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歯周病の放置は認知症の危険も? 歯科医が解説する歯周病のリスク・全身疾患との関係 歯を失うだけでは済まない?

 公開日:2023/07/28
歯周病の放置は歯を失うだけでなく認知症の危険も? 歯科医が解説する歯周病のリスク・全身疾患との関係

成人の8割がかかるといわれる歯周病は近年、全身の健康へのリスクが指摘されています。とはいえ、お口に発生する歯周病がなぜ糖尿病や認知症など全身の病気の発症や悪化につながるのか、疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。そこで、歯周病の放置によって起こりうるリスクやそのメカニズムなどを、佐藤歯科クリニックの佐藤先生に解説してもらいました。

佐藤 正敬

監修歯科医師
佐藤 正敬(佐藤歯科クリニック)

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東京歯科大学卒業。同大学大学院歯周病学講座修了。東京歯科大学水道橋病院保存科、都内開業医での勤務を経て、佐藤歯科クリニックを継承。長年にわたり地域に密着した歯科医院として、患者さんとの対話や心くばりを何よりも大切にした診療を心がけている。東京歯科大学歯周病学講座非常勤講師。日本歯周病学会認定医。歯学博士。

歯周病の症状は歯ぐきの腫れ・出血だけじゃない 手遅れになると骨が溶けて歯が抜けるって本当?

歯周病の症状は歯ぐきの腫れ・出血だけじゃない 手遅れになると骨が溶けて歯が抜けるって本当?

編集部編集部

歯周病というと歯ぐきの出血や腫れといった症状が代表的ですが、それ以外にもトラブルが起こるのでしょうか?

佐藤 正敬先生佐藤先生

歯ぐきの腫れや出血の症状は、歯周病の初期にみられる比較的軽い症状です。この段階を「歯肉炎」と言いますが、歯周病はそこからさらに炎症が歯ぐきの内側に広がると、歯を支える骨を溶かしていきます。そうすると、やがて歯がグラグラと揺れて食べ物が噛みにくくなるほか、歯ぐきから膿が出る・口臭が強くなるなどの症状が表れます。さらに骨が大きく溶けてしまうと、最終的に歯を残せなくなるケースも少なくありません。

編集部編集部

実際に、歯周病で歯が抜けてしまう人は多いのでしょうか?

佐藤 正敬先生佐藤先生

抜歯の原因で最も多いのは歯周病で、抜歯原因の約4割を占めています。とくに40代以降になると歯周病で歯を失う人の割合が増加し、60代以降になると抜歯原因の半数近くを歯周病が占めるようになります。

編集部編集部

そうすると、若い頃よりも年を取ってからのほうが歯周病で歯を失うリスクが高くなるのですね。

佐藤 正敬先生佐藤先生

その傾向は高いと思います。歯周病は比較的緩やかに進行する慢性疾患ですが、ある程度病状が進行するまでは痛みなどの症状がありません。発症してもそれに気づかず、知らないうちに進行していくのが歯周病のやっかいなところです。若い頃は何ともなかった歯がいつのまにかグラグラするようになり、気になって歯科医院に行ったらすでに手遅れだったということも、歯周病ではめずらしくありません。

歯周病を放っておくと全身の健康にも影響が? 糖尿病や認知症、ほかの全身疾患と歯周病の関係を歯科医が解説

歯周病を放っておくと全身の健康にも影響が? 糖尿病や認知症、ほかの全身疾患と歯周病の関係を歯科医が解説

編集部編集部

歯周病は歯が抜けるだけでなく、近年は「全身の病気にも関係している」と聞くのですがそれは本当でしょうか?

佐藤 正敬先生佐藤先生

これは本当で、例えば「糖尿病」はその代表的な病気の1つです。歯周病は糖尿病の発症や進行に悪影響を及ぼすだけでなく、歯周病を治療することで血糖値が改善することも多くの研究で明らかになっています。

編集部編集部

糖尿病のほかに、歯周病との関連がわかっている全身の病気はありますか?

佐藤 正敬先生佐藤先生

主なものに、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、誤嚥性肺炎、妊婦の早産・低体重児出産などのリスクが考えられます。いずれもまだ研究段階ですが、歯周病がこれらの病気の有病率や死亡率に影響を与えるというデータも報告されています。さらに、近年はアルツハイマー型認知症との関連も指摘されているため注意が必要です。

編集部編集部

なぜ、お口の中に発生する歯周病がこのような全身の病気にも影響を与えてしまうのでしょうか?

佐藤 正敬先生佐藤先生

歯周病菌やその毒素、あるいは歯周病によって発生する炎症物質が歯ぐきの血管から全身に送られることが要因の1つです。例えば、糖尿病の場合は歯周病に関連した炎症物質が血糖値を下げるインスリンの働きを悪くしてしまうことが、糖尿病の発症や悪化の原因になっています。また、誤嚥性肺炎については口内の細菌が誤って気管から肺に入って感染することで引き起こされます。肺炎は死亡原因の5位に上がっており、とくに高齢者ほど死亡リスクが高くなるため注意が必要です。

歯周病対策は若いうちから! 予防&早期発見のためにできることは?

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編集部編集部

歯周病ケアはいつ、何歳ごろから始めるのがよいのでしょうか?

佐藤 正敬先生佐藤先生

歯周病もむし歯と同じく「毎日の歯磨き」がケアの基本なので、まずは子どもの頃から行っている基本的なセルフケアを継続していくことが重要です。一方で、20代後半から30代にかけては仕事やライフスタイルの変化などにより生活が不規則になったり、ケアがおろそかになったりすることも多くなります。そのタイミングで歯周病も徐々に発症、進行していくので、30歳前後あたりからはとくに歯周病を意識したケアを行っていただきたいと思います。

編集部編集部

歯周病を意識したケア(歯周病ケア)とは、具体的にどのようなことに取り組めばよいのでしょうか?

佐藤 正敬先生佐藤先生

例えば、歯磨きは「噛む面」や「歯面」にくわえ、「歯と歯ぐきの境目」を意識してブラッシングするのも対策の1つです。また、1日1回はデンタルフロスや歯間ブラシによる歯間清掃も必ず行いましょう。さらに、歯周病菌の温床となる歯石を、歯科医院で定期的に除去することも重要です。

編集部編集部

歯周病はセルフケアだけでなく、歯科医院で行うケアも重要になるのですね。

佐藤 正敬先生佐藤先生

はい。歯科医院での定期ケアには予防の強化にくわえ、歯周病の早期発見という側面もあります。歯周病は自覚症状に乏しく発見が遅れやすいため、定期的に歯科医院に通うことは病気の早期発見という意味において非常にメリットは大きいでしょう。したがって、3~6か月に1回は歯科の定期健診を受けることをおすすめします。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

佐藤 正敬先生佐藤先生

歯周病は歯を失う原因で最も多くの割合を占める病気ですが、痛みなどの症状がないため気づかずに放置されるケースが少なくありません。歯は失ってはじめてその大切さに気付くものです。ぜひ本記事をきっかけに、定期的に歯科医院に足を運んで歯周病の早期発見・早期治療に結びつけていただければと思います。

編集部まとめ

歯周病の最大のリスクは自分の歯を失うことですが、近年はそのほかにも、糖尿病や認知症、心筋梗塞など全身の病気にも影響を及ぼすことがわかっています。その歯周病は自覚症状がなく、自身で気づかないうちに手遅れになってしまうこともめずらしくないようです。日々のセルフケアの徹底にくわえ、歯医者さんにも定期的に通いながら早期発見に努めていきましょう。

医院情報

佐藤歯科クリニック

佐藤歯科クリニック
所在地 〒168-0072 東京都杉並区高井戸東 4-10-30-106
アクセス 京王井の頭線「高井戸」駅より徒歩7分
診療科目 歯科

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