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絶滅危惧「センザンコウ」から新型コロナに類似のウイルス発見

 更新日:2023/03/27
新型コロナウイルス

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。終息の気配は見えず、今もなお世界各国で感染が拡大しています。

しかし、新型コロナウイルスがどこからやってきたのか、どのような性質を持つのか現在のところはっきり分かっていない部分は多々あります。そのため、世界の研究機関は新型コロナウイルスの解明とワクチンや抗ウイルス薬の開発を急ピッチで進めているのが現状です。

そんな中、中国の研究者たちは「センザンコウ」とよばれる動物を介して新型コロナウイルスがヒトに感染するようになったのではないかとする調査結果を発表しました。
そこで今回は、「センザンコウ」と新型コロナウイルスに関して詳しく解説します。

成田 亜希子 医師

監修医師
成田 亜希子 医師

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弘前大学医学部卒業後は、内科医として勤務。また、国立医療科学院でも研修を積み生活習慣病や感染症予防などの公衆衛生分野の知見を習得。日本内科学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本公衆衛生学会の各会員。

「センザンコウ」から新型コロナウイルスを発見?

成田 亜希子 医師成田先生

センザンコウは聞きなれない動物かもしれませんが、非常に固いうろこを持ち、外敵に接すると丸くなって身を守るアルマジロのような哺乳類です。南アジア、中国、台湾、アフリカなどに分布しているとのこと。センザンコウのうろこや胎児は古くからリウマチに効く漢方薬の成分として利用され、高額で売買されることもあるとか…。密猟も多く、中国では絶滅危惧種に指定されています。

現在、新型コロナウイルスがヒトに感染をするようになった経緯は解明されていませんが、多くの研究者たちは何らかの野生動物によって人間界に持ち込まれた可能性が高いとして、新型コロナウイルの発祥地とされる中国武漢市の市場を中心にさまざまな調査が進められています。

そして香港大学などの研究グループが、センザンコウから新型コロナウイルスと非常によく似た遺伝子を持つウイルスを発見したと発表しました。

「コロナウイルス」は自然界に広く存在する?

「コロナウイルス」とは、哺乳類や鳥類に広く存在するウイルスです。表面に王冠(コロナ)のようなたんぱく質を持つことから「コロナウイルス」との名称がつけられていますが、本来は風邪をひき起こすウイルス。コロナウイルスには多くの種類がありますが、その中のどれかが変異して生まれたのが新型コロナウイルスなのです。

コロナウイルスは自然界に広く存在しますが、元々はコウモリが持っており、コウモリから別の動物に感染。そして、その動物からヒトへ感染することが分かっています。そのため、新型コロナウイルスもコウモリから何らかの動物に感染し、それがヒトに感染したと考えられているのです。

センザンコウから新型コロナウイルスを発見?

香港大学の研究グループは、センザンコウが持つコロナウイルスの遺伝子はヒトに感染するコロナウイルスの遺伝子と84.85%の高い割合で一致することを明らかにしました。
また、元々コロナウイルスを持つとされるコウモリから検出されるコロナウイルスの遺伝子とは80.78%で一致するとのこと。

成田 亜希子 医師成田先生

このような調査の結果から、新型コロナウイルスはセンザンコウからヒトに感染したのではないか?との仮説が立てられたのです。

今回、輸実際、中国武漢市ではセンザンコウの肉を食す習慣があり、さらに発祥地とされる市場内で野生動物の売買を行うエリアから新型コロナウイルスが検出されたとの情報もあります。

現在、センザンコウはワシントン条約で取引が禁止されていますが、密猟が後を絶たず、劣悪な環境で飼育・売買されているセンザンコウも多いとのこと…。そのような中で新たなコロナウイルスが生まれてしまった可能性も否定できないでしょう。(※)

※参照:WWFジャパン「密輸の犠牲になるセンザンコウ」
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/3395.html

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