部分矯正の意外な落とし穴！ 「噛み合わせが悪くなる可能性があるので慎重に」

福島先生

文字通り、部分的に歯の矯正をおこなう治療を部分矯正と言います。例えば、「前歯の歯並びが気になる」、「出っ歯を治したい」、「歯と歯の隙間を詰めたい」など、気になる部位だけを矯正することで調整します。また、むし歯治療などによって抜歯した場合、噛み合わせがズレてしまうことがあります。その際の調整にも、部分矯正が用いられます。

福島先生

全体矯正も部分矯正も、基本的にはブラケットやマウスピースを使うので、治療方法は同じです。ただし、部分矯正は矯正する範囲が狭いので、矯正期間は短くて済みますし、費用を抑えることができます。

福島先生

なんと言っても、全体矯正に比べて「期間が短い」、「費用が抑えられる」点でしょうか。また、すべての歯に矯正装置をつける必要がないので「ケアが簡単」なことも、部分矯正のメリットです。

福島先生

部分矯正は、あくまでも一部の歯並びを改善するための治療ですので、部分的な問題の改善のために選択する治療方法と捉えています。仮に、気になる部分が前歯だけであっても、その解決のためには本当は全顎的な矯正が必要であれば、部分矯正は適応外になると考えています。

福島先生

患者さんの歯並び・噛み合わせによって異なりますので、一概にどちらとも言えないと思います。繰り返しになりますが、部分矯正だと全顎的な歯並び・噛み合わせについては現状を維持することしかできません。一部の歯についての移動しかおこなわないため、改善できる範囲は限られてきます。また、患者さんの状態によって、改善できる点・改善できない点が違ってきますので、カウンセリング時に歯科医師に相談していただくのがいいと思います。

福島先生

はい。部分矯正と全体矯正のどちらを選択するか考える時に一番大事なのは、「気になる部分だけ治療すれば、ご自身のイメージしているゴールに到達できるかどうか」ということです。例えば、「歯並びを綺麗にしたい」というゴールがある場合、前歯だけを治療することで歯並びを美しくすることができるのか、あるいは全体を動かさなければ綺麗にならないのか、人によって状況は異なります。ただし、一般的には部分矯正が対応可能なケースは限られており、全体矯正をするのがほとんどです。その点を慎重に見極め、助言してくれる歯科医師を選ぶようにしましょう。

福島先生

部分的に歯を動かすので、全額的な噛み合わせとしての観点から、マイナスなことが起きないかを慎重に判断してほしいですね。

福島先生

例えば、「上前歯の歯並びを直したい」という場合、必ずしも気になる歯だけ調整すればいいわけではありません。上の前歯は下の前歯とセットになって噛み合わせを作っているので、下の前歯の位置に合わせて上の前歯を調整しなければならないのです。さらに、前歯の位置や角度が決まれば、それに合わせて下の奥歯の位置が決まり、そこから上の奥歯の位置が決まってきます。したがって、すべての歯は連動しているというわけです。しかし、こうした歯の関係性を無視して、気になる歯だけを直そうとすると、噛み合わせが悪くなってしまうことがあるかもしれません。

福島先生

咀嚼障害や頭痛、肩こり、首こり、背中の痛み、腰痛など、全身に様々な症状が発生するリスクがあります。また、顎関節症や自律神経失調症になってしまう可能性も考えられます。

福島先生

「部分矯正で本当に対処できるのか」、「部分矯正した時にリスクはないのか」など、メリットだけでなくデメリットも包み隠さずに話してくれて、その上で最適なプランを立ててくれる歯科医師を見つけることが大切です。カウンセリングでは症例写真を見せてもらいながら、自分と類似した症例を参考にするのもいいと思います。

福島先生

見た目だけが望み通りになったとしても、治療後に噛み合わせが悪くなってしまっては本末転倒です。どうしても気になる箇所にだけ注意がいきがちですが、矯正治療を考える時には、一部だけでなく全体を視野に入れながらプランニングすることが重要です。また、矯正治療は一生に何度もおこなうものではないので、一度で満足のいく仕上がりになるように、最善の注意を払って計画していただきたいと思います。