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円形脱毛症の飲み薬として「バリシチニブ」をFDAが初承認

 更新日:2023/03/27
FDAが円形脱毛症の経口治療薬を初承認

FDA(アメリカ食品医薬品局)は、アメリカ大手製薬会社であるイーライリリーの抗炎症薬「バリシチニブ」を、重度の円形脱毛症の経口治療薬として初めて承認しました。このニュースについて竹内先生にお話を伺います。

竹内 想 医師

監修医師
竹内 想(医師)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。専門領域は皮膚科、美容皮膚科。

厚生労働省が発表した内容とは?

今回、厚生労働省が発表した内容について教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

6月13日、FDAは重度の円形脱毛症に対する治療薬として、経口ヤヌスキナーゼ阻害薬のバリシチニブを承認したと発表しました。円形脱毛症に対する経口治療薬をFDAが承認することは初めてのことです。

バリシチニブの毛髪再生についての有効性は、2022年3月にアメリカのイエール大学のブレット・キング氏らの研究グループが電子版「The New England Journal of Medicine」で発表しています。研究グループは、10カ国の169施設で臨床試験をおこない、対象患者にバリシチニブを4mg・2mg、偽薬を投与するグループの3つに分けて臨床試験をおこない、試験期間中はほかの治療を受けないように同意を得て試験を進めました。試験は2019年3月に始まったもの(試験①)と、2019年7月から開始されたもの(試験②)の2つの回に分けて実施され、それぞれ654人と546人の患者が分析対象になりました。

36週時点でSALTスコアと呼ばれる、脱毛が見られない状態の0から頭部全体が脱毛している状態の100までの範囲を表す指標が20以下になっていた患者の割合は、試験①ではバリシチニブ4mg投与グループでは38.8%、2mg投与グループでは22.8%、偽薬投与グループは6.2%でした。試験②の4mg投与グループでは35.9%、2mg投与グループでは19.4%、偽薬投与グループは3.3%となり、2つの試験回ともに有意な差が出ています。

円形脱毛症とは?

円形脱毛症について教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

頭髪に自己免疫反応が起きると、円形脱毛症になるとされています。自己免疫反応とは、体内に異物が入ってきた際に異物を攻撃するTリンパ球が正常な細胞を攻撃してしまう反応で、この反応によって毛根が攻撃されることで髪の毛が抜けてしまいます。ストレスや風邪、睡眠不足、疲労、出産やケガなど、様々な原因が指摘されています。円形脱毛症には複数の種類があり、脱毛が1カ所であれば単発型、2カ所以上は多発型と分類されます。脱毛範囲が頭皮の25%以上になると重症となります。初期の円形脱毛症には、塗り薬や飲み薬で治療をおこなうほか、光線治療をおこなう場合もあります。脱毛の範囲が広くない場合はステロイド局所注射療法がよく用いられます。範囲が広い場合は、局所免疫療法がおこなわれることが多いですが、保険適用がないため対応している医療機関が限られています。

発表内容への受け止めは?

今回、FDAが初めて円形脱毛症の経口治療薬を承認したことについての意義や受け止めを教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

これまで、円形脱毛症に関しては治療選択肢が少なく、日本皮膚科学会の発行する「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」でも「推奨度A:おこなうよう強く勧める」に該当する治療法がありませんでした。とくに、重症例に対する治療は限られていました。今後、国内でもバリシチニブが保険適用で利用可能になる見込みであり、円形脱毛症の治療効果が期待されます。

まとめ

FDA が、アメリカ大手製薬会社であるイーライリリーの抗炎症薬「バリシチニブ」を、重度の円形脱毛症の経口治療薬として初めて承認したことが今回のニュースでわかりました。治療の選択肢が広がったことで、患者にとっては前向きなニュースと言えそうです。

この記事の監修医師