FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. NEWS
  3. 新型コロナウイルス感染「15分診断キット」販売へ

新型コロナウイルス感染「15分診断キット」販売へ

 更新日:2023/03/27

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症。日本国内においても、2020年3月26日現在1253名の感染が確認され、45名が命を落としたとのことです。アメリカやヨーロッパなどでも爆発的に感染者が増えている状況であり、特により早く正確に感染の有無を調べることができる診断方法の確立が求められているところです。

そんな中、大阪市の繊維メーカー「クラボウ」は中国で新たに開発された新型コロナウイルス感染を15分で判定できるキットの輸入・販売に乗り出すことを発表しました。
そこで今回は、新型コロナウイルス診断キットの今後の可能性について詳しく解説します。

成田 亜希子 医師

監修医師
成田 亜希子 医師

プロフィールをもっと見る
弘前大学医学部卒業後は、内科医として勤務。また、国立医療科学院でも研修を積み生活習慣病や感染症予防などの公衆衛生分野の知見を習得。日本内科学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本公衆衛生学会の各会員。

15分で診断可能! 新たな診断方法とは?

新型コロナウイルスは2019年12月頃に中国武漢市の肺炎患者から検出された新たなウイルスです。そのため、感染経路、治療法、感染してからの経過など明確には解明されていないことが多々あり、世界の研究機関は新型コロナウイルスの全貌を明らかにすべくさまざまな研究や調査が行われています。

検査方法もその一つであり、簡便かつ迅速に、そして高精度な判定を可能にする検査方法の開発が進められています。今回、「クラボウ」が輸入・販売すると発表した診断キットにはどのような可能性があるのか見てみましょう。

従来の検査方法は? どんな問題点が?

現在、日本国内で新型コロナウイルス感染の有無を確認するには「PCR法」と呼ばれる検査を行います。

「PCR法」とは、咽頭拭い液や血液中に含まれるウイルスの遺伝子を特殊な薬剤と機械で増幅させることでウイルスを検出する方法です。検体の中に含まれるわずかな遺伝子を検出することができるため精度の高い検査と言えますが、遺伝子を増殖するには3段階の行程が必要であり、それなりの労力も必要……。新型コロナウイルスの場合は検出に6時間程度かかるとされており、国内で検査を実施できるのは国立感染症研究所や地方衛生研究所、指定された民間期間など限られた施設のみとなっています。

そのため、流行が拡大している地域を除いて、強く感染が疑われる濃厚接触者や流行国からの帰国者以外は積極的な検査ができないことも大きな問題となっています。厚生労働省の公表によれば、2020年3月26日現在、日本国内で行われたPCR検査は2万2858件とのこと。他の先進国と比べると検査件数ははるかに少ないのが現状です。

成田 亜希子 医師成田先生

新型コロナウイルスは世界171もの国・地域に広がり、世界の感染者は44万人を越えました。未知のウイルスではありますが、少しずつ病態も解明されつつあり、感染しているものの全く症状がない「無症状感染者」も多いことが分かってきました。つまり、感染に気付かないまま生活を送っている方も多いということ。感染者や感染が疑われる方と接していなくても知らないうちに感染してしまっている可能性もあるのです。

このため、世界では発症が疑われる方や感染している可能性がある方に対して大々的な検査が行われています。日本では未だ限られた方にしか検査が行われていないため、知らないうちに感染した人が、別の人にうつし、その人がまた別の人に……と拡がっていく可能性も考えられるのです。

15分で診断可能! 診断キットの可能性とは?

大阪市の繊維メーカー「クラボウ」は、提携を結んでいる中国企業が開発した「迅速診断キット」の輸入・販売に乗り出すことを発表しました。

この診断キットは、血液中のウイルスに対する抗体を検出する「イムノクロマト法」と呼ばれる検査方法をとり、特別な機械は不要。キットのくぼみに少量の血液と専用の薬液を垂らすと15分で感染の有無が判定できるとされています。

成田 亜希子 医師成田先生

このような診断キットは、インフルエンザ、溶連菌、RSウイルスなどさまざまな感染症の診断に活用されており、簡便ながらも高精度の判定が可能です。

今回、輸入・販売が開始される新型コロナウイルスの診断キットも、開発した中国企業によれば判定制度は95%とのこと。従来のPCR法による検査より精度は落ちますが、より多くの方が検査を受けることが可能に。「クラボウ」は1日あたり最大で1万人分の検査キットを供給できるとして、16日から販売を開始しています。

このほかにも、アメリカやヨーロッパなどでも続々と診断キットの開発が進んでおり、今後もさまざま検査方法の開発が進んでいくことが考えられます。

この記事の監修医師