親知らずがあっても前歯の部分矯正はできる? 後戻りしやすいって本当?
「親知らずがあるけど、部分矯正ってできるの?」このように疑問に感じている人もいらっしゃるかもしれませんね。親知らずがあっても部分矯正をおこなうことは可能ですが、場合によっては、せっかく綺麗になった歯並びが後戻りしてしまう可能性もあるそうです。しかし、歯並びを綺麗にしたい一方で、親知らずを抜歯するのは気が引けるという人もいらっしゃることでしょう。そこで今回は、親知らずを残したままおこなう前歯の部分矯正について、「はしもと歯科クリニック」の橋本先生にお話を伺いました。
監修歯科医師:
橋本 仁孝(はしもと歯科クリニック 院長)
松本歯科大学卒業。その後、矯正歯科医院で矯正治療の研鑽・臨床を重ねる。2010年、大阪府大阪市に「はしもと歯科クリニック」を開院。患者さんとのコミュニケーションを重視し、一人ひとりに合わせた治療方法を提案してクオリティの高い治療ができるよう心がけている。インビザライン認定医、ITIインプラントスペシャリスト認定医、MDIミニインプラント認定医。近畿東海矯正歯科学会会員。
部分矯正とは
編集部
まず、部分矯正について教えてください。
橋本先生
簡単に言えば、全体ではなく歯の一部分に対しておこなう矯正治療です。また、部分矯正にはいくつかの種類があり、歯の表側に装置を直接接着する方法や歯の裏側に付ける方法、透明なマウスピースであるアライナーを用いる方法、矯正用インプラントでおこなう方法などがあります。
編集部
部分矯正は、どのような場合に適応になるのですか?
橋本先生
前歯が1本だけ飛び出ていたり内側に引っ込んでいたりする場合や歯が重なっていたりねじれて曲がっていたりする場合、前歯の歯と歯の間がすいている場合、前歯の歯並びが気になっている場合などに適応となります。
編集部
部分矯正ができないケースもあるのでしょうか?
橋本先生
歯の凹凸が激しい場合や、前歯や八重歯を並べるためのスペースが足りない場合、噛み合わせに問題がある場合などは部分矯正ができないケースもあります。このような場合には、ほかの矯正治療を提案させていただきます。
ほかの矯正治療との違い
編集部
部分矯正の治療期間は、どのくらいかかるのでしょうか?
橋本先生
全体的な矯正治療が1~3年かかるのに対して、部分矯正は叢生(そうせい)が軽度であれば、半分以下の4~6カ月程度で治療を終えることも可能です。部分矯正は、軽度から中程度の凹凸などを治す場合に用いられるため、歯を動かす量が少なく、治療期間は比較的短く済む傾向にあります。ただし、綺麗になった歯並びを維持するには、治療後も「リテーナー」と呼ばれる保定装置をつけて歯並びを安定させる必要があります。そのため、矯正治療が終わった後に、治療期間後の保定期間があることも知っておいてください。なお、保定装置は部分矯正だけでなく、全ての矯正治療に必要です。
編集部
費用についてはいかがでしょうか? 保険適用ですか?
橋本先生
保険適用外となります。金額については、歯科医院や患者さんの歯の状態にもよりますが、全体的な矯正治療は70万円程度かかるところ、部分矯正は10~40万円程度の費用で治療が可能です。部分矯正は動かす歯が少なく治療期間も短いため、全体的な矯正と比較して金額が安く済むケースが多いでしょう。しかし、費用は叢生の程度や装置によっても異なるため、一概には言えません。患者さんの状態によって様々ですので、治療を始める前にカウンセリングでしっかりと確認しておきましょう。
編集部
治療の痛みはあるのでしょうか?
橋本先生
全ての歯を動かす矯正治療に比べて、痛みの程度も少ないでしょう。矯正技術の進歩により、以前と比較して装置による痛みはかなり少なくなりました。しかし、痛みに関しても、患者さんの痛みの感じ方や歯の状態によって異なります。
編集部
全体的な矯正だと慣れるのに時間がかかると聞いたことがありますが、部分矯正ではどうですか?
橋本先生
部分矯正では、慣れるまでの時間もそれほどかからないことが多い傾向にあります。全ての歯を動かす矯正治療では奥歯の噛み合わせが変わってしまうことがあるため、噛み合わせに慣れる必要があります。その一方で、部分矯正はその必要はほとんどありません。とくに前歯のみの部分矯正の場合には、噛み合わせに大きく影響することはないでしょう。
親知らずがある場合の部分矯正
編集部
ところで、親知らずを残したまま前歯の部分矯正をすることはできますか?
橋本先生
親知らずを残したままでも、前歯の部分矯正をおこなうことは可能です。とくに上の歯は問題ないことが多いでしょう。
編集部
親知らずがあるせいで後戻りしてしまうと聞きました。
橋本先生
たしかに、親知らずがほかの歯を圧迫し、後戻りしてしまうことことはあり得ます。また、矯正治療をしていない人でも、親知らずがない方が前歯は乱れにくいとされているのです。例えば、下の親知らずが横に生えるなどして後ろから前歯を圧迫してしまっている場合などは、部分矯正で歯を綺麗に並べても後戻りしてしまうことが考えられます。
編集部
では、できれば親知らずを抜いてから矯正治療をした方がいいということですか?
橋本先生
色々な考え方があると思いますが、後戻りを予防したいという場合には、抜いておいた方がいいでしょう。歯を抜く覚悟があるのであれば、部分矯正を開始する前に抜歯しておいた方がメリットは大きいですね。
編集部
どうしても抜歯したくないという場合には、どうしたらいいでしょうか?
橋本先生
抜歯をしないで部分矯正をする方法や矯正治療を開始してから抜歯を検討することが可能なケースもあるので、担当医と相談して決めていきましょう。また、矯正治療後に後戻りを予防するためリテーナーをしっかり付けることで対応できることもあります。ただ、実際には前歯だけの矯正で親知らずを抜く人はあまりいらっしゃいません。どうしても抜歯する勇気がないという場合や矯正治療を開始して歯並びの経過を見てから抜歯を検討したい場合は、抜歯の時期を含めて話し合ってみてはいかがでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
橋本先生
痛そうなイメージから、親知らずの抜歯をためらう人は少なくありません。しかし親知らずは、むし歯や歯周病に加えて、歯並びにも悪影響を及ぼす可能性があります。横向きに生えたり埋まったまま生えなかったりすることがあり、正常に生えることは少ないので、抜いてしまった方が得策なケースは多いのです。とくに、矯正治療をする場合は治療後の歯並びにも影響することが考えられるため、抜歯については十分に検討しましょう。どうしても抜歯したくないという場合には、部分矯正をしてから検討することもできますし、抜歯せずに部分矯正をした場合には、リテーナーで対応できるケースもあります。いずれの場合にも、担当医とよく相談し、メリット・デメリットを把握したうえで抜歯を検討しましょう。
編集部まとめ
親知らずは抜歯した方がいいとは言うものの、なかなか抜歯するのは気が引けますよね。しかし、せっかく矯正治療をおこなっても、親知らずがあることで後戻りしてしまうこともあるとのことだったので、抜歯のメリットやデメリットを踏まえて担当の歯科医師に相談してみましょう。
医院情報
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アクセス | JR京都線「東淀川駅」 徒歩4分 大阪メトロ御堂筋線「東三国駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 歯科、矯正歯科 |