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「胃アトニー」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

公開日:2023/01/23
「胃アトニー」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

これまでは胃に病変が見つからないのに胃もたれ・腹部膨満感・胃痛などがある場合、それらの症状については胃下垂や慢性胃炎、あるいは神経性胃炎との診断でした。

なかでも胃が垂れ下がる胃下垂の状態が続くと胃壁が引き延ばされて胃の働きが悪くなり、これらの症状が慢性的に悪化することが多く、その状態をとくに胃アトニーとして治療されていました。

しかし、2013年にこれらの胃における症状が続く状態を総称する機能性ディスペプシア(FD)という診断名が付けられることとなり、翌年には診療ガイドラインが発表されて最近では胃アトニーという診断名は使われなくなっています。

ただ、一般的に「機能性ディスペプシア」との診断名はまだ馴染みがうすいため、ここではこれまで使われてきた「胃アトニー」としてその症状・原因などを解説します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

胃アトニーの症状と原因

ストレス性の腹痛

胃アトニーはどんな病気ですか?

胃アトニーを含む機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)は、日本の消化器疾患としては発症頻度が高いことが指摘されている疾患です。日本では4人に1人が症状に悩む現代病の一つとされ、多数の患者さんがこの疾患によって医療機関を受診しているとみられています。
患者さん自身が気付かないうちに胃下垂を起こし、それによって胃の働きが低下して胃の中に食べ物を溜められなくなります。また、逆に十二指腸への排出がされにくくなることもあり、いずれにしてもそれらによって胃のもたれ・膨満感・胃の痛みなどが起こるのです。

胃アトニーの症状を教えてください。

胃アトニーを含む機能性ディスペプシアでは、次に挙げる不快な消化器症状が慢性的にみられます。
その際に胃そのものの外観上の異常は見られず、X線検査や内視鏡検査などを実施しても気質的病変が発見されることはほとんどありません。

  • 胃もたれ
  • 腹部(胃部)膨満感
  • 胃痛
  • 胸やけ
  • 悪心・嘔吐
  • げっぷ(噯気)
  • 食べ物を飲み込む際の咽頭部つかえ感

胃アトニーの主な原因を教えてください。

胃アトニーを含む機能性ディスペプシアにおいて症状が引き起こされる主な原因には、胃の働きが弱くなることにありますが、ほかにも次に挙げる様々な原因が関連すると指摘されています。

  • 胃下垂などによって胃の筋肉の伸縮性が低下するなどして胃の運動機能障害が発生している
  • 胃壁が知覚過敏になり分泌された胃酸の刺激を受けやすくなっている
  • 精神的あるいは肉体的なストレスに晒されて脳と胃腸の神経伝達の異常が起こっている
  • ヘリコバクター・ピロリ菌の感染によって胃に慢性的な炎症が起こっている
  • 遺伝子的にみて胃の働きが弱い体質である

胃アトニーの自覚症状

腹痛の女の子

どのような人に多く発症しますか?

機能性ディスペプシアは男性より女性に発症しやすく、治癒しにくい傾向があることが海外で示されています。日本においてもその傾向がみられるとされていますが、明らかなエビデンスが足りないために性差についてはまだ明らかではありません。
年齢については海外だと若い世代の方が高齢者より発症しやすいとされていますが、日本ではやはりエビデンスが不足しているため不明です。
また肥満については、日本や海外においてBMI(肥満指数)が高いほど機能性ディスペプシアの有症率が高いとの報告があるものの、相関関係があるかどうかについてはわかっていません。

胃アトニーに自覚症状はありますか?

病状が進むと食後の胃のもたれや胃痛などをいつも感じるようになります。また、みぞおちの部分が痛む心窩部痛や心窩部灼熱感などもよくみられる自覚症状です。
医学用語で噯気(あいき)と呼ばれるげっぷが盛んに発生している時は、胃が膨れ上がり膨満感に苦しむことがあり、強い痛みを感じるケースもあります。

自覚症状があったら病院にいくべきですか?

上記のような自覚症状が3ヵ月間以上続いているようであれば、病院で診察を受けましょう。X線検査や内視鏡検査を受診して、胃に器質的病変がないかを確認することが大切です。
機能性ディスペプシアという診断名が付くことで、診療ガイドラインに基づいた適切な治療方法を提案してもらえます。また、しっかり診断をしてもらうと同じような症状がみられる疾患との鑑別診断が可能となり、それらの疾患の治療の遅れを防ぐことにつながります。

胃アトニーの予防はできますか?

胃アトニーを含む機能性ディスペプシアの予防には、生活習慣の改善、とくに暴飲暴食や偏食などの不摂生をしないように食生活を改善することが重要です。
これに加えて規則正しい生活を送ることも大切です。毎日同じ時間帯に不足しないようにしっかり睡眠をとり、ストレスを溜めない生活を送りましょう。
また、気温の温度差が激しい場合も自律神経に刺激を与えてストレスになることがあるので、夏の冷房の効かせ過ぎや冬に暖かい部屋から外出する際の防寒には注意が必要です。
そして、タバコもまた自律神経(交感神経)を刺激して興奮させるため、禁煙するようにしてください。

気を付けるべき食事のポイントはありますか?

最も気を付けるべき食事のポイントは、高脂肪食の食べ過ぎとアルコールの飲み過ぎを避けることです。これらハイカロリーで脂肪の多い食事を摂り続けることは胃アトニーの懸念が生じるだけでなく、各種成人病にかかりやすくなるポイントになるため、十分に注意しなければなりません。
ただしそれらが好物である場合、厳しく制限することによって大きなストレスを引き起こしてしまう場合があるため、制限のし過ぎには注意が必要です。先に述べたようにストレスは機能性ディスペプシアを発症するリスクに含まれているため、ストレスを溜めないよう高脂肪食やアルコールとは上手に付き合いましょう。
また、消化のよい食物をゆっくりよく噛んで食べることで食べ過ぎを防げます。そして規則正しい食生活を送ることも大切なポイントです。

胃アトニーの治療法

内服薬

生活習慣の改善で治りますか?

胃アトニーを含む機能性ディスペプシアの治療と予防には、生活習慣の改善が非常に重要です。そして、それとともに食事内容の改善や、できるだけストレスを溜めずに過ごせるような生活環境作りも大切です。
そのような環境作りには、同居している家族の協力が必要となります。医師のアドバイスをしっかり守ることに加えて、家族にも協力をしてもらいましょう。

胃アトニーの治療方法を教えてください。

治療方法には生活習慣の改善につながる食事療法と運動療法のほかに、薬剤による対症療法があります。胃アトニーは発症原因が一つであることが少なく、様々な原因が複雑に絡み合っているケースが多い疾患です。
医師の診察によって全ての原因を炙り出したうえで、次に挙げる各種の内服薬が組み合わされて処方されます。

  • 消化管運動調節薬:ガスモチン・ガナトン・アコファイドなど
  • 胃酸分泌抑制薬:プロトンポンプ阻害薬・H2受容体拮抗薬
  • 鎮痙剤:ブスコパン・コリオパンなど
  • 漢方薬:六君子湯・真武湯・補中益気湯など
  • 抗不安薬:メリスロン・セルシンなど
  • 抗うつ剤:ドグマチー・パキシル・ルボックスなど

最後に、読者へメッセージをお願いします

胃アトニーなどの機能性ディスペプシアは、腹部の症状が長く続いているのに検査で異常が見つからないことが多い病気です。
医師はどのような症状がいつごろから起きているかなどの状況のほか、ふだんの生活習慣と生活環境・職場環境などについて細かく問診を行い診断します。そのため機能性ディスペプシアを詳しく理解している専門の医師に相談することと、症状をできるだけ具体的に伝えることが重要です。
そのうえで医師やスタッフを信頼して生活指導に従うことが、治療効果を上げることにつながります。

編集部まとめ

医師と患者
これまでは発症原因がよくわからず慢性胃炎などと診断されることもあった胃アトニーですが、今では機能性ディスペプシアという診断名が付けられるようになりました。

2014年には日本消化器学会から診療ガイドラインが発表され、診断や治療方法が確立されつつあります。

なかなか治らない胃のもたれや痛みに腹部の膨満感などの悩みは、医師の診断を受けることで解決が可能です。

胃の具合が気になっているのであれば、一日も早く専門の医師の診察を受けることをおすすめします。