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【世界初】HIV感染症の長時間作用型注射薬が発売

公開日:2022/07/06
世界初 HIV感染症の長時間作用型注射薬

6月27日、ヴィーブヘルスケア社がHIV感染症に対する長時間作用型注射薬を世界で初めて発売しました。このニュースについて武井先生にお話を伺います。

武井 智昭 医師

監修医師
武井 智昭(医師)

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平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

HIV感染症に対する長時間作用型注射薬とは?

今回、ヴィーブヘルスケア社が製造販売するHIV感染症に対する世界初の長時間作用型注射薬について教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

今回のニュースで発表された世界初となる長時間作用型注射薬「カボテグラビル」と「リルピビリン」は、4週に1回または8週に1回の頻度で併用投与するHIV治療薬です。2016年にカボテグラビル注射薬とリルピビリン注射薬を維持療法として併用投与した臨床試験では、抗HIV薬の治療経験がない成人HIV感染者629人を対象に、ART(経口抗レトロウイルス療法)でウイルス学的抑制が得られた後、ARTで継続して治療するグループに対するカボテグラビル注射薬とリルピビリン注射薬の併用療法の4週間隔投与に切り替えたグループの非劣性を検証しています。

その結果、主要評価項目である維持療法期48週時点で、HIVのRNA量が200コピー/ml未満のレベルになるまでウイルス複製を抑制できない場合や、そのレベルを維持できない場合である「ウイルス学的失敗」に該当する患者の割合は、ART投与グループに対するカボテグラビルとリルピビリン併用療法群の非劣性が示されました。さらに、96週時点においても非劣性が継続していたとのことでした。なお、有害事象に関しては長時間作用型注射薬特有のものは認められませんでした。

カボテグラビル注射薬とリルピビリン注射薬の併用療法の対象となるのは、「ウイルス学的失敗がない」「切り替えの6カ月間以上前からウイルス学的抑制が得られている」「両薬に対する耐性関連変異がない」「両薬に禁忌または潜在的な薬物相互作用がない」などの条件を満たす患者に限定されます。

HIV感染症とは?

HIV感染症について教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

厚生労働省エイズ動向委員会の調査によると、日本では2020年1年間の新規HIV感染者は750人、エイズ患者345人で合計1095人となり、日本全体の累積報告数は3万2480人となっています。HIVに感染後、通常は6~8週間経過して、血液中にHIV抗体が検出されます。その後、自覚症状のない時期が数年続き、さらに進行すると免疫が低下して「日和見感染症」と呼ばれる、本来なら自分の力で抑えることのできる病気を発症するようになってしまいます。このようにして、抵抗力が落ちることで発症する疾患のうち、代表的な23の指標となる疾患が決められており、これらを発症した時点でエイズ発症と診断されます。HIVは「性行為による感染」「血液を介しての感染」「母子感染」の3つが主な感染経路となります。

長時間作用型注射薬発売の意義は?

HIV感染症に対する世界初の長時間作用型注射薬が発売される意義について教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

HIV感染症の内服薬により、HIVは10年以内に死に至る致死的疾患からコントロール可能である慢性疾患となりました。その一方で、患者側は長期にわたって内服を継続することによる身体的・精神的なストレスが高いのが現状です。しかし、今回発表された治療薬は、他人からHIV感染者と知られるリスクもなく長期間の間隔での注射薬のため、精神面の負担が軽減されると考えられます。

まとめ

6月27日、ヴィーブヘルスケア社がHIV感染症に対する長時間作用型注射薬を世界で初めて発売したことが今回のニュースでわかりました。HIV感染症の累計患者数は日本でも累計3万人を超えており、今後もHIV感染症に関する新しい治療についてのニュースは注目を集めそうです。