「ぶどう膜炎の初期症状」はご存知ですか？原因や検査法・治療法も解説！【医師監修】

ぶどう膜炎は、虹彩、毛様体、脈絡膜から構成される”ぶどう膜”やその周辺に炎症が起こる病気で、目の構造や機能に大きく関わる重要な組織が影響を受けます。

虹彩は光の量を調整し、毛様体はピント合わせや房水の産生に関与し、脈絡膜は血管が豊富で網膜などへ栄養を供給しています。
これらの部位に炎症が生じると、視力の低下や目の痛み、まぶしさなどの症状が現れます。炎症が虹彩に起こると前部ぶどう膜炎、脈絡膜に起こると後部ぶどう膜炎と呼ばれ、病態により分類されます。

重症化すると視力障害や失明に至ることもあるため、早期の受診と適切な治療が重要です。ぶどう膜炎は患者さんごとに原因や経過が異なるため、専門医による診断と継続的な管理が求められます。

ぶどう膜炎を引き起こす代表的な疾患には、ベーチェット病、サルコイドーシス、原田病の三つがあります。

ベーチェット病は再発性のぶどう膜炎を特徴とし、視力低下を招く可能性が高いため、難治性疾患として特定疾患に指定されています。

サルコイドーシスは全身性の炎症性疾患で、肺やリンパ節、皮膚などの病変とともに目にぶどう膜炎を生じることがあります。

原田病は、頭痛や耳鳴りなどの全身症状に加え、ぶどう膜炎がみられる自己免疫疾患です。

これらの病気は、いずれも進行や再発を防ぐために、ステロイドや免疫抑制剤による治療が必要とされ、定期的な眼科受診が重要です。ぶどう膜炎を発症した患者さんには、目の治療だけでなく全身の評価と管理が求められます。

ぶどう膜炎は視力に深刻な影響を及ぼす合併症を引き起こすことがあり、早期の対応が重要です。以下は主な合併症です。

●白内障
ぶどう膜炎の炎症や治療で使われるステロイド薬の影響により、水晶体が濁って視力が低下します。進行すると手術が必要になることがあります。

●緑内障
炎症や薬剤により眼圧が上昇して視神経が障害され、視野が狭くなります。自覚症状が乏しいこともあり、定期的な眼圧検査が重要です。

●虹彩後癒着
虹彩と水晶体が癒着すると眼内の観察が困難になり、緑内障の原因にもなるため、散瞳薬による対処が行われます。

●黄斑浮腫、黄斑変性
網膜の中心部に浮腫が起こると視力が低下し、長期間続くと回復不能な障害が残ることもあります。

●網膜表面の線維膜形成
炎症の治癒過程で膜が形成され、視力低下や物の歪みを生じます。場合によっては手術が必要です。

ぶどう膜炎の初期症状は、炎症の起きる部位や程度によって異なりますが、代表的な症状として以下のようなものが見られます。

●目の痛み
目の奥がズキズキと痛むような鈍い痛みを感じることがあります。炎症が強い場合には痛みも増します。

●目の充血
白目が赤くなる充血が見られ、結膜炎とは異なり目ヤニが出にくいのが特徴です。

●視力低下
視界がかすんだり、霧がかかったように見えることがあり、急激に視力が落ちることもあります。

●まぶしさ（羞明）
光に対して過敏になり、日常の光でも強くまぶしく感じたり、不快感や痛みを覚えることがあります。

●飛蚊症
視界に黒い点や糸のような影が浮かぶように見える症状で、硝子体の濁りが原因となることがあります。

これらの症状が片眼だけに現れることもあれば、両眼に及ぶ場合もあります。初期段階での適切な対応が重要です。

ぶどう膜炎の原因は多岐にわたり、主に”感染によるもの”と”免疫異常や全身疾患に伴うもの”に分類されます。
感染性のものには、細菌やウイルス（単純ヘルペス、帯状疱疹ウイルスなど）、真菌、寄生虫、結核、梅毒などが含まれます。
非感染性の原因としては、原田病、ベーチェット病、サルコイドーシスなどの自己免疫疾患が挙げられ、関節リウマチや炎症性腸疾患、TINU症候群などの全身性疾患を背景とすることもあります。また、薬剤の副作用や目の外傷がきっかけとなる場合や、検査を行っても原因が特定できない特発性のケースもあります。

原因は一つではなく複合的なこともあり、患者さん一人ひとりに応じた丁寧な診断が求められます。

ぶどう膜炎の初期症状が現れた場合には、速やかに眼科を受診することが重要です。
目の痛みや充血、視界のかすみ、飛蚊症、まぶしさなどが見られた際には、軽視せず早めの対応が求められます。
ぶどう膜炎は進行すると、緑内障や白内障、網膜剥離などの合併症を引き起こすことがあり、視力に重大な影響を及ぼす可能性があります。早期に診断と治療を開始することで、炎症のコントロールや合併症の予防につながります。

また、ぶどう膜炎は一時的に症状が落ち着くこともありますが、再発のリスクがあるため、症状が治まった後も定期的に通院し、医師の指示に従うことが大切です。特に自己免疫疾患など原因疾患を持つ患者さんでは、体調不良などをきっかけに悪化することもあるため、日々の体調管理にも注意が必要です。

ぶどう膜炎の診断には、眼科的な検査と全身的な検査の両方が必要です。
まず、視力検査や眼圧検査などの眼科検査に加え、眼底の血流を調べる蛍光眼底造影、網膜の断層を確認するOCT（光干渉断層撮影）などが行われます。
また、全身疾患との関連を調べるために血液検査、胸部X線検査、ツベルクリン反応なども実施されます。必要に応じて目の組織を採取することや、診断や治療目的で手術が検討される場合もあります。さらに、詳細な問診もとても重要で、目以外の症状、過去の病歴、生活習慣、ペットの飼育歴、海外渡航歴などが、原因を特定する手がかりとなることがあります。

ぶどう膜炎は眼科だけで完結しない複合的な疾患であり、丁寧な診断プロセスが求められます。

ぶどう膜炎の治療は、原因や炎症の部位によって異なります。
感染性の場合は、原因となる細菌やウイルスに応じた抗菌薬や抗ウイルス薬を使用します。一方、免疫異常による非感染性のぶどう膜炎では、ステロイド薬を中心とした抗炎症治療が行われます。

軽度であれば点眼薬が用いられますが、炎症が強い場合にはステロイドの内服や注射が必要になることもあります。治療中は副作用の管理が重要で、定期的な検査が欠かせません。ステロイドで十分な効果が得られない難治性の場合には、免疫抑制剤や、生物学的製剤を併用することがあります。
生物学的製剤は新しい治療法で、炎症を引き起こす原因物質（サイトカイン）を標的にして炎症を抑える働きがあります。それぞれの状態に応じた治療選択が必要です。

ぶどう膜炎の治療では、基本的に薬物療法が中心となりますが、すべてのケースで手術が不要というわけではありません。
内科的な治療で炎症のコントロールが難しい場合や、診断を目的として眼内液の採取が必要な際には、硝子体手術が選択されることがあります。また、長期間の炎症やその合併症によって白内障や網膜の障害が生じた場合には、それぞれに対応した手術が必要になることもあります。

手術の適応は患者さんの病状や経過によって異なり、すぐに行われるわけではなく、内科的治療を継続しながら慎重に判断されます。
なお、手術によってすべての症状が改善するわけではないため、十分な説明を受けたうえで選択することが大切です。

医師との相談を通じて、適切な治療方針を検討することが重要です。

ぶどう膜炎は、早期発見と適切な治療が視力を守る鍵となります。目のかすみや痛み、光に対する過敏さなど、些細な変化でも見逃さず、なるべく早めに眼科を受診することが大切です。今後もぜひご自身の目を大切にしてください。 ​