【受精卵凍結に助成金】若年がん患者が、将来子どもを持てる可能性の拡大
小児や若年がん患者が、将来子どもを持てる可能性が高まるように、厚生労働省は精子や卵子、受精卵を冷凍保存する費用の一部を支援することを発表しました。この記事では、発表の詳細と、保険適用の施術になる可能性について中島先生に詳しくお伺いしました。
監修医師:
中島 由美 医師
今回の発表内容について
中島先生、今回の厚生労働省の発表についてわかりやすく解説してください。
中島先生
代表的ながん治療である抗がん剤や放射線は、生殖機能を低下させる可能性があります。そのため、将来子どもを持ちたいと考えるがん患者さんは、現在全額実費で精子や卵子、受精卵の保存をしています。
このような背景から厚生労働省は、がん治療により子どもを作る時間的猶予がない方、または初潮開始前で採卵が難しい年齢のがん患者さんを対象に、受精卵等の冷凍保存費用の支援を発表しました。
精子に対しては1回の施術につき2万5000円、卵子は20万円、体外受精などによる受精卵は35万円の補助金が支払われます。また、各施術2回まで支援する方針です。なお、この補助金については2021年2月に設置する有識者会議で正式決定され、制度の開始は新年度である同年4月を予定しています。
補助金が支援されることによる変化
今回発表された補助金の支援で、変化が起きると思いますか?
中島先生
今回発表予定の補助金は、実際にかかる費用の半額です。しかし、高額ながんの治療費がかかる患者の方にとっては、少しでも金額の負担が減ることや、精神的な負担が軽減されることによって、将来に期待を持って治療に取り組むことができる朗報といっても過言ではないでしょう。
将来、保険適用になる可能性
将来的に、保険適用になる可能性はあるのでしょうか?
中島先生
受精卵などの保存が保険適用になる可能性は、今のところわかりません。厚生労働省は今回の補助金導入により、妊娠に至るデータを収集し、受精卵の冷凍保存の有効性を確認することを公表しています。この調査結果によっては、今後、受精卵の凍結費用が保険適用になる可能性もありますが、保険適用になるまでには、妊娠に至ったがん患者数の変化やデメリットの確認、必要な場合は改善策の立案など、さまざまな項目をクリアしなければいけません。
そのため、現段階で保険適用の可能性を判断することは難しいといえるでしょう。
まとめ
今回の厚生労働省の発表は、将来子どもを持ちたいと考える若年がん患者を対象に、精子や卵子、受精卵の保存費用を2021年4月より支援するという内容です。がんの治療は医学的根拠に基づいた放射線や抗がん剤治療も重要ですが、ストレスや不安、日頃の生活習慣なども影響します。「将来子どもを持てる可能性」が高まることで、若年がん患者が期待を持って治療に専念できる取り組みが今後も広がっていくことを願いたいですね。