「緑内障の原因」はご存知ですか?発症しやすい人の特徴も解説!【医師監修】
公開日:2025/08/17

緑内障(りょくないしょう)は、目の奥にある視神経が障害されることで視野が狭くなり、進行すると視力を失う恐れのある病気です。日本では40歳以上の約20人に1人が緑内障で、中途失明原因の第1位にもなっています。しかし、緑内障自体で失明に至るケースは適切な治療でかなり抑えられており、早期に発見し治療を受ければ生涯にわたって視野・視力を維持できます。本記事では、緑内障の原因とリスク、その予防法までを解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
目次 -INDEX-
緑内障の基礎知識
緑内障はどのような病気ですか?
緑内障は、簡単にいえば視神経の病気です。目で受け取った映像を脳に伝える視神経が何らかの原因でダメージを受け、視野(見える範囲)が部分的に欠けたり狭くなったりする病気です。多くの場合、眼球内の圧力(眼圧)によって視神経が徐々に障害されることで発症します。日本では特に眼圧が正常範囲内でも発症する正常眼圧緑内障の割合が高いことが知られています。どのタイプの緑内障でも進行はゆっくりで、初期には痛みなどの症状がないため、自分では気付きにくい特徴があります。
緑内障の発症確率や患者数を教えてください
日本では緑内障は決して珍しい病気ではありません。実際、40歳以上の約5%(20人に1人)、60歳以上では10%以上(10人に1人)が緑内障に罹患していると報告されています。2016年の推計では、日本全国の緑内障患者数は約465万人に上るともされています。患者数が多いため、日本人の視覚障害(失明)の原因疾患では緑内障が第1位です。ただし、緑内障は初期には自覚症状がなく、患者さんの約9割は未発見・未治療ともいわれます。裏を返せば、定期検診で早期に発見し治療を開始すれば、失明に至らずに済む可能性が高いといえます。
緑内障はどのようなメカニズムで発症するのでしょうか?
緑内障の主な発症メカニズムは、目の中の液体(房水)の流れが滞って眼圧が上昇し、その圧力で視神経が圧迫・障害されることです。房水は毛様体で産生され瞳孔を通って前房に流れ、目の隅にある隅角から線維柱帯を経て排出されます。この経路が何らかの原因で詰まったり狭くなったりすると房水がうまく出ず、眼球内圧が高まって視神経を障害してしまいます。緑内障には、排出路が徐々に目詰まりして慢性的に眼圧が上がるタイプ(開放隅角緑内障)と、隅角が急にふさがって眼圧が急上昇するタイプ(閉塞隅角緑内障)があります。
緑内障の原因とリスク要因
緑内障の原因を教えてください
緑内障には明確な原因というものはありません。多くの場合、加齢に伴う目の構造変化や遺伝的な素因が背景にあり、そこに眼圧の上昇などが加わって発症すると考えられています。緑内障には、原因疾患がはっきりとしない原発緑内障と、ほかの病気や外傷・薬剤などが原因で起こる続発緑内障に大別されます。原発緑内障の多くは眼圧上昇以外に原因が特定できません。一方、続発緑内障では糖尿病の進行による新生血管発生、ステロイド薬の長期使用、外傷や重度のぶどう膜炎などの原因がある場合に診断されます。
緑内障のリスク要因はありますか?
はい、緑内障の発症リスクを高める要因はいくつも知られています。一つ一つは直接の原因ではなく、複数の要因が重なることで発症につながると考えられます。主なリスク要因として次のようなものがあります。これらのリスク要因が重なると発症する方が増えますが、特にリスク要因がはっきりしていなくても緑内障になる方はいらっしゃいます。
年齢
加齢に伴いリスクが上昇します。特に40歳以上から有病率が高くなり、年齢とともに高まります。
家族歴
両親や祖父母、兄弟姉妹など近親者に緑内障の方がいる場合、発症リスクが高まります。
眼圧が高い
眼圧が高い方は、緑内障へ進行するリスクがあります。
強度近視
強い近視(-6D以上)は眼球が変形し、視神経が引き伸ばされて弱くなるため、緑内障の一因になります。
そのほかの病気
糖尿病や高血圧など全身の病気も緑内障のリスク因子となりえます。
緑内障になりやすい人の特徴を教えてください
先に挙げたリスク要因を複数持つ方は緑内障になりやすいといえます。特に40歳以上で家族に患者さんがいる方や強度近視の方など、複数のリスク要因が重なっている場合は注意が必要です。症状がなくても早めに眼科で検査を受けておきましょう。特に、40歳以上では緑内障のリスクが上がるため、緑内障のための眼科検診が推奨されています。
緑内障のリスクを高める生活習慣と予防法
緑内障になる可能性が高まる生活習慣はありますか?
はい、日々の生活習慣のなかにも緑内障リスクに関わると考えられるものがあります。以下のような習慣は眼圧の上昇や視神経への血流悪化につながり、緑内障の発症・進行リスクを高める可能性があります。
喫煙
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素の作用で血流が悪くなり、視神経を障害する恐れがあります。喫煙そのものが直接の原因とはいえませんが、緑内障を悪化させる要因になりうるため注意が必要です。
逆立ちやヨガの姿勢
頭を心臓よりも下にする姿勢は眼圧を上昇させることが知られています。そのため、長時間の逆立ちやヨガの特定の姿勢は眼圧を上げる恐れがあります。
運動不足
有酸素運動は血流を促し、眼圧を安定させます。息を止めて力む激しい運動は眼圧を上げるため、ウォーキングなど適度な運動習慣を心がけましょう。
これら生活習慣に注意をすることで、緑内障になる確率を少しでも減らしましょう。
喫煙や飲酒は緑内障のリスクを高めますか?
喫煙は緑内障にとって明らかに悪影響です。タバコの有害物質が血流を阻害して、視神経を障害することで緑内障が進行する恐れがあります。また、喫煙はさまざまな疾患リスクとなります。それが間接的に緑内障を引き起こす可能性もあります。飲酒については、適量であれば眼圧に大きな影響を与えないとされていますが、長年の多量飲酒は高血圧や糖尿病を招き、結果的に緑内障リスクを高める恐れがあります。タバコは禁煙を、飲酒も適量を飲むように心がけましょう。
緑内障を予防するためにできることを教えてください
確実に緑内障の発症を防ぐ方法は残念ながらありません。しかし、リスクを減らし早期発見につなげるために次のような対策が有効です。これらの対策を心がけることで、緑内障になりにくい目になり、たとえ緑内障になったとしても、進行を止めるために有効です。
定期的な眼科検診
40歳を過ぎたら年に一度は眼科で検査を受けましょう。自覚症状がなくても、検診で視神経や眼圧の異常を早期に見つけることで将来の視野障害を防ぐことができます。
生活習慣・持病の管理
喫煙・過度の飲酒・運動不足・睡眠不足などの習慣を改善し、糖尿病や高血圧などの持病がある方は適切に治療しましょう。全身の健康を保つことで目の血流も維持され、緑内障の進行を遅らせる助けになります。
目を守る
長時間の近距離作業ではこまめに休憩をとり、暗い場所での読書や画面作業は避けましょう。スポーツや作業時には保護メガネを着用し、目の外傷を防ぐことも大切です。
編集部まとめ
緑内障は決して珍しくない病気であり、特に中高年の方は誰でも発症しうるものです。しかし早期に発見し適切に治療を行えば、多くの場合で視野障害の進行を最小限に抑えることができます。自覚症状がないからと油断せず、40歳を超えたら定期的に眼科検診を受けて視神経や眼圧のチェックを欠かさないようにしましょう。大切な視力を守るため、緑内障のリスク要因がある方はもちろん、そうでない方も予防のつもりで目の健康診断を受けましょう。




