モデルナアームの傾向に関する研究結果を報告、「30~60歳代の女性に出現しやすい」
自衛隊中央病院の研究グループは、モデルナ社製の新型コロナウイルスワクチン接種後に赤く腫れたりする副反応、いわゆる「モデルナアーム」の傾向に関する研究結果をアメリカの医学誌「JAMAダーマトロジー」で報告しました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
研究グループが報告した内容とは?
自衛隊中央病院の研究グループが報告した内容について教えてください。
甲斐沼先生
今回おこなわれた研究は、自衛隊中央病院の東野俊英皮膚科医長らの研究グループによるものです。論文はアメリカの医学誌である「JAMAダーマトロジー」の電子版に掲載されています。調査の対象になったのは昨年、東京・大手町の自衛隊大規模接種センターでモデルナ社製ワクチンの1回目接種を受けた後、2回目接種前に皮膚科医師の問診がおこなわれた約5893人です。このうち「モデルナアーム」が起きた女性は22.4%で、男性は5.1%と、女性が男性に比べて約4倍高い割合であることがわかりました。また、女性は男性より発症日が遅く、症状が継続する傾向も出ました。男女合わせた年代別で見てみると、30歳未満が9.0%と最も低く、30~60歳代は15.8~12.6%と比較的高い結果となりました。70歳以上は10.5%でした。ほとんどの場合は平均5日ほどで症状が治まり、重い症状が出た人はいなかったそうです。
「モデルナアーム」とは?
今回の研究対象になった「モデルナアーム」について教えてください。
甲斐沼先生
「モデルナアーム」とは、mRNAワクチン接種から数日~1週間程度経過した後に、接種した腕の腫れや掻痒感(そうようかん)、発赤などが出現する副反応です。ほとんどがモデルナ社製のワクチン接種後に報告されていることから、通称「モデルナアーム」と言われていますが、ファイザー社製のワクチンでも稀に認められる副反応です。基本的には、数日単位で自然に軽快すると報告されています。副反応が引き起こされる原因は、T細胞という免疫細胞が反応することにより惹起される炎症所見と考えられています。発疹がかゆい場合は患部を冷却する、あるいは抗ヒスタミン剤やステロイド外用薬を塗布すると、症状が改善します。痛みがひどいときは、アセトアミノフェン、もしくはロキソプロフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬の内服で症状が治癒することもあります。
報告内容の受け止めは?
自衛隊中央病院の研究グループが報告した内容についての受け止めを教えてください。
甲斐沼先生
本邦で「モデルナアーム」と呼ばれる副反応は、モデルナ社製新型コロナウイルスワクチンを接種してから約7日経過した後から接種部位の周囲が赤く腫れて、痛みやかゆみが生じます。この皮膚現象は、従来のワクチンに対するアレルギー反応と臨床的特徴が異なっており、これまでどのようにして出現するのかという発症機序が解明されていませんでした。
今回、研究グループによって、モデルナ社製新型コロナウイルスワクチンの第1回目接種を受けた対象症例に対して詳細な問診や所見分析を通じて、ワクチン接種後に遅発性に局所的な副反応の発症有無に関する解析研究が実践されました。その結果、従来よりも高頻度でこの副反応が認められることが判明し、かつ女性および30~60歳代までの年齢層でとくに副反応が出現しやすいことが分かりました。
今回の研究結果で、若年者では比較的「モデルナアーム」になりにくいことが判明したと同時に、他のⅣ型アレルギーと同様の傾向を示していたことから、「モデルナアーム」もⅣ型アレルギーに関連する類似反応であることが想定されます。今後は、さらに対象症例数を重ねて詳細な分析を加えることで遅発性大型局所反応の病態が深く解明されて、より副反応の出現率が少ないワクチンの開発提供に寄与されることを期待しています。
まとめ
自衛隊中央病院の研究グループが、いわゆる「モデルナアーム」の傾向について、女性が男性に比べて約4倍高い割合で発症していたなどの研究結果を報告したことが今回のニュースで明らかになりました。「モデルナアーム」はワクチン接種開始後に大きな話題になっていたので、今回の研究結果も注目を集めそうです。