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「胃がん」はカドニリマブと化学療法の併用で高い治療効果 生存期間の延長を確認

 公開日:2025/05/04

中国の北京大学肿瘤医院(Peking University Cancer Hospital & Institute)の研究員らは、進行胃がんまたは胃食道接合部腺がんに対するカドニリマブと化学療法の併用療法の有効性と安全性について報告しました。この研究結果は、2025年1月22日付けの医学雑誌「Nature Medicine」に掲載されています。この内容について吉川医師に伺いました。

吉川 博昭

監修医師
吉川 博昭(医師)

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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

研究グループが発表した内容とは?

中国の北京大学肿瘤医院の研究員らが発表した内容を教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

今回紹介するのは、中国の北京大学肿瘤医院の研究員らをはじめとする、複数の中国国内の医療機関や大学などによる研究報告です。この研究では、HER2陰性の進行胃がん、または胃食道接合部腺がんの第一選択治療として、カドニリマブと化学療法の併用が有効であると示されました。調査はランダム化二重盲検プラセボ対照第3相試験として実施され、未治療で切除不能な進行性または転移性の患者610名が対象となりました。

カドニリマブ群とプラセボ群の全生存期間(OS)を比較した結果、カドニリマブ群の全生存期間の中央値は14.1カ月で、プラセボ群の11.1カ月と比べて有意に延長しました。また、無増悪生存期間や奏効率の向上も確認され、安全性プロファイルも管理可能であると報告されました。一方で、グレード3以上の治療関連有害事象の発生率は、カドニリマブ群で65.9%と高く、主に「血小板数減少」「好中球数減少」「貧血」が認められました。ただし、免疫関連の有害事象の多くはグレード1または2で、新たな安全性シグナルは検出されませんでした。

この研究の結果は、カドニリマブと化学療法の併用がHER2陰性進行胃がんにおける有望な治療選択肢であることを示唆しています。しかし一方で、副作用のリスクも考えられるため、慎重な評価が必要です。

研究テーマになった胃がんとは?

今回の研究テーマに関連する胃がんについて教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

胃がんは胃の粘膜から発生し、長い時間をかけて進行するがんです。病期はI~IVまで分類され、進行するほど治療の難易度が高まります。早期の段階では粘膜内にとどまりますが、進行すると筋層や漿膜にまで広がり、リンパ節や遠隔臓器へ転移することもあります。

胃がんの治療方法には、「内視鏡を用いた切除」「手術」「抗がん剤治療」などがあります。早期であれば内視鏡による治療が可能で、進行がんでは手術が基本となります。さらに、「腹腔鏡手術」や「ロボット支援手術」も選択肢の1つです。抗がん剤治療は、手術の前後や転移がある場合におこなわれます。

胃がんは早期発見が肝心です。定期的に検診を受け、胃の不調を感じたら早めに医師に相談しましょう。健康を守るために、日頃からバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、予防に努めることが重要です。

胃がんに関する研究内容への受け止めは?

中国の北京大学肿瘤医院の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

今回の研究は、進行性胃がんに対する新たな治療法として、カドニリマブと化学療法の併用に関する有用性を述べています。特に、PD-L1発現率が低い患者でも効果が認められた点は画期的です。ただし、中国人患者のみを対象とした研究であるため、人種や地域での有効性と安全性を確認することが必要です。また、副作用の管理も重要で、個々の患者に適した治療戦略を検討することが求められます。

編集部まとめ

今回紹介した研究では、胃がん治療におけるカドニリマブと化学療法併用の有効性が示されましたが、効果とリスクのバランスを慎重に見極めることが重要です。病気の治療や予防においては、最新の知見を取り入れつつ、自分に合った選択をすることが求められるでしょう。胃がんは早期発見が鍵となるため、定期的な検診を受け、バランスの良い食事や適度な運動を心がけることが大切です。

※提供元「日本がん対策図鑑」【胃がん:一次治療(OS)】「カドニリマブ+CAPOX」vs「CAPOX」
https://gantaisaku.net/compassion-15/

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