【闘病】健康診断で前立腺がん発覚! 肺、肝臓などへの転移も見つかり…
南俊行さん(仮名)は2017年の健康診断をきっかけに、前立腺がんが見つかりました。その後、新たに肺がんさらに脇腹にも腫瘍が見つかり、次々にがんの転移が発覚しました。しかし、それでも南さんは「心の余裕」があると話されています。希望を失う方が多い中、どのように闘病し、メンタルを維持しているのかについて伺ってきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年3月取材。
体験者プロフィール:
南 俊行(仮称)
1949年生まれ、兵庫県在住。子ども2人は独立しているため、妻と2人暮らし。約40年損害保険の仕事に従事。64歳で仕事をリタイア。趣味は旅行や温泉。現在は3カ月に一度経過観察で通院中。夫婦2人でのんびり生活をエンジョイしている。
記事監修医師:
石川 智啓(名古屋大学医学部附属病院泌尿器科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
短期間で2つのがんが見つかる
編集部
前立腺がんが判明した経緯について教えてください。
南さん
2017年11月に、3年ほど受けていなかった市役所主催の健康診断を受けたのがきっかけです。胸部レントゲン、尿検査、便検査、血液検査などを受けました。後日、検査結果が郵送され、PSA(前立腺特異抗原)の数値が正常値より少し高かったので、12月25日に近くの泌尿器科へ行きました。
編集部
気をつけないといけない数値ですね。
南さん
近くの泌尿器科でもがんの可能性を否定できず、紹介状を書いてもらい、翌年の1月16日に総合病院の泌尿器科も受診しました。その後、エコーなどの検査を受け、2月9日から1泊2日で前立腺の生体検査を行い、前立腺がんの診断を受けたのです。部分麻酔で検査をしたのですが効果はなく、すごく痛かったのを覚えています。自覚症状はなかったのですが、診断はステージIIでした。
編集部
前立腺がんの治療はどうされたのですか?
南さん
2018年5月に、前立腺がんの手術を受けることになり、前立腺を全摘出しました。
編集部
肺がんは、どのように見つかったのでしょうか?
南さん
実は前立腺がんが見つかったあと、2018年11月中旬に風邪を引いたのです。市販薬で対処したのですが、咳が続いていたので気になって近くの呼吸器内科を受診しました。その場で肺機能検査を行い、肺年齢が実年齢よりプラス15歳の「84歳」と診断されました。
編集部
そこで肺がんがわかったのですか?
南さん
いいえ、このときは肺気腫と診断されました。原因は、20歳から56歳までタバコを毎日1箱吸っていた影響だと思われます。その後、2019年2月26日にレントゲン検査を行い、右肺に3cm程度の影があり、精密検査が必要だと言われました。
編集部
肺がんの診断までの検査についても教えてください。
南さん
胸部CT検査、MRIなどの結果から、右肺の上葉にがんが確認されました。また右肺リンパ節にもがんがあり、ステージIIaの診断を受けたのです。3月19日から1泊2日で、がん細胞の種類を確定するために気管支内視鏡検査を受けました。その結果、3月27日に肺の奥にできる肺腺がんだと確定しました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
南さん
呼吸器外科の担当医から、右肺上葉を切除及びリンパ節郭清を行うと説明を受けました。前立腺がんの手術では何ら不安もありませんでしたが、今回は肺機能も弱まっており、CT診断では肺炎の兆候があり不安を感じました。当時は、抗生物質を処方してもらい服用していましたね。
編集部
「郭清」とはなんですか?
南さん
周囲のリンパ節や転移している可能性のある疑わしい組織を、徹底的に取り除くことです。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
南さん
手術に対して不安もありましたし、手術が無事に終わってもその後再発防止の化学療法(抗がん剤など)が続くかもしれないということに不安を感じていました。しかし、ステージIVでも、薬物療法などで元気に過ごしている方も多いと聞いたので、希望を持って望みたいと思いました。まさに「ケセラセラ(なるようになる)」、まな板の鯉の心境です。
転移が見つかり再治療
編集部
その後、がんの転移が見つかったそうですが。
南さん
肺がん手術の約4カ月後の8月14日、定期検診にて肝臓への転移が確認されました。再発の可能性は50%と聞いていたのである程度の覚悟はしていましたが、2019年8月30日より抗がん剤治療のため入院することになりました。
編集部
再度治療の日々とは大変ですね。
南さん
2019年9月3日から抗がん剤治療が始まりました。「キイトルーダ+アリムタ+シスプラチン」の点滴を合計6時間受けたのを覚えています。
編集部
治療中の様子はいかがでしたか?
南さん
1日目は吐き気を予防する薬の影響なのか、気分は正常で食欲もありました。抗がん剤治療1クール目の3日目から13日目くらいまでは、頻尿に悩まされました。12日目に痛風になりましたが、早めに痛風予防薬のコルヒチンを服用したので、痛みは強かったのは一晩だけでした。この時は、抗がん剤治療16日目に無事退院しました。
編集部
抗がん剤の副作用などはなかったですか?
南さん
副作用で腎臓の機能が下がったので、翌月からの抗がん剤治療はシスプラチンをカルボプラチンに変更し、「キイトルーダ+アリムタ+カルボプラチン」となりました。抗がん剤治療が一部変わることで、再入院することにもなりました。
編集部
再入院の様子はいかがでしたか?
南さん
2クール目は、副作用もなく快調でした。抗がん剤を「カルボプラチン」に変更したため、白血球の数値の低下が心配されましたが、今のところ正常です。
編集部
その後、転移はありませんか?
南さん
抗がん剤治療中の、2019年9月に右脇腹に直径22mmの腫瘍ができていることがわかりました。翌月、10月19日に右脇腹の腫瘍を切除する手術を行いました。後日、肺がん転移による腫瘍とわかりました。3クール目から、キイトルーダの免疫療法を行う予定でしたが、キイトルーダの副作用で間質性肺炎になり、さらに1カ月入院することになりました。点滴でステロイド剤を使用したところ、効果があり、平熱に戻りました。血液検査で炎症の数値もかなり下がってきたので助かりましたね。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
南さん
間質性肺炎が治ってから、脳にも転移していた腫瘍を放射線治療で取り除くため、MRI検査をしたところ、無事、脳の腫瘍は消えていました。まだ、肝臓とリンパ節に転移したがんを確認する為、PET検査をしましたが、こちらの方も消えていました。
編集部
現在も通院や検査続いていますか?
南さん
がんが消えている現在、抗がん剤治療など必要なく、3カ月に一度の経過観察のため、通院しています。右肺を3分の2、手術で取り除いたので、階段の上りは少ししんどいですが、基本的に健康です。昨年も、自分で40日間運転して、北海道や東北の温泉巡りに行って来ました。
希望を持って諦めずに向き合う
編集部
がん発症後、生活にどのような変化がありましたか?
南さん
これまでの生活環境の見直し、食生活の改善を行いました。今までは、野菜もあまり食べずに肉料理中心だったのです。しかし、がんが判明してからは、ネットなどでいろいろな食事療法を知りました。
編集部
努力されていますね。今も継続しているのですか?
南さん
はじめは、毎朝ニンジンとリンゴをジューサーで搾り、飲んでいました。身体が元気になるとだんだん面倒になり、今では毎朝、市販のトマトジュースを飲んでいます。動物性脂肪の肉はあまり採らず、たんぱく質は豆腐、納豆などの豆類を食べ、白米の代わりに小豆と昆布を入れた玄米を、圧力鍋で炊いて食べています。
編集部
ほかにも、工夫されていることはありますか?
南さん
朝食に市販のグラノーラにバナナチップ、干しブドウ、アーモンド、カシューナッツ、胡桃を入れ、ヨーグルトと豆乳、蜂蜜をかけて食べています。ヨーグルトや玄米などのおかげで、快調、快便です。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
南さん
がんと分かった時よりも、再発を知らされた時が一番ショックでしたね。入院している際は毎日、見舞いに来てくれていた家内や子どもたちが一番支えになりました。後々、家族に迷惑をかけないように、「エンディングノート」も用意していました。入院中は、体調が良くなったら、どこへ旅行に行こうかと、そんなことばかり考えていました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
南さん
タバコをやめるように言います。親父が57歳にして肺がんで亡くなっているので、56歳の時に煙草をやめました。健康なときは、なかなかタバコはやめられません。私の場合、56歳と少し遅いですが、そのままタバコを吸い続けていれば、もっと早くがんになっていたと思います。免疫療法の無かった頃なら、今の自分は無かったと思います。
編集部
自分が病気にかかることを意識していない人に一言お願いします。
南さん
現在、がんは国民2人に1人がなる病気と言われています。早期発見・早期治療をすれば、がんを克服できる可能性はかなり高くなります。市で案内されている健康診断や人間ドックなど、毎年受けられるのが、賢明だと思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
南さん
医療従事者の激務が、入院して初めてわかりました。とくに2020年からは、新型コロナウイルスの影響で更に大変だと思います。感謝の気持ちしかありません。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
南さん
がんに関する医療は、手術・薬物治療・放射線治療・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬など素晴らしい勢いで進歩しています。今後は、光免疫療法なども広く一般化されると思います。希望をもってがんに立ち向かっていきましょう。
編集部まとめ
南さんは、がんが発覚してからいくつもの転移と入院を繰り返しながら闘病されています。一般的には、メンタル低下や自暴自棄にもなりえる状況かもしれません。しかし、医学の進歩に期待を持ち、家族のために行動をされ「心の余裕」を持たれているように感じます。また、「がんと分かってもすぐに死とは結びつかない。それまでに準備期間がある。そして、がんになっても今の医療は素晴らしいので、がんが消滅することもある。希望を失わないようにしてほしい」と力強く話されています。南さんのように強い気持ちで、がんと向き合っていけたら、闘病もスムーズに行えるのかもしれませんね。