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「更年期障害の症状」が辛いときに避けた方がよい「食べ物や飲み物」はご存知ですか?

 公開日:2025/12/11
「更年期障害の症状」が辛いときに避けた方がよい「食べ物や飲み物」はご存知ですか?
40代後半から50代にかけて、ほてり、発汗、気分の落ち込み、不眠といった不調が現れやすくなります。こうした変化は、更年期にみられるホルモン分泌のゆらぎが関係しており、更年期障害と呼ばれます。

更年期障害は、日常の過ごし方によって症状の感じ方が変わることがあります。なかでも食事は、症状の増減に影響しうる要素の一つです。 この記事では、更年期と食事の関係、症状がつらいときに控えたい食べ物、とりいれたい食習慣、受診の目安や治療を解説します。
森 亘平

監修医師
森 亘平(医師)

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東北大学病院 産婦人科


2019年浜松医科大学医学部医学科卒


 [職歴]
2019年4月〜2021年3月 仙台厚生病院初期臨床研修医
2021年4月〜12月    石巻赤十字病院 産婦人科
2022年1月〜2023年6月  八戸市立中央市民病院 産婦人科
2023年7月〜2024年3月  東北大学病院 産婦人科
2024年4月〜2025年3月  宮城県立こども病院 産科
2025年4月〜      東北大学病院 産婦人科/東北大学大学院医学系研究科博士課程


 [資格]
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
厚生労働省指定 緊急避妊薬の処方にかかるオンライン診療研修 修了 
厚生労働省指定 オンライン診療研修 修了 
JCIMELS ベーシックコース インストラクター


 [所属学会]
・日本産科婦人科学会
・日本周産期・新生児学会
・日本超音波学会
・日本人類遺伝学会
・日本産科婦人科遺伝診療学会
・日本DOHaD学会
・日本医療安全学会

更年期障害と食事の関係

更年期障害と食事の関係

食事が更年期障害の症状に影響を与える可能性はありますか?

食事は、血糖値や体温の変動、血管の反応などを通じて体調に影響し、その結果として更年期症状に関わることがあります

更年期障害は、卵巣機能の低下に伴うホルモン分泌のゆらぎが背景にあり、自律神経の働きが不安定になりやすくなります。自律神経は体温調節や血糖の変化、睡眠のリズムなどに関わるため、血糖や体温が急に変動しやすい生活習慣は、不調を感じやすくなる可能性があります。

また、皮下脂肪が増えると体内の熱が逃げにくくなるため、ほてりが強まりやすいことがあります。乱れた食生活による肥満の進行は、更年期症状を悪化させる場合があります。

更年期障害の人が食べてはいけないものを教えてください

医学的に、完全に避けるべき食品が定められているわけではありません。ただし、症状がつらいときに刺激となる食べ物があります。

辛い料理は、唐辛子に含まれる成分であるカプサイシンが血管を広げ、ほてりや発汗を誘発することがあります。アルコールも血管を広げやすいため、のぼせ感が強まる場合があります。カフェインを多く含む飲み物は交感神経を刺激し、動悸や不眠につながることがあります。個人の体調に応じて、量を調整しましょう。

また、炭水化物に偏った食生活や甘いお菓子を多量にとることは、血糖値の急激な変動につながり、更年期障害の症状が悪化する一因になる場合があります。

このような食品は一律に禁止されるものではありませんが、自分の体調や症状の出方に合わせて量やタイミングを調整しましょう。

更年期障害の症状がつらいときに避けた方がよい飲み物はありますか?

熱すぎる飲み物は体温調節中枢を刺激し、ほてりや発汗を誘発する場合があります。適度に温かい飲み物は問題ありませんが、温度が高すぎるものは避けるとよいでしょう。

また、カフェインを含む飲み物は、夕方以降にとると睡眠の質が低下し、自律神経の乱れが持続しやすくなります。症状がつらいときは、飲むタイミングや量を調節しましょう。

アルコールは一時的に眠気を誘いますが、夜間の発汗や早朝覚醒につながりやすく、翌日の疲労感を強めることがあります。さらに、一時的に血管を広げることで、ほてりやのぼせ(ホットフラッシュ)が悪化することがあります。症状に応じて、飲酒量を見直しましょう。

更年期障害の人がとりいれたい食習慣

更年期障害の人がとりいれたい食習慣

更年期障害の人が食べた方がよい食べ物を教えてください

特定の食品だけで症状が劇的に変わるわけではありませんが、いくつかの栄養素は体調維持に役立ちます。

大豆製品はその代表で、豆腐、納豆、豆乳などに含まれるイソフラボンは、体内でエクオールに変換されると女性ホルモンに似た働きを示します。ただし、このエクオールをつくる腸内細菌を持つ方は日本人では半数程度とされ、効果の感じ方には個人差があります。

また、閉経前後には骨粗しょう症、脂質異常症などが増えやすく、これらを予防することは更年期障害の悪化を避けるうえで重要です。

骨粗しょう症を防ぐためにはカルシウムとビタミンDが欠かせません。カルシウムは牛乳やヨーグルトなどの乳製品、小魚(骨ごと食べるもの)に多く、青菜も補助的に役立ちます。ビタミンDは、脂の多い魚(鮭、ブリなど)、日光を浴びたきのこ類(干し椎茸、きくらげなど)などから摂取できます。

脂質の管理や血管の健康には、青魚に豊富なEPADHAが役立ちます。また、野菜や果物に多いビタミンCやEは抗酸化作用を持ち、閉経後に増えやすい酸化ストレスへの対応に役立ちます。

更年期障害中に取り入れたい食習慣はありますか?

規則的な食事のリズムを保つことは、血糖の急な変動を防ぎ、自律神経の負担を減らすうえで役立ちます。夜遅い時間の食事は脂肪がつきやすく、睡眠の質も下がりやすいため、夕食はできるだけ睡眠の2〜3時間前には済ませるのが理想的です。

また、ゆっくり噛んで食べることは、適量で満腹感を得やすく、血糖値の安定にもつながります。

さらに、魚、野菜、豆類、海藻などを中心にした献立にすると、脂質に偏りにくく、将来の合併症を防ぐうえでも有用です。甘いものやスナック類が欲しくなるときには、一部をナッツ、ヨーグルト、果物などに置き換えると、空腹を和らげながら栄養も補えます。

更年期障害の気分の落ち込みやホットフラッシュを食習慣で改善することはできますか?

気分の落ち込みに対しては、血糖値が上がりにくい食べ方が、気分の安定に役立つ可能性があります。血糖値の急な変動は交感神経を刺激して不安、イライラの原因となるため、野菜を先に食べる、規則正しい食事リズムを保つなどの工夫が役立ちます。

またプロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌など)や、腸内細菌の働きを助けるプレバイオティクス(食物繊維の一部)が更年期に関連する症状へ有用である可能性も指摘されています。

ホットフラッシュについては、大豆イソフラボンが頻度と強さを有意に減らしたとする研究や、エクオール補充で症状が軽減した日本人女性の報告があります。

ただし、こうすれば必ず症状が改善する、と確立された食習慣があるわけではないため、必要に応じた治療と組み合わせながら、自分に合う範囲で試すのがよいでしょう。

参照: 『Probiotics and prebiotics: Any role in menopause-related diseases?』(Curr Nutr Rep) 『Extracted or synthesized soybean isoflavones reduce menopausal hot flash frequency and severity: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials』(Menopause) 『New equol supplement for relieving menopausal symptoms: randomized, placebo-controlled trial of Japanese women』(Menopause)

更年期障害のセルフケアと病院での治療

更年期障害のセルフケアと病院での治療

更年期障害の人に推奨される生活習慣はありますか?

食事のほかに運動、睡眠、リラックスする時間を意識することが症状の緩和に役立つことがあります。

運動は、ウォーキングや軽いジョギング、水泳などを中心に、スクワットやダンベル体操など筋肉に刺激を与える動きを少し取り入れると効果的です。無理なく続けられる強さで、こまめに身体を動かすようにしましょう。

また、十分な睡眠をとるための環境づくりや、気持ちを落ち着ける時間をとることも有用です。入浴で温まる、好みの香りを使う、自然の中を散歩する、温かい飲み物を楽しむなど、自分に合った習慣を持つと、心身の緊張がほぐれやすくなります。

更年期障害が辛いときの受診の目安を教えてください

日常生活に支障が出るほどのほてり、発汗、気分の落ち込み、強い不安、動悸、睡眠障害などが続く場合は、婦人科またはかかりつけの内科で相談しましょう。

これらの症状は、更年期障害以外にも、甲状腺疾患、貧血、そのほかの内科疾患、精神疾患などでもみられることがあります。受診後は必要に応じて、適切な診療科と連携して検査や治療が進められます。

病院では更年期障害をどのように治療しますか?

病院で行われる更年期障害の治療は、非薬物療法と薬物療法に大きく分けられます。

非薬物療法としては、食事、睡眠、運動といった生活習慣に関する指導が中心です。気分の落ち込みや不安が強い場合には、必要に応じてカウンセリングや認知行動療法などの心理療法が選択されることもあります。

薬物療法では、ホルモン補充療法(HRT)がよく用いられます。不足しているエストロゲンを補うことで、ほてりや発汗、不眠などの症状を和らげることが期待されます。内服薬、貼り薬、塗り薬といったさまざまな形があり、現在の体調や病歴、子宮の有無などを考慮して選択されます。

また、漢方薬が処方されることもあり、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸などが症状に合わせて用いられます。さらに、気分の落ち込みや不安が強いときには、抗うつ薬や抗不安薬が用いられることもあります。

編集部まとめ

編集部まとめ

更年期障害は、女性なら誰にでも起こりうる身近な変化です。 日々の生活の土台となる食事は、症状の感じ方に影響することがあります。 とはいえ、厳しい制限が必要というわけではありません。そのときの体調に合わせて、負担の少ない食生活を選びましょう。

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