白内障の発症にはさまざまな原因が挙げられます。
その一つとして老化現象が挙げられ、白内障は私たちにとって身近な病気 です。初期の症状は自覚しにくく、視力低下と誤解して放置してしまうケースもあります。
国内における白内障の失明率は低いですが、放置してしまうことでさまざまな問題も発生します。
目に違和感を覚えた際は眼科を受診するのが望ましいでしょう。この記事では、白内障の目薬の種類や効果、手術について解説していきます。
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
白内障の原因や症状
白内障の原因を教えてください。
白内障には次のような原因が挙げられます。
加齢
喫煙
外傷
遺伝
水晶体への紫外線や放射能
ステロイド薬
白内障は加齢と遺伝によるものが主な原因です。白内障は加齢に伴って自覚症状を感じることが多く、有病率は70歳代では84〜97%、80歳以上では100%となっています。加齢に加えて、その他の影響があることも白内障の発症や進行を早めてしまう原因の一つです。喫煙をしている方は、1日に20本以上の喫煙で2〜3倍のリスクが高まります。たばこから発生する窒素酸化物が、水晶体の透明度を保つために必要なタンパク質であるクリスタリンに悪い影響を与えていると考えられています。紫外線は結膜や角膜、水晶体で吸収され、屋外での活動が多い方は白内障のリスクが高まると報告されており注意が必要です。日頃から
帽子の着用やサングラスなどの目の保護対策 をするように心がけましょう。
白内障になるとどのような症状が出ますか?
白内障には次のような症状が挙げられます。
視力の低下
目がかすむ
光が眩しい
手元は見えるが遠くがぼやける
物が二重に見える
白内障は水晶体が濁ってしまうことで発症しますが、濁っている位置や程度によって見え方が異なることが特徴です。視力低下では、視力が0.1まで下がると日常生活に支障がでてしまうといわれており、進行するとかすみも強くなり徐々に物が見えにくくなります。水晶体の中心部に濁りがある場合は、特に眩しさが強くなり、夜間の運転をする方は対向車のヘッドライトに注意が必要です。また、手元は見えやすく、遠くがぼやけてしまうのは水晶体が厚みを増していることから近眼になるためです。老眼だったのに近くが見えやすくなるなどの症状があれば、眼科の受診をするのが望ましいでしょう。そして、物を見ると二重に見えるなどの症状もありますが、水晶体の濁りによっては物が三重に見えることもあります。複視になっているかどうかは、片方の目を隠して物を見てみるとよくわかるため、定期的にセルフチェックすることも大切です。
白内障を放置するとどうなりますか?
白内障を放置すると次のような影響があります。
失明の原因になる
ほかの眼の病気の原因になる
適切な人工レンズを選べない
白内障の進行はゆっくりではありますが、放置すると視力が徐々に低下し、最終的に失明の原因になることがあります。しかし、多くの方は症状の途中で眼科を受診し、白内障の手術を行うため失明に至ることはありません。また、放置してしまうことで
ぶどう膜炎や緑内障 などのほかの眼の病気を引き起こす原因にもなります。そして、白内障の手術には取り除いた水晶体の代わりに人工レンズを入れるのですが、このレンズは患者さんの眼の形や状態によって決まるとされています。人工レンズを選ぶには目に光を当て、目の奥にある網膜との距離を測定する検査が必要です。しかし、白内障が進行していると検査の光が網膜に届かない場合があります。網膜に光が届かないと、適切な人工レンズを選ぶことができません。このように白内障の症状を放置してしまうことで、さまざまな問題が起きてしまいます。
白内障を予防する方法はありますか?
白内障を予防するには次のような方法が挙げられます。
紫外線から目を守る
食生活の改善
適度に運動する
禁煙
紫外線は白内障の原因になりうることが知られています。晴れの日だけでなく、曇りの日であっても紫外線は出ています。紫外線から目を守るためにも、紫外線カット機能が付いたサングラス、つばが長い帽子などを着用するように心がけましょう。また、白内障も食生活が影響する病気の一つです。白内障は血液中の糖が多かったり、体内での酸化反応が多かったりすることで白内障になりやすいと考えられています。これらのストレスを減らすために、
炭酸飲料やスナック菓子 などを控えることが重要です。体内での酸化に対しては
抗酸化作用 のあるビタミンCやビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチンなどの栄養素を取ることがよいとされています。過度な糖質制限も危険なため、現在の栄養バランスを定期的に見直すことも重要です。その他にも喫煙などが原因として挙げられます。白内障になりにくくするためにもタバコは吸わないことが理想です。タバコを減らすことで病気になりにくい身体に近づくことができます。禁煙が難しい方は、禁煙外来がある医療機関を受診してみるのもよいでしょう。
白内障の点眼治療で使用される目薬の種類と効果
白内障の点眼治療で使う目薬の効果を教えてください。
白内障の点眼薬は、進行を緩やかにする 目的で処方されます。点眼薬を用いることで、日常生活に問題のない状態を維持し、できるだけ手術を遅らせたい方に処方されることがあります。手術を遅らせることで、手術の適応やタイミングを検討していくことができます。
白内障の予防や進行を遅らせるのに有効な目薬の種類を教えてください。
白内障の予防や進行を遅らせるために、主にピレノキシン懸濁性点眼液 、タチオン点眼液 などが処方されます。ピレノキシン懸濁性点眼液とは、水晶体の濁りの原因となるタンパク質を蓄積しにくくする点眼液です。白内障を引き起こす物質と水晶体にあるタンパク質との結合を防ぐ効果があるといわれています。タチオン点眼液は、水晶体の透明度を維持させ、抑制する効果がある点眼液です。白内障の進行とともにグルタチオンが減少してしまうため、タチオン点眼液を使用することで過酸化反応を抑制する効果があります。専門性の高い医師が白内障の状態に合わせて使用回数などを決めるため指示に従うようにしましょう。
白内障の予防や進行を遅らせるのに有効な市販の目薬はありますか?
白内障に関する薬は、医師の指示のもと処方されるもの であり、ドラッグストアなどで購入できるものではありません。自己判断での薬剤の使用は進行を見逃してしまう恐れがあるため、医師の判断のもとで使用するようにしましょう。不安や疑問な点があれば、医療機関で質問をするのが望ましいでしょう。
白内障の手術や合併症
白内障の手術をした方がよいタイミングを教えてください。
白内障手術のタイミングは、本人が日常生活で不便を感じるようになったときが手術を受ける時期 が一つの目安といわれています。白内障は進行が緩やかなため、早急に手術する必要がない場合がほとんどです。タイミングは一人ひとりの生活パターンによって異なりますが、細かいものを見ることが多い方や車を運転する方は早めに手術を受けることを推奨します。検査をしたときは視力結果がよくても、屋外では眩しくて見づらいとか、物が二重になってしまい生活に支障があるということもあります。たとえ視力がよくても何らかの不自由を感じていれば、眼科で相談するのが望ましいでしょう。
白内障の手術方法を教えてください。
白内障の手術は主に超音波乳化吸引法 が行われます。超音波乳化吸引法とは、2〜3mmほどの切開から濁った部分の水晶体を砕いて吸引し、人工の水晶体レンズを埋め込む手術方法です。手術時間は10〜30分ほどで終了します。しかし、症状が進行してからの手術の場合、水晶体が固くなりすぎてしまい手術時間が長くなることがあります。手術中は局所麻酔や点眼麻酔で手術が行われるため痛みはほとんどありません。
手術後に起こりうる合併症を教えてください。
手術後に起こりうる合併症には、次のような症状が挙げられます。
細菌性眼内炎とは、菌が目のなかで増殖して眼の組織を溶かしてしまう合併症です。頻度としては、
2,000〜5,000人に1人 と推計されています。術後は問題なく鮮明に見えていても、術後3〜7日頃に急に見えにくくなるといわれています。強い痛みや充血がある場合は、早急に手術を受けた医療機関を受診しましょう。後発白内障とは、白内障手術の後に水晶体嚢の後ろの部分が白く濁り、視機能が低下した状態のことです。後発白内障の場合は、レーザーを使用して濁りを取ることができ、視力は回復することがほとんどです。また、術後にものが青く見える(青視症)ことがあります。術後
1〜2週間 によく起こりますが、害はなく、時間とともに自然に改善されることが一般的です。
編集部まとめ
人間が得る情報の8割 は視覚からといわれており、白内障の症状が続くことで生活の質は低下していくでしょう。
白内障の手術は近年進歩しており、適切な治療で視力の改善が期待できます。視力の回復は、日常生活の質の向上にも直結します。
症状や目に違和感を覚えた場合は、眼科へ受診しましょう。
栗原 大智 医師
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。