骨粗しょう症治療薬「アレンドロネート」で糖尿病リスクが36%低下!?
骨粗しょう症治療薬「アレンドロネート」を使用することで、2型糖尿病の発症リスクを36%低下することが欧州糖尿病学会で発表されました。この発表について工藤医師に伺います。
監修医師:
工藤 孝文(医師)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
今回の発表の内容とは?
改めて、今回の発表の内容を教えてください。
工藤先生
今年9月27日から10月1日に開催された欧州糖尿病学会で発表された内容です。2008年~2018年にデンマークで約65万例を対象に骨粗しょう症治療薬のアレンドロネートの使用と2型糖尿病発症リスクの関係について調べられたものです。
その結果、アレンドロネートを使っていない患者に対して、使っている患者は2型糖尿病発症リスクが36%低く、8年以上アレンドロネートを使用している患者では、リスクが53%低かったという結果が示されました。
また、服薬期間が長いほど、リスクが低くなることも示されました。発表では、アレンドロネートを使うことで、2型糖尿病の発症予防効果が示唆されたと結論づけられています。
なぜ、骨粗しょう症治療薬が糖尿病のリスクを低下させるのか
なぜ、骨粗しょう症治療薬が糖尿病のリスクを低下させたのでしょうか?
工藤先生
今回示された予防効果について、メカニズムは明らかになっていません。今後さらに検証が進むことでわかってくることがあるかもしれません。
一般的に、糖尿病患者は骨折リスクが高いことが知られており、血糖恒常性と骨代謝の関連が示唆されています。加えて、動物を対象とした最近の研究では、骨粗しょう症治療薬による骨細胞の修飾が血糖調節に影響することも示唆されています。
今後、糖尿病の予防薬として活用される可能性は?
今後、骨粗しょう症治療薬アレンドロネートを糖尿病の予防薬として活用される可能性はあるのでしょうか?
工藤先生
今回の研究発表は画期的な発見ではありますが、現時点では未解明な点も多く、エビデンスが十分ではありません。
今後、更なる研究が進み、エビデンスが蓄積されてくれば臨床現場においてもアレンドロネートが糖尿病予防薬として活用される日が来るかもしれません。
まとめ
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、予備軍を含めると日本人の5~6人に1人が罹患している糖尿病。今回の発表を糖尿病の予防に役立てることができれば、多くの人にメリットが生まれそうです。