて教えてください。
甲斐沼先生
加藤勝信厚生労働大臣は12月13日の閣議後の記者会見で、塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」を追加で100万人分を購入する契約を結んだと発表しました。厚生労働省は11月22日にゾコーバを緊急承認しており、その際に塩野義製薬と100万人分の供給契約を結んでいました。当初、「ゾコーバ」を取り扱えるのは全国2900の医療機関などに限られていましたが、12月15日からは実績がなくても都道府県が選んだ医療機関や薬局で取り扱いを認めています。
12月12日時点で、約4800施設が取り扱い機関として登録されています。塩野義製薬は今回新たに契約を結んだ追加分について、年内に納品する予定としています。加藤厚生労働大臣は追加契約について「今後、感染が拡大した場合でもゾコーバを必要とする人に対して、より確実に処方することが可能となる」と述べています。
新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」とは?
新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」について教えてください。
甲斐沼先生
「ゾコーバ」は、塩野義製薬が開発した軽症者や無症状者向けの新型コロナウイルスの増殖を抑制する治療薬です。感染初期に1日1回、5日間自宅などで服用することで重症化を防ぐ効果が期待されています。最終段階の治験は、重症化リスクがない人やワクチンを接種した人を含めた12歳から60代までの軽症から中等症の新型コロナウイルス患者1821人を対象に、2022年2月から7月中旬まで実施されました。治験では1日1回、5日間「ゾコーバ」を服用するグループと、服用しないグループに分けられ、「ゾコーバ」を服用したグループでは咳や喉の痛み、鼻水・鼻づまり、けん怠感、発熱・熱っぽさの5つの症状が7日前後で全てなくなりました。また、「ゾコーバ」を服用したグループは服用していないグループと比べて、5つの症状がなくなるまでの時間が約24時間短くなったとのことです。また、投与を始めて4日目の段階でウイルスの量が大きく減少したほか、重篤な副作用はなかったということです。
さらに塩野義製薬は、「ゾコーバ」の使用状況や副作用に関する市販後調査の中間報告を公表しています。報告によると、11月24日~12月4日までに推定1024人の患者が使用し、そのうち5人から頭痛や下痢などの症状の訴えがありました。その際、重篤な副作用は報告されなかったとのことです。年齢別でみてみると20~50代の使用者が最も多く、全体の75%を占めています。
「ゾコーバ」の追加購入契約について受け止めは?
今回発表された「ゾコーバ」の追加購入について受け止めを教えてください。
甲斐沼先生
「ゾコーバ」は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、新型コロナウイルスの増殖を抑制することができる作用を有しており、感染者に対する新たな治療選択肢として期待されています。今回の追加購入で日本政府の購入量は計200万人分となりました。「ゾコーバ」を安定的に必要とする方々へ届けることができるよう、年内に追加数量分が順調に流通され、都道府県が選定した薬局などでも取り扱えるように引き続き協力機関との連携を推進していくことが重要なポイントとなるでしょう。
まとめ
塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」について、厚生労働省は新たに100万人分を購入する契約を結んだと発表しました。感染拡大の第8波による需要増加への備えるための契約ということで、必要な人にスムーズに提供される助けになりそうです。