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「肺がん」治療の有効性、新たな可能性が研究で明らかに《進行期扁平上皮非小細胞がん》

 公開日:2025/02/25

イタリアのGOIRC(Gruppo Oncologico Italiano di Ricerca Clinica)の研究が、学術論文のオンラインデータベース「ScienceDirect」に掲載されました。この研究では、進行期扁平上皮非小細胞肺がん(Sq-NSCLC)患者を対象に、「化学療法後の早期ニボルマブ維持療法」と「病勢進行後の遅延ニボルマブ治療」の効果を比較しました。この内容について五藤医師に伺いました。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

研究グループが発表した内容とは?

今回、イタリアのGOIRCが発表した研究内容を教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

今回紹介する研究報告は、イタリアの臨床研究腫瘍学グループGOIRCによるものです。この研究は、進行扁平上皮非小細胞肺がん治療において、第一選択のプラチナ製剤ベースの化学療法後の治療戦略を検討するものです。早期にニボルマブ(商品名:オプジーボ)を維持療法として投与する場合と、病勢進行後に二次治療として投与する場合の有効性を比較しました。

2017年9月~2020年8月までにイタリアの32施設で125名の患者が登録され、ニボルマブの早期投与群(62名)と遅延投与群(63名)に無作為に割り振られました。研究の結果、主要評価項目の全生存期間(OS)は、早期ニボルマブ群が14.9カ月、遅延ニボルマブ群が18.8カ月と、有意差は認められませんでした。その一方で、無増悪生存期間(PFS)は早期ニボルマブ群で有意に延長しました。

しかし、本試験にはいくつかの懸念点があります。まず、登録患者数が予定の388名に達する前に試験が中止され、統計的パワーが不足していた可能性があります。また、PD-L1の発現状況が不明であり、免疫療法の効果を正確に評価できなかった点も課題です。さらに、遅延群の85%がニボルマブを受けたため、実臨床ではみられないほど高い治療継続率が結果に影響した可能性もあります。

今後は、免疫チェックポイント阻害薬の最適な使用タイミングや維持療法の役割を、より詳細に検討する必要があります。

研究テーマになった「進行期扁平上皮非小細胞肺がん」とは?

今回の研究テーマに関連する進行期扁平上皮非小細胞肺がんについて教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

進行期扁平上皮非小細胞肺がんは、肺がんの一種で、主に喫煙と関連が深いとされています。肺の大気道(気管支)の内壁にある扁平上皮細胞から発生するため、この名称が付けられています。

がんの進行度に応じて治療法が異なり、Ⅰ期やⅡ期では手術が可能なことが多い一方、Ⅲ期やⅣ期では放射線治療や薬物療法が中心です。治療には、細胞障害性抗がん薬、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的治療薬が用いられます。Ⅲ期では化学放射線療法がおこなわれることが多く、Ⅳ期では薬物療法が主軸となります。

がんの進行に伴う症状を和らげるために、緩和ケアや支持療法も重要な役割を果たすでしょう。治療の選択は、患者の体調や遺伝子検査の結果、PD-L1の発現状況などを考慮して決定されます。近年の免疫療法の進歩により、進行がんでも生存期間の延長が期待できるケースが増えています。患者さんは担当医と十分に相談しながら、最適な治療方針を決めることが大切です。

研究内容への受け止めは?

イタリアのGOIRCが発表した研究内容への受け止めを教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

イタリアのGOIRCが発表した本研究は、進行期扁平上皮非小細胞肺がんに対するニボルマブ維持療法の有効性を検討した重要な試験です。本研究の結果、早期のニボルマブ維持療法が全生存期間の延長には寄与しなかったものの、無増悪生存期間を有意に改善することが示されました。

維持療法としてのニボルマブの適応に関する重要な示唆を与えるものですが、試験の中止により統計的パワーが不十分であったことや、PD-L1の発現状況が不明であった点など、結果の解釈には慎重を要します。特に、遅延群の85%がニボルマブを受けたことで治療継続率が実臨床よりも高くなり、研究結果に影響を与えた可能性が指摘されています。免疫チェックポイント阻害薬の最適な使用タイミングをより詳細に検討する必要があり、さらなる大規模試験による検証が求められるでしょう。

編集部まとめ

今回の研究では、進行期扁平上皮非小細胞肺がんに対するニボルマブの維持療法が検討されました。がん治療は日々進化しています。大切なのは、治療の選択肢を理解した上で、自分に合った最適な治療を選ぶことです。医師としっかり相談しながら、納得できる治療方針を決めていきましょう。

※提供元「日本がん対策図鑑」【肺がん:維持療法(OS)】「オプジーボ」vs「支持療法」
https://gantaisaku.net/eden/

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