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「胃がんの手術法」はご存じですか?4つの切除法・術後合併症を医師が解説!

 公開日:2025/12/17
【胃がん手術】切除法と術後合併症の症状はご存じですか?医師が解説!

胃がんの手術はどのような手術方法が存在し、それぞれにどのような特徴があるのでしょうか?

本記事では胃がんの手術について以下の点を中心にご紹介します。

  • 胃がんの手術について
  • 胃がん切除方法
  • 胃がん手術の主な合併症

胃がんの手術について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

胃がんの手術について

胃がんの手術は、がんを除去することによる根治が目的です。手術では、がんの大きさや位置、深達度を考慮して、胃の一部または全部を切除します。
早期胃がんの場合は、できるだけ胃の機能を温存するために切除範囲を小さくしますが、がんが取り残されないよう十分な余裕を持って切除します。

また、がんが周囲のリンパ節に転移している可能性があるため、胃周囲のリンパ節も脂肪組織ごと郭清(切除)します。この際、リンパ節郭清の範囲は、がんの進行度によって決められています。

胃とリンパ節の切除後は、食事が摂れるように残った消化管をつなぎ合わせる再建術を行います。
再建方法は、胃の切除範囲や患者さんの状態に応じて選択されます。

胃がん切除方法

以下では、胃がん切除方法を4つ紹介します。

胃全摘術

胃全摘術は、胃上部に及ぶ進行胃がんや、胃上部の早期胃がんで幽門側の胃を半分以上残すことが難しい場合に選択されることがある手術方法です。
胃全摘術では、胃の入口である噴門と出口である幽門を含めた胃全体を切除します。

胃を全摘した後には、再建法が行われます。再建方法にはRoux-en-Y法があります。

Roux-en-Y法では、食道と空腸(小腸の上部)を吻合(つなぎ合わせる)し、さらに空腸同士を吻合して食物が通過できるようにします。
また、十二指腸から分泌される消化液(膵液・胆汁)と食物が混ざるように、空腸同士も吻合します。
逆流性食道炎を防ぐため、空腸と食道を40cm以上離すことが重要です。

近年は、術後のQOL(生活の質)を考慮し、可能な限り胃を残すことが重視されています。胃を残すことで、術後の急激な体重減少を軽減できるからです。
しかし、がんの根治性を損なわないように、十分な切除範囲の確保が大切です。

幽門側(ゆうもんそく)胃切除術

幽門側胃切除術は、がんを取り除きつつ、胃の機能を可能な限り温存することを目的とした術式です。

幽門側胃切除術は、胃の出口である幽門を含めて、胃の下部(幽門側)を3分の2から5分の4程度切除します。
胃の上部にかからない進行胃がんで、胃の中部から下部に腫瘍がある場合にに対して行われます。

幽門側胃切除術では、残った胃(噴門側)と十二指腸または小腸をつなぎ合わせる再建術が行われます。再建方法には主に3つの方法があります。

1つ目は、ビルロートI法と呼ばれる方法で、残った胃と十二指腸を直接つなぎ合わせます。
2つ目は、ビルロートⅡ法と呼ばれる方法で、十二指腸の断端は縫い閉じてしまって空腸の近い部分にスリットを開け、そこに残った胃をつなぎ合わせる方法です。
3つ目は、Roux-en-Y法と呼ばれる方法で、残った胃と空腸(小腸の上部)をつなぎ合わせます。

Roux-en-Y法では、十二指腸から分泌される消化液(膵液・胆汁)と食物が混ざるように、空腸同士も吻合します。

幽門(ゆうもん)保存胃切除術

幽門保存胃切除術は、胃の中部に限局した小さな早期胃がんで、腫瘍が幽門輪から4cm以上離れている場合に、選択されることがある術式です。
幽門保存胃切除術では、胃の出口である幽門を温存し、胃の中部を切除します。
胃の機能を可能な限り温存しつつ、がんを取り除くことを目的とした術式です。

切除後の再建方法は、残った胃の上部(噴門側)と下部(幽門側)をつなぎ合わせます。幽門を温存することで、食物が急激に腸に流れ込むことを防ぎ、胃の機能を一部保てます。

幽門保存胃切除術は、術後のダンピング症候群や貧血、体重減少が起こりにくいというメリットがあります。
しかし、胃もたれや逆流症状が起こる可能性があり、また残胃に新たながんが発生するリスクもあるため、定期的な内視鏡検査による経過観察が重要です。

噴門側(ふんもんそく)胃切除

噴門側胃切除は、胃の上部(噴門側)に限局した早期胃がんや、食道胃接合部がんの一部に対して行われることがある機能温存手術です。
噴門側胃切除では、噴門を含めて胃の上部を3分の1から2分の1程度を切除し、残りの2分の1から3分の2の胃を温存します。

噴門側胃切除後の再建方法には、主に2つの方法があります。1つ目は、食道と残胃を直接つなぎ合わせる食道残胃吻合法です。
この方法では、逆流防止機構を付加するために、胃壁で食道と残胃の吻合部を覆います。胃内容物の食道への逆流を防ぎます。

2つ目は、ダブルトラクト法と呼ばれる方法です。この方法では、食道と空腸(小腸の上部)、残胃と空腸、空腸同士をつなぎ合わせます。
食物が2つの経路(食道→空腸、食道→空腸→残胃)を通るため、残胃の機能を生かせます。

胃がん手術の主な合併症

ここでは、胃がん手術の主な合併症を3つ紹介します。

縫合不全

縫合不全は、患者さんの全身状態や手術の難易度などが関係する合併症です。

手術では、切除した胃と残った消化管(食道、十二指腸、小腸など)をつなぎ合わせますが、縫合部がうまくくっつかず、つなぎ目から食べ物や消化液が漏れ出てしまうことを縫合不全と呼びます。

縫合不全が発生すると、漏れ出た消化液により腹腔内に炎症が起こり、激しい腹痛や発熱などの症状が現れます。
重症化すると、腹膜炎を引き起こし、生命に関わる危険な状態になることもあります。

縫合不全が疑われる場合、まずは絶飲食とし、鼻から管を入れて胃内容物を体外に排出します。
また、抗生物質の点滴投与を行い、炎症を抑えつつ、縫合部の治癒を待ちます。

しかし、穴が大きかったり、全身状態が悪化した場合には、再手術が必要になることもあります。

膵液漏

膵液漏は、胃がん手術において、リンパ節郭清の際に膵臓の損傷によって起こり得る合併症です。

膵液には、タンパク質や脂肪を分解する強力な酵素が含まれているため、漏れ出た膵液が周囲の臓器や血管に触れると、それらを溶かしてしまう危険性があります。
結果、重大な合併症として、感染による膿瘍形成や、血管損傷による出血などを引き起こすことがあります。

膵液漏が疑われる場合、ドレーンを留置して膵液を体外に排出するとともに、状況次第では抗生物質の投与を行い、感染を防ぐことが重要です。
また、膵液の漏出が続く場合には、膵液瘻(ろう)と呼ばれる状態になることがあり、治療に時間がかかることがあります。

腹腔内膿瘍

腹腔内膿瘍は、胃がん手術後に起こり得る合併症です。腹腔内膿瘍の主な原因として、縫合不全や膵液漏、腹腔内膿瘍などが考えられますします。
膿瘍は、腹腔内のさまざまな場所に形成され、その位置によって症状が異なりますが、腹痛や発熱が主な症状として現れます。

腹腔内膿瘍が疑われる場合、CT検査や超音波検査などの画像診断により確認を行います。
膿瘍が確認された場合、まずは抗菌薬の投与により感染のコントロールを図ります。
しかし、膿瘍が大きい場合や、抗菌薬だけでは改善が難しい場合には、ドレナージが必要となります。

ドレナージは、膿瘍に直接カテーテルを挿入し、膿を体外に排出させる処置です。
カテーテルは一定期間留置され、膿瘍の縮小と感染の改善を確認しながら管理します。

胃がんについてよくある質問

ここまで胃がんの手術内容や合併症などを紹介しました。ここでは「胃がんの手術」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

胃がんの開腹手術と腹腔鏡手術の違いは何ですか?

本多 洋介本多 洋介 医師

胃がんの手術には、開腹手術と腹腔鏡手術の2つのアプローチ方法があります。開腹手術は、上腹部を15〜20cm程度切開し、直接臓器を目視しながら手で触れて手術を行う伝統的な方法です。
一方、腹腔鏡手術は、腹腔内にガスを注入して5〜12mmの小さな穴を数か所開け、高解像度カメラで拡大視しながら専用の器具を用いて手術を行う方法です。

胃がん手術後の後遺症はどのような症状がありますか?

本多 洋介本多 洋介 医師

胃がん手術後の後遺症は、小胃症状、ダンピング症候群、逆流性食道炎などがあります。小胃症状は、胃が小さくなったため食事量が減少し、もたれ感や腹部膨満感、体重減少などが起こります。
ダンピング症候群は、食べ物が急速に腸に流れ込むことで起こり、早期には腹痛や下痢、動悸などが、後期には低血糖症状が現れます。
逆流性食道炎は、胃の入り口の機能低下により、胸やけや苦い液の逆流などが起こります。

まとめ

ここまで胃がんの手術についてお伝えしてきました。
胃がんの手術についての要点をまとめると以下のとおりです。

⚫︎まとめ

  • 胃がん手術は、がんを除去し再発を防ぐため、胃の一部または全部を切除する
  • 切除方法は、がんの位置や進行度により、胃全摘術、幽門側胃切除術などがある
  • 主な合併症は、縫合不全、膵液漏、腹腔内膿瘍で、重篤化する可能性もある

胃がんと関連する病気

胃がんと関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

胃がんと関連する症状

胃がんと関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胃の痛み
  • 胸やけ
  • 食欲不振
  • 貧血

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師