「サル痘」国内2人目の感染確認 日本の検査・治療体制はどうなっている?
国内2人目のサル痘感染者が確認され、感染症法での分類や国内における検査・治療体制がどのようになっているのか注目を集めています。この記事では、我が国のサル痘の対応について甲斐沼先生が解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
サル痘の感染症法上の分類は?
最近ニュースに取り上げられることが増えてきたサル痘が、感染症法ではどのような分類がされている病気なのか教えてください。
甲斐沼先生
WHO(世界保健機関)によると、サル痘は欧米などの75の国と地域で1万6000人余りの感染者が確認されており、日本国内でも7月末時点で2人の感染者が確認されています。感染症法の1類~5類感染症、指定感染症の6種類のうち、サル痘は4類感染症に分類されています。4類感染症は、狂犬病やマラリアなどの病気も分類されているグループとなります。4類感染症とは、人から人への感染はほとんどありませんが、動物や飲食物などの物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与える恐れのある感染症です。感染症法に基づく措置について、基本的に無症状者への入院勧告や就業制限、外出自粛要請などはおこなわれません。また、4類感染症に該当するサル痘に関しては、一般の医療機関で対応して医療保険が適用される診療区分となっており、自己負担分も一部請求されます。
国内での治療・検査体制は?
サル痘に対する国内での治療や検査体制について教えてください。
甲斐沼先生
サル痘の早期検査体制については作業が進んでおり、政府は全国の地方衛生研究所にサル痘の検査試薬などを送付していて、各都道府県での検査が可能となっています。また、サル痘に感染した場合、ヨーロッパなどでは「テコビリマット」という経口治療薬が承認されていますが、日本国内ではいまだに未承認です。そのため、政府は未承認の薬を治療に使えるかを調査する特定臨床研究という枠組みを使って、東京都の国立国際医療研究センターと愛知県の藤田医科大学病院、大阪府のりんくう総合医療センター、沖縄県の琉球大学病院の4カ所でテコビリマットを投与できるようにしています。
その一方で、サル痘の感染予防として天然痘ワクチンの接種が期待されています。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、天然痘ワクチンはサル痘に対して約85%の発症予防効果があり、ウイルスに接してから14日以内に接種すれば、重症化を防ぐ効果も期待できるとしています。日本でも厚生労働省が7月29日に開かれた専門家部会で、天然痘ワクチンをサル痘の発症予防にも使えるようにする適応拡大を了承しています。
サル痘の感染対策は?
国内でも2人の感染が確認されているサル痘ですが、感染を防ぐための対策について教えてください。
甲斐沼先生
サル痘は、1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めてヒトへの感染が確認されました。オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症で、中央アフリカから西アフリカにかけて流行しており、我が国では感染症法上の4類感染症に指定されています。リスなどの齧歯類(げっしるい)、サルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染すると言われており、「感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触」「感染者と対面した際の飛沫の長時間曝露」「感染者が使用した寝具などとの接触」が主要な感染経路と認識されています。
そして、天然痘ワクチンによって約85%の発症予防効果があるとされていますので、ワクチン接種も1つの感染対策の手段となるでしょう。また、サル痘の流行地では感受性を有する動物や感染者との接触を避けることが重要です。齧歯類やサル・ウサギなどの動物との接触、感染が疑われる人の飛沫や体液との接触を避けたり、手指衛生を徹底したりして感染予防対策を心がけましょう。万が一、感染が疑われる際には、直ちに医師の診察を受けてください。
まとめ
国内2人目の感染が確認されたサル痘について、全国の地方衛生研究所にサル痘の検査試薬などを送付していて、各都道府県での検査が可能となっているほか、研究目的でテコビリマットという経口治療薬を投与できる施設が4カ所用意されていることが今回のニュースでわかりました。サル痘への警戒が強まっている中で、こうした検査・治療体制について事前に確認しておくことが大切です。