「緑内障」の人が「コーヒー」を飲むとどうなるの?避けた方がよい飲み物も解説!
公開日:2025/11/06

緑内障(りょくないしょう)は、眼球内の視神経が障害されて視野(見える範囲)が徐々に欠けていく進行性の目の病気です。日本では約20人に1人が緑内障患者さんであり、中途失明原因の第1位を占める身近で重大な病気です。本記事では緑内障に関することだけでなく、カフェインなど身近な食材が与える影響を解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
目次 -INDEX-
緑内障の原因と悪化させる要因
緑内障とはどのような病気ですか?
緑内障は目と脳をつなぐ視神経に障害が起こり、その部分の視野が欠けたり視力が低下したりする疾患です。緑内障には眼球内の圧力である眼圧の上昇が関与し、長期間かけて視神経が押しつぶされるようにダメージを受けることで進行します。
ただし、日本人に多い正常眼圧緑内障のように、眼圧が正常範囲でも視神経が障害される緑内障もあります。また、一度失われた視野はもとに戻らないため、緑内障は早期発見と進行抑制の治療が重要となる慢性疾患です。
なぜ緑内障になるのですか?
緑内障の直接の原因は完全には解明されていませんが、大きく分けて特定の原因なく発症する原発性と、ほかの病気や薬剤が原因で発症する続発性があります。
原発性の場合、眼球内を循環する液体(房水)の排出口である隅角の形状により、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障に分類されます。開放隅角緑内障では加齢や遺伝的素因などで排出機能が徐々に低下し、眼圧がゆるやかに上がって視神経が傷害されます。
一方、閉塞隅角緑内障は隅角が狭く生まれつき詰まりやすいため、急激に眼圧が上昇する急性緑内障発作を起こすことがあります。そのほかにも、ステロイド薬の長期使用や目の外傷、糖尿病などが原因で起こる続発緑内障もあります。つまり、緑内障になる背景には高い眼圧と視神経の障害されやすさが関与し、遺伝や年齢、人種などさまざまな要因が影響しています。
緑内障を悪化させる要因を教えてください
緑内障が悪化する最大の要因は、視神経にかかる眼圧が上昇することです。適切な治療を受けず高い眼圧が続くと視神経へのダメージが進行し、失明リスクが高まります。また、治療中断や点眼薬の不遵守も眼圧コントロール不良に直結し、病気を進行させる大きな要因です。生活面では、肉体的、精神的な過度のストレスや疲労、長時間のうつむき姿勢やいきみは眼圧を上げる可能性があります。
さらに、喫煙は目の血流を悪化させ視神経の障害されやすさが増す可能性があるため、緑内障では禁煙がすすめられます。高血圧や糖尿病など全身の健康状態も視神経の状態に影響しうるため、これらのコントロール不足も間接的に悪化因子となりえます。
このように、眼圧を上げる行動や治療の怠り、そして視神経に負担をかける生活習慣は緑内障を悪化させる可能性があるため避けることが望ましいでしょう。
緑内障とコーヒーの関係
緑内障の人がコーヒーを飲むとどうなりますか?
一般的に、コーヒーを1〜3杯程度飲むくらいでは緑内障を悪化させる明確な証拠はありません。ただし、カフェインには一時的に眼圧を上げる可能性があり、飲んだ後30〜90分ほどの間に数mmHg上昇することが報告されています。多くの場合この上昇は一過性で問題になりません。
また、ある研究では、1日5杯以上の大量摂取で開放隅角緑内障のリスクが高まるとの報告もあります。したがって、すでに緑内障と診断されている方や、家族に緑内障の方がいる場合は、コーヒーを飲みすぎないようにするとよいでしょう。
参照:
『Caffeine consumption and the risk of primary open-angle glaucoma: a prospective cohort study』(Invest Ophthalmol Vis Sci)
『Effect of coffee consumption on intraocular pressure』(Ann Pharmacother)
コーヒーを飲むと眼圧が下がるというのは本当ですか?
コーヒーを飲むと眼圧が下がるという明確な根拠はありません。むしろ、カフェインには一時的に眼圧を上昇させる作用があると報告されています。一般的に、コーヒー摂取後30〜90分の間に眼圧が数mmHg上がるケースが報告されていますが、この変化は短時間でおさまり、長期的な影響はほとんどないと考えられています。
一方で、遺伝的に眼圧が高くなりやすい体質の方では、カフェイン摂取によって眼圧が上がりやすい傾向も報告されています。つまり、「コーヒーで眼圧が下がる」というのは誤解であり、むしろ一時的な上昇に注意が必要です。緑内障や高眼圧症の方は、カフェインの取りすぎを避けることが大切です。
参照:『Effect of coffee consumption on intraocular pressure』(Ann Pharmacother)
緑内障の人はコーヒーを飲んだ方がよいのですか?
現時点では、緑内障の方がコーヒーを積極的に飲んだ方がよいという医学的根拠はありません。 コーヒーには抗酸化作用や血流改善などの効果が知られていますが、緑内障に関しては「飲んだ方がよい」と断言できる研究結果は出ていません。一方で、カフェインには一時的に眼圧を上げる作用があるため、飲みすぎは避けた方が無難でしょう。
一般的には、1日1〜3杯程度の適量であれば問題ないと考えられています。眼圧が上がりやすいタイプの方は、カフェインレスコーヒー(デカフェ)を選ぶのもよいでしょう。重要なのは、コーヒーの摂取量よりも日常の眼圧管理と定期的な眼科検査を欠かさないことです。コーヒーを楽しむ場合も、眼科医と相談しながらご自身の状態に合った量を心がけましょう。
緑内障の人が避けた方がよい飲み物や食べ物と気を付けたい生活習慣
緑内障の人が避けた方がよい飲み物を教えてください
緑内障患者さんでも絶対に飲んではいけない飲み物はありません。しかし、いくつか注意したいポイントがあります。
まずカフェインを多く含む飲料の過剰摂取は避けましょう。コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどを頻繁に飲み続けると、わずかとはいえ眼圧上昇につながる可能性があります。特に玉露茶やエナジードリンクはコーヒー以上に高濃度のカフェインを含む場合があるため要注意です。
次にアルコール飲料です。適量の酒であれば眼圧を一時的に下げ、視神経の血流を改善する場合もあります。しかし、長期にわたり飲酒量が多い状態が続くと、肝機能低下や生活習慣病の誘発を通じて緑内障発症や進行リスクを高める可能性があります。
このように、緑内障だから特別に禁止すべき飲み物はありませんが、カフェインとアルコールは適量を守ることが大切です。
緑内障の人が食べない方がよい食べ物はありますか?
緑内障の方が「この食べ物は食べない方がよい」というものはありません。しかし、糖尿病が緑内障の原因になることなどを考えると、偏った食事や過度な栄養素の摂取は避けるべきです。
まず糖分の過剰摂取には注意しましょう。砂糖は血糖値を上昇させ、糖尿病リスクを高めます。糖尿病になると網膜症や血管障害を通じて、緑内障を含む目の病気を併発しやすくなるため、結果的に視力に悪影響を及ぼします。
次に塩分や脂肪分のとりすぎも要注意です。これらの過剰摂取は、高血圧や脂質異常症の原因となり、動脈硬化によって目の細かい血管に負担をかける可能性があります。
緑内障だからといって特定の食べ物を極端に避ける必要はありませんが、高糖質、高塩分、高脂肪の食生活を改め、栄養バランスのよい食事を心がけることが大切です。
緑内障の人が気を付けるべき生活習慣を教えてください
緑内障と診断されたからといって、過度に日常生活を制限する必要はありません。ただし、病気の進行を抑えるため、次のような生活習慣に気を付けましょう。
- 規則正しい生活習慣を心がける
- 適度な運動習慣を心がける
- 喫煙・飲酒を控える
- 高糖質、高塩分、高脂肪の食生活を改め、栄養バランスのよい食事をとる
- 薬は用法用量どおり使い、定期受診を欠かさない
編集部まとめ
緑内障は決して珍しい病気ではなく、誰にでも起こりうる目の疾患ですが、正しい知識と適切な治療・生活習慣によってその進行を抑えることができる病気です。コーヒーを含む日常の嗜好品も、過度でなければ緑内障に悪影響を及ぼすものではありません。眼科医の指導のもと点眼治療を続けながら、バランスのよい食事や適度な運動、十分な休養といった全身の健康管理を心がけてください。
参考文献




