がんの免疫療法薬「オプジーボ」とは 作用・副作用を薬剤師が解説
2018年にノーベル賞を受賞した新しい抗がん剤として有名なオプジーボは、2014年に世界初の悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんの治療薬として承認されました。現在ではほかのがんにも適用されています。そんなオプジーボですが、どのような効果がある薬なのでしょうか。心配される副作用を含め、薬剤師の長岡さんを取材しました。
監修薬剤師:
長岡 志帆(薬剤師)
目次 -INDEX-
免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」とはどのような治療薬? 効果を解説
編集部
オプジーボは新しい抗がん剤と聞きましたが、何が違うのでしょうか?
長岡さん
従来の抗がん剤治療(化学療法)で使われている薬は、「細胞障害性抗がん薬」と言われ、がんの原因である悪性の細胞を攻撃して死滅、減少させる薬です。この薬の欠点は、悪性細胞だけではなく、正常細胞にも攻撃してしまう点です。他方、オプジーボの作用機序である「免疫チェックポイント阻害薬」は、がん細胞によって働きが抑制されているT細胞と呼ばれる免疫細胞の免疫チェックポイントを阻害します。これによりT細胞の免疫力が回復し、悪性細胞を攻撃して死滅させる効果が認められています。
編集部
悪性黒色腫以外には、どのようながんに使用されていますか?
長岡さん
・悪性黒色腫(メラノーマ)
・切除不能な進行・再発の非小細胞性肺がん
・根治切除不能または転移性の腎細胞がん
・再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
・再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん
・治療切除不能な進行・再発の胃がん
・切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫
・がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん
・根治切除不能な進行・再発の食道がん
・食道がんにおける述語補助療法
・原発不明がん
・尿路上皮がんにおける術後補助療法
編集部
すごく高い薬と聞きましたが、どうでしょうか?
長岡さん
※1.オプジーボ点滴静注240mg薬価:36万6405円/バイアル(2023年4月現在)
1ヶ月480mg投与のため、36万6405円×2バイアル=73万2810円
オプジーボの副作用まとめ どのような症状が出る?
編集部
抗がん剤は副作用が辛いとよく聞きますね。なぜでしょうか?
長岡さん
薬が悪性の細胞に攻撃する際に、同時に正常な細胞も攻撃してしまうために副作用として体の不調が表れます。また、悪性細胞が抗がん剤への耐性(薬剤耐性)を持つことで、薬が悪性細胞には攻撃できず正常細胞を攻撃してしまう場合もあります。
編集部
オプジーボにも副作用はありますか?
長岡さん
・下痢、便秘
・悪心、嘔吐、腹痛
・口内炎
・疲労感、無力症、倦怠感
・食欲減退
・関節痛
・発疹、そう痒症、丘疹性皮疹、脱毛症、手足症候群
・好中球減少症、貧血、血小板減少症、白血球減少症
・高リパーゼ血症、高アミラーゼ血症
・味覚異常
ほかにも抗がん剤の副作用のイメージに多い、発熱、めまい、頭痛、体重減少、リンパ球減少などの報告もあります。
編集部
副作用はどのくらい続くのでしょうか?
長岡さん
抗がん剤投与中はもちろんですが、投与中止後20週以上経っても、抗がん剤投与中と同じような状態であると確認されています。中止しても半年くらいは、副作用と思われる症状が出る可能性が高いので、注意が必要です。
注意すべき副作用の症状は? 命にかかわる副作用もある?
編集部
命に関わる副作用もあるということですよね。
長岡さん
その通りです。重大な副作用として、間質性肺炎や重症筋無力症、横紋筋融解症、1型糖尿病、重篤な血液障害などが挙げられます。これらの疾患は一部で、添付文書にはほかにも様々な副作用が記載させています。頻度はごくわずかとされていますが、患者さんに症状が表れたら、早急に処置する必要があるので、体調で気になることが出てきたらすぐに診察を受けましょう。
編集部
重大な副作用の中にある間質性肺炎とは何でしょうか?
長岡さん
・50歳以上の方
・肺疾患にかかったことがある
・呼吸機能が低下している
・酸素投与中
・肺に放射線治療をしたことがある
・抗がん剤投与中
・腎障害
間質性肺炎と診断されたら、オプジーボの投与を中止して適切な処置が必要となります。咳が続く、息苦しさを感じたらすぐに診察を受けましょう。
編集部
重症筋無力症についても教えてください。
長岡さん
・昔に比べて運動で疲れやすくなった
・まぶたが重い
・足や腕に力が入らない
・筋肉痛が頻繁に起こる
・ものが二重に見える
・吐き気・動悸がする
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
長岡さん
オプジーボは世界的にも注目されている抗がん剤で、従来の抗がん剤とは違い免疫細胞を回復させることで悪性細胞を攻撃する薬です。薬代は高額ですが、高額療養費制度を利用して治療を受けることができます。抗がん剤の治療は、投与後すぐに副作用が起こる場合もあれば、時間が経ってから起こる場合もあります。ご自身とご家族で日々体調をチェックすることが早期発見につながります。また、がん治療に限りませんが、主治医と一緒に治療することが大切です。少しでも不安なことがあればしっかり相談して治療を受けましょう。
編集部まとめ
抗がん剤オプジーボが、ほかの抗がん剤と違う働きでがん細胞を攻撃することが世界で有名となりましたが、新しい抗がん剤でも副作用はあり、適切な処置をしなければ命の危険もある場合もあるそうです。患者さんとご家族と医師が一緒に治療していくことが、がん治療を安全に続けるポイントなのですね。