「食道がんで行う血液検査」はご存知ですか?進行してから現れる症状も医師が解説!

がんと診断されるとさまざまな検査を受けて、患者さんの体内でどのようながんが、どの程度拡がっているのか調べる必要があります。
どのような検査が、どのような理由で実施されるのかわからないまま検査に追われると、苦痛に感じる患者さんもいるでしょう。
患者さん自身も検査の必要性や、検査でわかる内容を理解して、主体的に検査に協力しましょう。
今回は食道がんになった際に受ける、血液検査の方法や目的を解説します。
食道がんの原因や治療法も解説するので、治療の参考にしてください。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
食道がんとは?
食道がんとは、のどと胃をつなぐ管状の臓器、食道の粘膜に発生するがんです。進行すると粘膜から深層の粘膜下層、固有筋層、外膜へと拡がります。
食道は肺や大動脈、心臓などの生命維持に重要な臓器と隣接しているため、食道がんが見つかった際は転移のリスクに警戒する必要があります。
60〜70歳代の男性に多く見つかるがんです。
食道がんで行う血液検査
食道がん治療のために受ける血液検査とは、一般的には腫瘍マーカー検査を指します。
腫瘍マーカー検査とは、患者さんの体液の成分を専用の分析装置を使って測定する検査です。血液のほか、尿でも測定が可能です。
患者さんの身体への負担が少ないメリットがあります。以下では腫瘍マーカー検査の目的や、検査からわかる内容を解説します。
がんの種類によって作られる物質を調べるときに実施する
食道がんの血液検査、腫瘍マーカー検査で調べているのは、体液中の腫瘍マーカーの種類や数値です。
腫瘍マーカーとは、がん細胞が放出する物質の総称です。がんの種類によって、放出される腫瘍マーカーの種類や量が異なります。つまりがん細胞が活動する際の副産物を、患者さんの体液中から探すのが腫瘍マーカー検査です。
食道がん細胞が放出する腫瘍メーカーは、SCC(扁平上皮がん関連抗原)やTPA(組織ポリペプチド抗原)、CEA(がん胎児性抗原)です。
治療効果を見るときに実施する
がんが作り出す物質が体内に存在するか検査する腫瘍マーカー検査は、以下のような目的で実施されます。
- 診断の補助
- 診断後の経過観察
- 治療の効果測定
ただし腫瘍マーカー検査のみから、上記の判断はできません。以下のような検査と組み合わせて、医師が総合的に判断します。
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
- 上部消化管造影検査
- CT検査・MRI検査
- PET検査(陽電子放射断層撮影検査)
- 超音波(エコー)検査
- 超音波内視鏡検査
上部消化管内視鏡検査や上部消化管造影検査は、食道がんの診断のために実施されます。対してCT検査やPET検査などは、食道がんの進行度を調べるために実施されます。
検査の精度は参考程度である
がん治療に伴って実施される血液検査、腫瘍マーカー検査では、分析結果の数値から体内にがん細胞があるかの調査が可能です。ただし、がん細胞の発生以外に、以下のような要素でも数値が変動します。
- 薬の影響
- 肝障害
- 腎障害
- 飲酒
- 喫煙
- がん以外の疾患
がん以外の要因でも数値が変動するため、腫瘍マーカー検査の結果は、あくまでひとつの判断材料と理解しておきましょう。
血中にあるがん由来のctDNAを調べる検査もある
食道がんで実施される血液検査には、腫瘍マーカー検査のほかに超高感度血液検査があります。
超高感度血液検査とは、血液中に流れるがん細胞から剥がれ落ちたctDNA(腫瘍細胞由来血中循環遊離DNA)を、デジタルPCRと呼ばれる技術で測定する検査です。腫瘍マーカー検査やCT検査よりも精度が高く、いち早くがんの再発を発見できる検査として期待されています。
食道がんにかかる原因
食道がんは以下のような生活習慣が原因でかかりやすくなるといわれています。
- 飲酒
- 喫煙
- 栄養状態不良
- ビタミン不足など
飲酒と喫煙、両方の習慣がある患者さんは、食道がんのリスクがより高まります。食道がんの発生、および再発リスクを抑えたいならば、生活習慣を見直しましょう。
食道がんの症状
初期の食道がんでは自覚症状がほとんどなく、早期発見には検診や人間ドックが必要です。
患者さんが自覚できる症状が現れるのは、食道がんがある程度進行してからです。食道がんは初期段階から転移が発生しやすい特徴を持ちます。
定期的な検診を受け、以下で紹介するような身体の変化を感じたら早めに医療機関へ受診しましょう。
胸や背中の違和感が生じる
食道がんが発生してまず現れやすい症状が、胸や背中の違和感です。飲食物を飲み込んだ際に、胸の奥がチクチク痛む、熱いものを飲み込んだときしみるなどの異変がないでしょうか。
胸や背中の違和感は一時的に消える特徴があります。おかしいと感じたら放置せず、医師に相談しましょう。
食物が飲み込みにくく体重が減少する
食道がんが大きくなり、食道を狭めるようになると、普段どおりの食事が難しくなります。飲食物を飲み込みづらくなるため、硬いものからやわらかいもの、液体と飲み込めるものが限られていきます。
食道がんが進行すると、唾液すら飲み込めなくなるケースも少なくありません。食事が満足に取れないため、体重も減少しやすくなります。
咳や声のかすれが起きる
食道がんが進行して気管や気管支などの周辺組織に拡がると、咳の症状が出るようになります。
また、がんが声帯を調節している神経まで拡がると、声のかすれが生じます。咳や声のかすれは、食道がん以外にも肺や心臓、のどの病気から引き起こされやすい症状です。
咳の症状が3週間以上続く場合は、医療機関で相談しましょう。
食道がんの治療法
食道がんには複数の治療法があり、以下の要素を加味しながら担当医と患者さんが話し合って治療法を選択します。
- 食道がんの進行状況
- 患者さんの希望
- 患者さんの生活環境
- 患者さんの年齢
- 患者さんの健康状態など
以下では食道がんの治療法を詳しく解説します。
外科療法・内視鏡的切除
外科療法は手術で食道を切除する治療法です。胃やリンパ節までがん細動が拡がっている際に選択され、同時に再建手術も行われます。
対して内視鏡的切除とは、内視鏡を食道内に挿入して、内視鏡先端に取り付けたワイヤーや高周波ナイフでがん細胞を切除する治療法です。食道を温存できる食道がんの標準的な治療法ですが、選択できるのは転移がなくサイズの小さい初期の食道がんの患者さんに限られます。
化学放射線療法
薬を投与する化学療法と、放射線でがんを小さくする放射線療法を組み合わせた治療法です。内視鏡切除が難しいがんに対して、根治を目指して実施されるケースがあります。
薬物療法
食道がんの治療に薬物療法が選択されるのは、ほかの治療法と組み合わせて根治を目指す場合と、根治が難しい食道がんの症状を和らげる場合です。薬物療法では細胞障害性抗がん薬と免疫チェックポイント阻害薬が用いられます。
食道がんの血液検査についてよくある質問
ここまで食道がんの血液検査を中心に紹介しました。ここでは「食道がんの血液検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がんの血液検査で値が高かったときは受診すべきですか?
血液検査のなかでも腫瘍マーカー検査を受けた場合は、その検査結果のみから食道がんが発生していると診断はできません。診断には追加で胃カメラやCT検査などが必要となるため、医療機関へ受診してください。
血液検査を早期発見につなげることはできますか?
血液検査が腫瘍マーカー検査であった場合、がんが患者さんの体内にあるか否か断定するだけの精度はありません。そのため早期発見に有効とまではいいきれません。腫瘍マーカー検査は、がん診断においては補佐的な位置付けです。
編集部まとめ
食道がんの血液検査とは、一般的には腫瘍マーカー検査のことです。
腫瘍マーカー検査では、体液から患者さんの体内にがん細胞が存在するか探ります。
しかし精度は高くなく、検査結果はほかの検査と組み合わせる前提でがん治療に活かされています。
食道がんは初期症状がほとんどないといわれるがんのため、定期的な検診などで早期発見に努めましょう。
食道がんと関連する病気
「食道がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
食道がんは複数のがんが同時に発症する、重複がんを生じやすいがんです。医療機関では上記のがんにも警戒しながら治療を行います。
食道がんと関連する症状
「食道がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸の痛み
- 背中の痛み
- 咳
- 嗄声(させい)
嗄声とは声がかすれる症状です。嗄声が生じるのは声帯に問題がある場合と、声帯を動かす神経に問題がある場合があります。食道がんで嗄声が生じるのは、食道を動かす神経ががんに犯されるためです。




