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糖尿病で失明の危険性が!? 「糖尿病網膜症」ってどんな病気?

 更新日:2023/03/27

糖尿病は体の病気なので、内科や糖尿病専門クリニックで完結するはず。もし、そう考えているとしたら、大きな誤りのようです。今回の取材を通じて、「糖尿病治療は、内科と眼科のセットでおこなうべき」ということが判明しました。一体、それはなぜなのかを「糖尿病・内分泌内科りんごの花クリニック」の武井先生が解説します。

武井真大

監修医師
武井 真大(糖尿病・内分泌内科りんごの花クリニック 院長)

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信州大学医学部医学科卒業、信州大学大学院医学系研究科修了。その後、信州大学医学部附属病院などで生活習慣病に特化した診療を積む。2020年、群馬県伊勢崎市に「糖尿病・内分泌内科りんごの花クリニック」開院。医学博士。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医・指導医・評議員、日本糖尿病学会糖尿病専門医・研修指導医、日本動脈硬化学会動脈硬化専門医・指導医、日本高血圧学会高血圧専門医ほか。

糖尿病による目の病変は、いつはじまってもおかしくない

糖尿病による目の病変は、いつはじまってもおかしくない

編集部編集部

糖尿病の影響って、目にも出るのですか?

武井真大武井先生

はい。糖尿病をわかりやすくいうと、「全身の血管が硬くなったり詰まったりする病気」です。この影響は目に限らず、全身のどこでも起こり得ます。とくに目は細い血管が多く集まっている箇所なので、最も変化を感じやすいといってもいいのではないでしょうか。糖尿病が原因で、目に悪影響が出る合併症を「糖尿病網膜症」といいます。

編集部編集部

目の血管が詰まってしまうと、どのようなことが起こるのでしょうか?

武井真大武井先生

酸素不足や栄養不足に加えて、血管が詰まってくると「新しい血管を生やして補おう」とします。この新しい血管は、本来の血管と比べて“非常に脆い”という特徴があります。つまり、血管が壊れやすいということです。

編集部編集部

いずれ、失明する可能性もあるのでしょうか?

武井真大武井先生

糖尿病網膜症による影響は、「いずれ、徐々に」というより、「突然」現れます。我々の視野のほとんどは、網膜のなかでも「黄斑」という部分に映された情報から得ています。糖尿病による目の病気がこの黄斑で起きてしまうと、一挙に視力低下が進むでしょう。場合によっては「ある日、急に目が見えなくなる」こともあり得ます。ですから、糖尿病と診断されたら、目の検査は“マスト”と言いたいところです。

医療機関でもセットでの受診を勧められるはず

医療機関でもセットでの受診を勧められるはず

編集部編集部

続けて、治療方法についても教えてください。

武井真大武井先生

糖尿病が原因だとしたら、血糖値のコントロールが先決です。原因が改善されない限り、治療したところで、いずれ再発してしまうでしょう。糖尿病の初期であれば、運動習慣や食事内容を見直せば改善していくはずです。それでも血糖値のコントロールができない場合は、投薬による治療を検討しましょう。

編集部編集部

先生の医院は、糖尿病に特化した内科ですよね?

武井真大武井先生

はい。先ほど「糖尿病と診断されたら、目の検査は“マスト”」と申しましたが、逆もしかりですね。「眼科で糖尿病網膜症と診断されたら、内科での血糖値コントロールは“マスト”」です。眼科でも内科の受診を勧めてくるでしょう。

編集部編集部

先に眼科を受診して、他院の内科と連携する場合もあるのですか?

武井真大武井先生

眼科でも糖尿病の所見は付けられますし、血液検査をしてみれば血糖値という数字で見て取れます。ですから「目から糖尿病に気づくこと」は大いにあり得ることです。まずは、ご自身の主訴が目なのか身体なのかに応じて、眼科か内科かのどちらかを選択して受診してください。その後、受けていなかった方の標榜科を受診するのが、推奨される流れですね。

編集部編集部

なるほど。糖尿病って「眼科と内科がセット」なんですね?

武井真大武井先生

そういう考え方で構わないと思います。「余裕があったら」とか「いずれ、そのうちに」ではなく、両方の「速やかな」受診がマストです。先述したように、とくに糖尿病による目の病気は“突然”やってきますから、定期的な眼科でのウォッチが前提になるでしょう。また、血糖値コントロールができるようになったとしても、経過観察は必要です。

糖尿病網膜症は「シメジ」の第2段階

糖尿病網膜症は「シメジ」の第2段階

編集部編集部

糖尿病で、末端の神経がしびれるという話も聞きます。

武井真大武井先生

目と同様で、末端神経に酸素不足や栄養不足が起きているのでしょう。糖尿病には、「糖尿病神経障害」、「糖尿病網膜症」、「糖尿病性腎臓病」の三大合併症があります。患者さんには、神経の「シ」、目の「メ」、腎臓の「ジ」をそれぞれ取って「シメジ」とご説明しています。

編集部編集部

「シメジ」とは、覚えやすくてユニークですね。

武井真大武井先生

しかも、「シメジ」の順番で症状が表れてきます。末端の神経のしびれは、最も早く出てくる合併症です。続いて糖尿病網膜症は糖尿病発症後、5~10年くらいで遅発することが多いですね。そして最後に、腎臓がやられてきます。逆に、糖尿病による腎障害を抱えているほとんどの人は、すでに目の病気も進んでいるはずです

編集部編集部

第1段階の神経のしびれって、どういう感じなのでしょうか?

武井真大武井先生

患者さんによって表現方法は異なりますが、軽い痛みを伴ったピリピリ・チリチリとした感覚だそうです。なお、このしびれは心臓から遠い位置に顕著で、足であれば「両足」に生じます。とくに、つま先などの末端にでやすいのが特徴です。なお、片足だけのしびれだとしたら、別の整形外科領域の疾患かもしれません。糖尿病は全身の疾患ですから、左右片方だけ異常が出るということは考えにくいです。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

武井真大武井先生

足のしびれは命に関わるということでもないので、もしかしたら、放置している人もいらっしゃるでしょう。しかし、「シメジ」の順に症状は進んでいきます。また、しびれが無感覚に発展すると、画びょうなどを踏んでも気づきません。比較的軽度といえる「シ」のうちに、それ以上の進行を防ぐように努めましょう。さらに言うなら、「シ」の前段階での予防が好ましいです。

編集部まとめ

糖尿病と診断されたら、繰り返しになりますが、「眼科と内科をセット」で受診しましょう。理由の是非を置いておいて、「そういうものだ」と決めつけてもいいくらいです。同時に神経、目、腎臓の頭文字を取った「シメジ」というキーワードをお忘れなく。症状が出る順番となっているため、どこに現れるかで糖尿病の進行度が類推できます。いずれにしても糖尿病の場合、身体と目が密接に関係しているということでした。また、早期発見・早期治療、さらにいうと予防が何より重要です。

医院情報

糖尿病・内分泌内科りんごの花クリニック

糖尿病・内分泌内科りんごの花クリニック
所在地 〒372-0007 群馬県伊勢崎市安堀町1865-7
アクセス 両毛線「伊勢崎駅」 徒歩18分
診療科目 内科

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