健康な子どもの死亡例がオミクロン株流行で急増「子へのワクチン接種が大人の責務」
新型コロナウイルスに感染した子どもの死亡例が全国で確認されています。国立感染症研究所の発表によると、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例のうち、約半数は基礎疾患がなかったことが分かりました。このニュースについて郷先生にお話しを伺います。
監修医師:
郷 正憲(医師)
新型コロナウイルスによる子どもの死亡例の特徴は?
新型コロナウイルスによって死亡した子どもには、どのような特徴がみられたのでしょうか?
郷先生
国立感染症研究所の発表によると、20歳未満の新型コロナウイルスによる死亡者数は2022年1~8月の間で41例確認されました。年齢の内訳は、0歳が8例、1~4歳が10例、5~11歳が17例、12~19歳が5例、年齢不明が1例です。性別の内訳は、男児が23例、女児が18例です。オミクロン株が流行する前の昨年末時点では、20歳未満の子どもの死亡例は3例だったため、オミクロン株流行に伴い子どもの死亡例も急増したことが分かります。
今回死亡が確認された41例のうち、内因性死亡(外傷などのない疾病による死亡)が明らかな29例の調査がおこなわれました。調査によると、医療機関到着時の症状として発熱(79%)、吐き気や嘔吐(52%)、意識障害(45%)などがみられました。また、発症日の確認がとれた26例のうち、発症から死亡までの日数が1週間未満だった者の割合は73%と高く、特に発症後1週間以内は症状の経過観察が重要であると考えられます。
基礎疾患のない健康な子どもが新型コロナウイルスによって死亡する可能性は?
基礎疾患のない健康な子どもでも、新型コロナウイルス感染によって死亡する可能性があるのでしょうか?
郷先生
前述の国立感染症研究所の調査によると、新型コロナウイルスで死亡した29例のうち、基礎疾患があった子どもは14例、基礎疾患がなかった子どもは15例(5歳未満が6例、5歳以上が9例)でした。つまり、基礎疾患のない健康な子どもでも死に至る可能性は十分にあるということが読み取れます。
また、基礎疾患がなく死亡したケースでは、意識障害や吐き気、嘔吐、痙攣などの症状が多くみられました。新型コロナウイルスの代表的な症状である呼吸器症状以外にも、子どもの場合は意識障害などによる神経症状や嘔吐などの全身症状にも注意を払う必要があると考えられます。
子どもを新型コロナウイルスから守るためには?
子どもを新型コロナウイルスにから守るために、保護者としてできることはあるのでしょうか?
郷先生
新型コロナウイルスが流行り始めたときの状況を思い出していただきたいと思います。以前は感染力が強く、重症化したらあっという間に肺が冒されて人工呼吸器をつないでもなかなか助からない悪魔のウイルスと言われていました。そして、厳格な感染対策をした上でワクチンの完成を待っていました。ワクチンの完成と前後して、デルタ株という非常に重症化率の高いウイルスに変異したので、大急ぎでワクチンを接種し始めました。すると次は、ワクチンが国民にある程度行き渡ったところでオミクロン株という感染力が更に強い一方で重症化率が弱まったウイルスに置き換わったため、ワクチンの普及と並行して油断が生まれてきました。
これら経過は全て大人の事情で、子どもは置いてけぼりな状況でした。「子どもは新型コロナウイルスにかかっても重症化しにくいから大丈夫」「まずは重症化する大人からワクチン接種」という風潮がありましたが、子どもも重症化しにくいというだけで全く重症化しないわけではありません。そして、オミクロン株は弱くなったといっても、あくまでも「デルタ株に比べて」というだけで、初期型のウイルスと比べると重症化率はそこまで変わらないと言われています。つまり、ワクチンを打っていない子どもは初期の頃に新型コロナウイルスを恐れていた大人と同じ状況に置かれているのです。そして案の定、重症化しにくいと言われていても重症化しないわけではありませんから、感染する子どもの数が増加するのに併せて死亡例も残念ながら出てきてしまいました。
新型コロナウイルスによる死亡例を減らすためには、やはりワクチン接種が必要であると考えます。さらにワクチンは後遺症を抑える効果も認められています。たしかに、ワクチンによる副反応や遠隔期の副作用の可能性は否定できませんが、感染したときの重症化リスクや後遺症リスクと比べたら圧倒的に低い確率です。不幸な転帰を辿る子どもを少しでも減らすためにも、ワクチンを接種して感染しても重症化しにくいような体にしてあげるとともに、感染する母数をなるべく減らしてあげることが大人の責務と言えるでしょう。まだワクチンを接種させてあげていない子どもがいらっしゃるなら、今からでも接種を検討してください。
まとめ
新型コロナウイルスによる子どもの死亡者数の約半数が基礎疾患のない健康な子どもであったことが今回のニュースで分かりました。特にオミクロン株の流行に伴い、子どもの死亡例が急増しています。子どもを新型コロナウイルスから守るためには、保護者のワクチンに対する正しい理解が重要であると言えるでしょう。