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失明する危険もある糖尿病網膜症、視力を失わないためにできることは?

 更新日:2023/03/27

糖尿病が原因で発症し、進行すると失明を引き起こす恐れもある「糖尿病網膜症」。モノを見るうえで重要な役割のある網膜に障害が起こり、視力の低下や視野が欠けるといった症状をきたします。もし、糖尿病を発症しても、視力を落とさず失明を予防して過ごすためにはどのようなことが必要なのでしょうか。そこで今回は、糖尿病網膜症の経過や失明を予防するための方法について、「丸山眼科クリニック」の丸山先生に解説していただきました。

丸山 登士医師

監修医師
丸山 登士(丸山眼科クリニック 医師)

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東京医科大学医学部卒業。群馬大学眼科学教室入局後、関連病院等で勤務医・眼科医長を務める。2019年より「丸山眼科クリニック」に勤務。円錐角膜、ドライアイが専門分野。医学博士。群馬大学眼科非常勤講師、三栄会ツカザキ病院眼科顧問。日本眼科学会専門医、日本抗加齢医学会認定医。

網膜の仕組み

網膜の仕組み

編集部編集部

まず、網膜について詳しく教えてください。

丸山 登士医師丸山先生

網膜は、目で見た映像を感じ取る視細胞が敷き詰められた透明な膜です。この細胞には、暗い場所で光を感知したり、物体の色や形を認識したりする働きがあります。そのため、網膜は目に入った物の光や色、形を像として捉えて認識する役割がある重要な組織と言えるでしょう。

編集部編集部

網膜が機能しないと、どのような影響があるのでしょうか?

丸山 登士医師丸山先生

視力が低下するほか、視野の一部が欠けてしまうことが考えられます。代表的な疾患としては、網膜が剥がれて視力が低下する「網膜剥離」や網膜の血管の流れが障害される「網膜循環障害」などが挙げられます。

編集部編集部

網膜の障害は、重症につながるということですね。

丸山 登士医師丸山先生

そうですね。網膜はモノを見るうえで重要な役割を担っているため、障害が起こると何も見えなくなってしまうこともあります。

糖尿病網膜症とは

糖尿病網膜症とは

編集部編集部

糖尿病になると、目に悪影響があると聞きました。

丸山 登士医師丸山先生

はい。「糖尿病網膜症」という合併症になるリスクがあります。網膜には毛細血管がたくさん存在しているのですが、糖尿病によって血糖値が高い状態が続くことで、血流が悪くなったり血管が詰まってしまったりすることがあるのです。その結果、血管が詰まると正常に酸素や栄養が運ばれなくなるため、細胞が「新生血管」という新しい血管を代わりに作り出します。ところが、新生血管は非常に脆いため、血管が破れて出血を繰り返すといった様々な悪影響を生じさせてしまいます。さらに進行すると、増殖膜という組織が作られ、それが原因となって網膜剥離を起こすこともあります。

編集部編集部

糖尿病網膜症になると、どのような症状がみられるのでしょうか?

丸山 登士医師丸山先生

糖尿病網膜症の症状は、段階に応じて徐々に進行していきます。「単純網膜症」と呼ばれる発症初期には、網膜内の毛細血管の血流が悪くなりはじめ、眼底検査で所々に少量の出血斑などが確認できます。この段階では無症状であることが多いでしょう。

編集部編集部

初期だとなかなか気づけないのですね。

丸山 登士医師丸山先生

はい。状態がかなり進行しないと、自覚症状に現れにくいのがこの病気の怖いところです。さらに「増殖糖尿病網膜症」と呼ばれる状態まで進行すると、新生血管が出現して出血を起こしやすくなります。この段階になると視力低下や飛蚊症などの症状が生じて、網膜剥離や血管新生緑内障を引き起こす場合があります。

編集部編集部

糖尿病網膜症が進行すると、最悪の場合は失明してしまうこともあるのでしょうか?

丸山 登士医師丸山先生

糖尿病網膜症は日本における中途失明原因第2位です。ただし、糖尿病が発症した時点で内科と眼科の両方で治療を受けて、血糖値のコントロールができていれば、失明する可能性は低くなります。その一方で、適切な治療を受けなかったり血糖値のコントロールができなかったりすると、やがて失明してしまう可能性は考えられるでしょう。

失明しないためにできることは?

失明しないためにできることは?

編集部編集部

糖尿病網膜症を予防するためには、どのようなことが必要ですか?

丸山 登士医師丸山先生

そもそもで糖尿病を予防することが最も重要ですが、発症してしまった場合は内科治療と同時に眼科での治療を並行して開始することが大切です。糖尿病の発症初期から網膜症の予防と経過観察のため、定期的に眼科受診する必要があります。

編集部編集部

眼科では、どのような治療がおこなわれるのでしょうか?

丸山 登士医師丸山先生

糖尿病網膜症は完全に治すことができないので、進行を抑えるための治療がメインです。具体的には、発症初期から中期頃には新生血管の発生を防ぐため、レーザーで網膜を凝固する「網膜光凝固術」や網膜の中心である黄斑部に水が溜まる黄斑浮腫が生じた場合は「VEGF阻害薬硝子体注射」をおこないます。さらに進行して、網膜剥離や目の内部での出血(硝子体出血)などを併発している場合には、「硝子体手術」が必要になることもあります。

編集部編集部

眼科を受診する目安はありますか?

丸山 登士医師丸山先生

糖尿病網膜症は、自覚症状がないまま進行してしまうことがあるため、糖尿病と診断されたらすぐに眼科を受診してください。視力の低下などのの症状がみられるようなったときには、かなり進行してしまっているケースが少なくないです。何らかの症状がみられてから受診するのではなく、無症状であっても定期的に眼科での治療や観察を受けることが必要です。

編集部編集部

日常生活では、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?

丸山 登士医師丸山先生

一番重要なのは、血糖値のコントロールです。血糖値がうまくコントロールできずに高い状態が続くと、網膜症の症状も悪化してしまうことがあります。そのため、内科での治療を受けるとともに、血糖値測定や食事管理などを徹底しましょう。血糖値のコントロールでは、内服やインスリン注射、食事指導、運動療法などをおこなうこともあります。いずれにしても、主治医の指示に従い、わからないことは自己判断で実行せず、相談するようにしましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

丸山 登士医師丸山先生

糖尿病網膜症の発症初期は、症状の自覚が困難です。ただ、放置すれば病状が進行して、最悪の場合は失明する可能性も生じてしまいます。そのため、糖尿病と診断されたら、目の症状がなくても必ず眼科を受診するようにしてください。また、糖尿病網膜症は内科と眼科双方の治療と血糖値コントロールが重要です。さらに、治療と並行して、食事や運動などの生活習慣も見直しましょう。

編集部まとめ

糖尿病網膜症は治療せずに放置すれば、進行して失明につながる恐れもあります。糖尿病と診断されたら無症状でも眼科を受診し、適切な治療を受けましょう。

医院情報

丸山眼科クリニック

丸山眼科クリニック
所在地 〒371-0805 群馬県前橋市南町3丁目59-4
アクセス JR「前橋駅」 徒歩7分
診療科目 眼科

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