新型コロナウイルス飲み薬「モルヌピラビル」、重症化リスクを30%減に
アメリカのメルク社は11月26日、開発中の新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」の臨床試験の最終分析で、重症化リスクを30%減少させることが確認されたと発表しました。このニュースについて工藤医師に伺いました。
監修医師:
工藤 孝文(医師)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
今回報じられた内容は?
まず、今回報じられた内容について教えてください。
工藤先生
今回の発表は新型コロナウイルスの飲み薬として期待されている「モルヌピラビル」の有効性についてです。モルヌピラビルを1日2回、5日間服用することで、体内でウイルスの増殖を抑え、重症化を防ぐ効果があるとされています。
今回発表された内容は1400人を超えるデータを基にしている最終分析の結果になります。治験参加者のおよそ半分にモルヌピラビル、半分に偽薬を12時間おきに5日間投与したところ、入院または死亡した人の割合は、偽薬を投与したグループは9.7%で死者が9人だったのに対して、モルヌピラビルを投与したグループは6.8%で死者は1人だったそうです。
このことからメルク社は、「入院と死亡のリスクを30%減らすことができる」としています。なお、10月に公表していた中間分析ではこうした重症化のリスクを50%減らすことができると発表していたので、有効性が低下した形になっています。
有効性が中間発表より低下したことへの評価は?
今回の発表では、有効性が30%ということで中間分析の発表よりも低下する形となりました。この結果に対して、どのような評価ができますか?
工藤先生
新型コロナウイルスの入院率や死亡率は個人差が大きく、今回の解析では症例数を増やして検討を行いましたが、そのばらつきにより有効率が変動したものと考えられます。
今回の分析では、ワクチンを接種していない人を対象にしていることや約1400人の分析結果であることなど、実社会とは少し異なる前提条件で考えられています。そのため、実臨床の場での正確な有効性についてはもう少し様子を見る必要があると考えられます。また、「30%の有効性は低いのではないか」というご意見もあると思いますが、打つ手のない新型コロナウイルスに対しては十分に有効な一手となると思います。
日本国内で承認された場合に期待できることは?
今回有効性が発表されたモルヌピラビルが日本国内でも承認された場合、どのような期待がもてるのでしょうか?
工藤先生
ワクチンが打てない、または打たない人についても治療の選択肢ができることは喜ばしいことだと考えます。また、現在諸国で問題となっているブレイクスルー感染に対しても有効な一手となれば、より経済活動の全面再開を早める手助けになるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの飲み薬として期待されるモルヌピラビルですが、日本ではすでに160万人分を調達することでメルク社と合意しています。オミクロン株という新たな変異株が確認されるなど不安な状況が続いていますが、モルヌピラビルで重症化を少しでも防ぐことができるようになることが期待されています。