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「メラノーマ」の再発・転移リスクを防ぐ? 手術後の免疫療法に期待集まる最新研究

 公開日:2025/05/18

アメリカのUPMCヒルマンがんセンターの研究員らは、ステージIIBまたはIICのメラノーマ(悪性黒色腫)患者を対象に、免疫チェックポイント阻害剤「ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)」の有効性と安全性を評価しました。これは、補助療法としておこなわれた第III相臨床試験「KEYNOTE-716」によるもので、研究チームは4年間にわたる追跡調査を実施しています。この内容について松澤医師に伺いました。

松澤 宗範

監修医師
松澤 宗範(青山メディカルクリニック)

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2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会

研究グループが発表した内容とは?

UPMCヒルマンがんセンターの研究員らが発表した内容を教えてください。

松澤 宗範 医師松澤先生

アメリカのUPMCヒルマンがんセンターの研究員らは、切除されたステージIIBまたはIICのメラノーマに対する補助療法としてのペムブロリズマブとプラセボを比較した第III相臨床試験「KEYNOTE-716」の長期追跡結果を報告しました。

本研究には976名が参加し、中央値52.8カ月の追跡において、ペムブロリズマブ群はプラセボ群と比べてRFS(無再発生存期間)およびDMFS(無遠隔転移生存期間)を有意に延長しました。48カ月時点では、RFS率はペムブロリズマブ群が71.3%、プラセボ群が58.3%、DMFS率はそれぞれ81.0%、70.1%でした。また、再発後にペムブロリズマブに切り替えた患者においても一定の抗腫瘍効果が観察され、再投与においても切除可能病変を持つ患者では再発が認められませんでした。

安全性についても新たな懸念は報告されていません。ただし、PRFS2(無増悪・再発生存期間2)のハザード比は0.75と、統計学的にわずかに有意性を欠く結果であり、一部の評価指標では明確な優位性を示しきれていない点には注意が必要です。全体として、本研究はステージIIB/IICメラノーマにおける術後補助療法としてのペムブロリズマブの有効性と安全性を支持しています。

研究テーマになったメラノーマ(悪性黒色腫)とは?

今回の研究テーマに関連するメラノーマについて教えてください。

松澤 宗範 医師松澤先生

メラノーマは、皮膚や粘膜、眼部などにできる悪性腫瘍で、メラニンを作るメラノサイトという細胞ががん化して発生します。白人に比較的多くみられますが、日本人では年間10万人あたり1〜2人と非常にまれな希少がんです。多くは黒色〜褐色の不規則な形の色素斑や隆起を伴う腫瘤として表れますが、赤色調で見つけにくい例もあります。

メラノーマの診断には、見た目や病変の特徴、病理検査などを総合的に判断します。治療は進行度に応じて、手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせた集学的治療がおこなわれます。近年では、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が使用できるようになり、治療の選択肢が広がっています。

早期発見が重要なので、気になるほくろやしこりがあれば、放置せず専門医に相談しましょう。

研究内容への受け止めは?

UPMCヒルマンがんセンターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

松澤 宗範 医師松澤先生

本試験は、切除後ステージIIB/IICのメラノーマ患者に対し、免疫チェックポイント阻害薬を術後早期から導入する意義を4年間という長期追跡で裏づけた点が特筆されます。再発・遠隔転移の抑制効果に加え、再発後のリトリートメントでも一定の奏効を示したことは、補助療法の位置づけを一段と強固にする成果です。一方、PRFS2や全生存期間(OS)の改善は統計学的に確定しておらず、長期毒性や費用対効果を含む個別化医療の視点が不可欠です。今後はOSデータの成熟とバイオマーカー解析を通じ、真に恩恵を受ける患者層の層別化が望まれます。

編集部まとめ

今回紹介した研究は、メラノーマの手術後におこなう免疫療法が、再発や遠隔転移のリスクを抑える効果があることを示しています。治療の選択肢が広がり、患者さんにとって心強い結果と言えるでしょう。普段の生活でも、気になるほくろや皮膚の変化を見逃さず、早期に専門医を受診することが、命を守る第一歩となります。

※提供元「日本がん対策図鑑」【ⅡB-ⅡC期悪性黒色腫:術後治療(4年RFS)】「キイトルーダ」vs「経過観察」
https://gantaisaku.net/keynote-716_4rfs/

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