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下肢静脈瘤と診断されても様子見で済むことはある? それとも治療は必須?

 更新日:2023/03/27

膝から下の足の表面にコブのようなデコボコが生じる「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」。足に不具合などは感じず、「見た目が気になる」くらいでも、治療した方がいいのでしょうか。しかし、審美目的での治療だと、健康保険が適用されないかもしれないという問題も出てきます。この疑問について「うのさわクリニック」の宇野澤先生に伺ってきました。

宇野澤聡

監修医師
宇野澤 聡(うのさわクリニック 院長)

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日本大学医学部卒業、日本大学医学部大学院修了。日本大学系列の附属病院で、主に心臓血管外科の診療を経験。2020年、千葉県流山市に「うのさわクリニック」開院。心臓の病気のほか、下肢静脈瘤や人工透析に向けたシャント手術もおこなっている。医学博士。日本循環器学会認定専門医、日本心臓血管外科学会認定専門医、日本脈管学会認定専門医。日本外科学会、日本胸部外科学会、日本静脈学会、日本透析医学会の各会員。

症状が乏しければ様子見という選択肢も

症状が乏しければ様子見という選択肢も

編集部編集部

下肢静脈瘤で、治療に至らないケースはあるのでしょうか?

宇野澤聡宇野澤先生

足の表面に見た目の変化が起きていても、むくみやだるさ、しびれ、痛みなどの症状を感じなければ、必ずしも治療をする必要はありません。足に症状がなければ、「見た目の問題」となってしまいます。

編集部編集部

コブそのものは、症状や病気とみなさないのですか?

宇野澤聡宇野澤先生

下肢の静脈がコブのように膨らんでいれば、「下肢静脈瘤」という病気になります。ただし、病気があるからといって、全てが治療の対象になるわけではありません。患者さんが症状で悩んでいるのであれば、治療介入していきます。

編集部編集部

治療方法について詳しく教えてください。

宇野澤聡宇野澤先生

カテーテルによる「血管内焼灼術」が多くの施設でおこなわれていますが、保険で認められているのは、症状があり伏在静脈(ふくざいじょうみゃく)という血管が逆流している場合のみです。血管内に細い管を通していって、逆流している血管を焼いていきます。その一方で伏在静脈に逆流がない場合は、薬で血管を固める「静脈瘤硬化療法」という方法もあります。これは比較的程度の軽い静脈瘤に対しておこなわれることが多いですね。また、このような治療をご希望されなければ、弾性ストッキングで経過を見ていくこともあります。

編集部編集部

症状がなくてもコブがあると気になります。保険適用で弾性ストッキングなどを処方してもらえないのでしょうか?

宇野澤聡宇野澤先生

弾性ストッキングを着用することも1つの治療方法になりますが、弾性ストッキング自体には保険が適用されません。症状があるけど手術を受けたくないような人には、弾性ストッキングをおすすめしています。少なくとも弾性ストッキングを着用している間は症状を緩和できます。

編集部編集部

治療が不要とされる場合、患者さんに任せることもありますか?

宇野澤聡宇野澤先生

立ち仕事などで将来静脈瘤が悪化する要因がある場合には、弾性ストッキングをお渡しして「何か気になることがあったら、いつでもご相談ください」とお伝えすることはあります。下肢静脈瘤は症状の有無、逆流している血管の位置などを総合的に判断して、治療方法を患者さんと相談しながら決めていくことになります。

患者さんの判断で様子を見た結果、悪化する場合も

素人判断による様子見は危険を伴う

編集部編集部

仮にコブがあったとして、別の原因でむくみを生じさせていることも考えられますよね?

宇野澤聡宇野澤先生

もちろん、あり得ることです。むくみのほか、足のだるさや痛みなどといったほかの症状についても同様です。足の静脈をエコーで検査して、静脈瘤の原因となる逆流が生じているかどうかを判断します。必要によっては血液検査なども交えて、症状の原因を特定していきます。とくに手術をおこなう場合は、チェックをする必要があります。

編集部編集部

むくみに限定するとしたら、原因を問わず弾性ストッキングで解決するような気がします。

宇野澤聡宇野澤先生

たしかに、足にたまった水分や血液を押し上げるので、むくみは解消するでしょう。しかし逆に、隠れた病気を放置している可能性があります。市販品の弾性ストッキングもありますが、一度、医師に相談していただきたいですね。

編集部編集部

そもそもコブって、気にしない人は気にしない印象があります。

宇野澤聡宇野澤先生

そうかもしれませんが、いずれ皮膚炎や皮膚潰瘍に至るかもしれません。静脈内の逆流によって血管内の圧力が高まると、血液の中身は血管の外に漏れ出してきます。そうなると、今度は毛細血管から細胞への酸素や栄養分を届けたくても、漏れ出た成分が邪魔になって行き渡らなくなります。患部の皮膚炎や皮膚潰瘍は、こうして生じていきます。

編集部編集部

手術で血管を焼いて閉じてしまったら、同じ事態になるのでは?

宇野澤聡宇野澤先生

足の機能で重要な役割を果たす血管は、もっと内部にある深部静脈です。手術をする場合、この深部静脈に血栓や逆流がないことを確認することが重要です。主要の血管さえきちんと機能していれば、支道の1本を封鎖しても影響はありません。

様子を見ている間に間違えそうなこと

様子見している間に間違えそうなこと

編集部編集部

弾性ストッキングの装着をやめると、元に戻ってしまうのでしょうか?

宇野澤聡宇野澤先生

はい。手術などの治療を受けていない限り、元に戻ります。問題は、例えば立ち仕事の人の場合、仕事中に逆流が生じているということです。ご自宅に帰って横になっているときに弾性ストッキングを履いても、あまり意味はありません。お仕事中に履き続けることをおすすめしています。

編集部編集部

いっそのこと筋トレをすれば、ふくらはぎの筋肉が血液を押し上げてくれますか?

宇野澤聡宇野澤先生

筋力を上げても継続して働いてくれなければ、押し上げてくれないと思います。立ち仕事の場合「止まっていることが多い」と思われるので、筋肉そのものを使わないですよね。その意味で、筋トレよりも“歩き回る”方が効果的です。たしかに、ふくらはぎは「第二の心臓」と言われていますが、放っておいても動く本当の心臓とは異なるのです。使わなかったら動きません。

編集部編集部

医療機関によって治療選択肢が異なることは?

宇野澤聡宇野澤先生

程度の軽い静脈瘤の場合は「何もしない」、「弾性ストッキングを着用する」、「硬化療法をおこなう」など、治療を選択する幅があります。他方で、潰瘍などの重症化した場合の処置は限られていますので、医師による差はほとんどないと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

宇野澤聡宇野澤先生

下肢静脈瘤と診断が付いたからといって、必ずしも手術をするわけではありません。下肢静脈瘤が気になるようであれば一度専門の医療機関を受診してください。そのうえで、どうしていくか決めていきましょう。

編集部まとめ

下肢静脈瘤になったからといって、必ずしも治療する必要はないとのことでした。どう対処していくかは、医師と相談したうえで、複数の治療選択肢の中から決めていきましょう。また、弾性ストッキングを着用して症状を緩和しつつ様子見することも可能です。ただし、その判断は医師に診てもらうことが大前提です。

医院情報

うのさわクリニック

うのさわクリニック
所在地 〒270-0101 千葉県流山市東深井382-20
アクセス 東武アーバンパークライン「運河駅」徒歩1分
診療科目 内科、小児科、循環器内科、心臓外科、血管外科

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