新型コロナワクチン「無料接種」2023年3月末で終了か、有料化に向けた議論を開始
新型コロナウイルスワクチンの接種が開始してから現在まで、全額公費負担で無料接種ができていましたが、その期限が2023年3月末に迫っています。12月13日、厚生労働省では2023年4月以降の公費負担を含めた接種方針について議論を開始しました。このニュースについて中路先生にお話を伺います。
監修医師:
中路 幸之助(医師)
新型コロナウイルスワクチンはどうして無料で接種できるの?
現在、新型コロナウイルスワクチンが無料接種となっている理由について教えてください。
中路先生
日本の予防接種は「予防接種法」という法律に基づいて実施されています。予防接種には、市区町村が主体となり公費負担(無料または一部負担)で受けられる「定期接種」と、希望者が自己負担(有料)で受ける「任意接種」があります。新型コロナウイルスワクチンは、2020年12月の法改正に伴い、予防接種法上の「臨時接種」として位置付けられました。感染症のまん延を防ぐことを目的に、国が費用を全額負担をして接種を進めてきました。新型コロナウイルスワクチンの無料接種の期限は来年2023年3月31日までとなっているため、4月以降も公費負担の接種を続けるべきかを決める必要があるのです。
新型コロナウイルスワクチン公費見直し議論のポイントは?
新型コロナウイルスワクチンの公費見直しについて、どのような点が議論のポイントとなっているのか教えてください。
中路先生
現在の新型コロナウイルスワクチンは、まん延防止措置のために「臨時接種」と位置付けられたとお話ししましたが、「引き続きこの臨時接種をおこなうべき理由があるのかどうか」という点が議論のポイントとなります。今後、ワクチンの有効性や海外の接種状況などを踏まえて、接種対象者や実施時期、回数など具体的な方向性を決めていくことになります。
また、今後の予防接種の位置付けを決定するためには、新型コロナウイルスの感染症法上の分類を変更するかどうかも考えていかなければなりません。現在は感染症法で危険度が2番目に高いとされる「2類」相当とされていますが、これを季節性インフルエンザと同等の「5類」へ引き下げるべきかの議論がされています。
現在、インフルエンザのワクチンは、希望者が自己負担で受ける「任意接種」ですが、65歳以上の人などは全額公費(無料)での接種が可能となっています。新型コロナウイルスも5類へ引き下げとなれば、治療費は一部自己負担となるため、ワクチン接種にかかる費用も一部自己負担へ変更になる可能性が高まります。
新型コロナウイルスワクチン有料化の問題点は?
新型コロナウイルスワクチンが有料化になると、どのような問題があるのでしょうか?
中路先生
もし、有料化すると新型コロナウイルスワクチンの価格は1万9700円となります。そして、今後もウイルスの変異が続く可能性があり、それに伴いさらなるワクチンを打つことになるとなると、かなりの患者負担となるでしょう。
また、病院もワクチンを自費購入することになります。キャンセルが入ればその分は廃棄せざるを得なくなり、その分がマイナス経営となり医療経済上の問題も出てくるでしょう。そのため、接種率が低下することが考えられます。ワクチン接種率が低下することで再び感染が拡大したり、重症者率や死亡率が上昇したりする可能性があるのか、今の段階では明言することは難しいですが、これまでのデータをもとに今後の方向性について検討していく必要があります。
一方で2021年度の新型コロナウイルスワクチン接種に2兆3396億円もの費用がかかったことが財務省の発表によって分かっています。今後も公費負担でのワクチン接種を続けていくとなると、国の財政に大きな影響を及ぼすことも事実です。感染拡大のリスクと財政確保の問題、これらを踏まえた慎重な判断が迫られています。
まとめ
12月13日、厚生労働省が新型コロナウイルスワクチンの公費の見直しについて議論を開始したことが今回のニュースで分かりました。2023年4月以降も公費負担での無料接種が継続するのか、希望者による自己負担での接種になるのか、今後の議論の行方に注目が集まります。