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【サル痘】発症予防目的で「天然痘ワクチン」の適応拡大を了承

 更新日:2024/03/08
サル痘発症予防目的で天然痘ワクチン使用の適応拡大を了承

厚生労働省は7月29日に開かれた専門家部会で、天然痘ワクチンをサル痘の発症予防にも使えるようにする適応拡大を了承しました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

専門部会が了承した内容とは?

7月29日に開かれた厚生労働省の専門部会が了承した内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

今回紹介するニュースは、7月29日に開かれた厚生労働省の専門家部会で議論されたサル痘の予防に関するものです。サル痘の感染者は欧米を中心に拡大しており、WHO(世界保健機関)は、これまでに欧米などの75の国と地域で1万6000人余りの感染者が確認されていると発表し、7月には「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しています。日本国内でも、7月末時点で2人のサル痘の感染者が確認されています。専門家部会は、熊本市のKMバイオロジクスが生産する天然痘ワクチンの適応拡大を了承しました。日本ではテロ対策として天然痘ワクチンが備蓄されており、厚生労働省によると「十分な量を確保している」とのことです。

天然痘ワクチンとは?

今回、サル痘ウイルスへの予防目的での使用が了承された天然痘ワクチンについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

天然痘ワクチンは、天然痘の予防や症状の軽減を目的とするワクチンです。天然痘ウイルスと同じ属のポックスウイルス科オルソポックスウイルス属ワクシニアウイルスを弱毒化して作成された生ワクチンで、予防接種を適切に実施すれば善感者における有効率はほぼ100%です。曝露後、つまり天然痘ウイルスが体内に入った後の予防接種でも、曝露後4日以内であれば感染予防または症状の軽減が可能であるとされています。

接種した部位には予防接種後3日以内に丘疹(きゅうしん)が現れて、6~7日後に疱疹状(ほうしんじょう)となります。もし、こうした反応が現れずにワクチン接種を受けた人が保健所に連絡した場合、保健所が再接種の必要性を判定して再接種をおこないます。

天然痘ウイルスの予防接種の基本方針は、3種類のレベルに分けられています。平常時はレベル1とされていて、原則としてワクチン接種は実施しません。蓋然性上昇時はレベル2に区分され、医療従事者、消防、警察、空港・港湾関係者などの患者や感染者に対応する可能性が高い初動対処要員を対象に実施されます。また、天然痘が発生した国や地域からの入国者などに対しては、発生状況などを考慮した上で必要に応じて実施されます。国内患者発生時はレベル3とされ、国民に対して接触者の調査を踏まえた上で必要な範囲でワクチン接種が実施されます。加えて、医療関係者などに対しても、二次医療圏や都道府県単位で地域を指定するなど、患者等発生状況を踏まえて、必要な範囲について漏れなく実施されることになっています。

天然痘ワクチン使用の意義は?

サル痘への予防目的で天然痘ワクチンが使用される意義について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

厚生労働省は、国内で生産・備蓄している天然痘ワクチンを「サル痘」の発症予防目的にも使用できるように適応拡大を正式に承認しました。WHOは、「ウイルスに感染後4日以内(無症状の場合は14日以内)に1回接種することを推奨しており、天然痘ワクチンはサル痘に対して85%の発症予防効果を発揮する」と認識しています。これまでの研究において、ワクチン接種に随伴する副反応としてごく稀にけいれん発作を引き起こすことがありますが、多くは軽症であり、自然軽快することから前向きな使用を推奨しています。

厚生労働省によれば、天然痘ワクチンは国内で十分な量を備蓄しているということですので、今後はワクチン接種を推進していく上で環境整備、治療薬の普及、検査体制の拡充などを進めることが期待されています。

まとめ

厚生労働省が7月29日に開かれた専門家部会で、天然痘ワクチンをサル痘の発症予防にも使えるようにする適応拡大を了承したことが今回のニュースでわかりました。7月末時点で、国内でも2人のサル痘感染者が確認されており、今後も注視が必要です。

この記事の監修医師