糖尿病予備軍はアルツハイマー病のリスクが1.3倍に増加
大規模認知症コホート研究に参加した全国8地域在住の高齢者1万人超を対象にした調査の結果、糖尿病予備軍でもアルツハイマー病のリスクが1.3倍に達することが明らかになったと発表されました。このニュースについて工藤医師に伺いました。
監修医師:
工藤 孝文(医師)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
今回発表された内容とは?
今回発表された糖尿病に関する調査の内容について教えてください。
工藤先生
今回の発表は、金沢大学認知症先制医学講座の篠原もえ子特任准教授らによる研究結果となります。全国8地域在住で65歳以上の高齢者1万214人を対象に、糖尿病の有無、HbA1c値、GA値などを調べ、アルツハイマー病(AD)や血管性認知症の発症との関連を検討しました。その結果、糖尿病の罹患とアルツハイマー病の発症には有意な関連が示されたと報告されています。
また、HbA1c値との関連も検討されていて、HbA1c 6.5%以上の高値群では、5.7%未満の正常群に比べてアルツハイマー病の発症リスクが1.72倍に上昇するという結果が出ています。さらには、HbA1c 5.7~6.4%の前糖尿病群、いわゆる糖尿病予備軍においても、アルツハイマー病発症のリスクが1.3倍に上昇することが示されたということです。加えて、GA高値もAD発症との関連が認められたそうです。
糖尿病の患者数の現状は?
糖尿病の患者数などの現状について教えてください。
工藤先生
2016年の国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる人である糖尿病有病者は約1000万人、糖尿病の可能性を否定できない人である糖尿病予備群も約1000万人と推計されています。糖尿病に使われる年間医療費は2017年の国民医療費の概況によると1兆2239億円で、年間死亡数は2017年の人口動態統計の概況によると1万2969人になっています。
今回発表された内容の受け止めは?
今回発表された研究内容について、どのように受け止めればいいのでしょうか?
工藤先生
糖尿病は様々な疾患のリスクになることが知られていましたが、実際にそのリスクが数値で示されたのが興味深い点ですね。また、今回、糖尿病予備軍であることもアルツハイマー発症のリスクであったことから、検査で心配な結果が出たというような軽度の人から、糖尿病の治療を始める必要性も考慮すべきだと考えます。
まとめ
全国8地域在住の高齢者1万人超を対象にした調査の結果、糖尿病予備軍でもアルツハイマー病のリスクが1.3倍に達したという結果が、今回のニュースで明らかになりました。深刻な国民病の1つでもある糖尿病ですが、認知症のリスクを下げるためにもしっかりと予防・改善する必要がありそうです。