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「緑内障」になってから「失明」までの期間はどのくらい?失明の割合も解説!

 公開日:2025/04/30
「緑内障」になってから「失明」までの期間はどのくらい?失明の割合も解説!

緑内障は、視神経が徐々に損傷していく病気で、進行すると視野が狭くなり、失明に至る可能性もあります。しかし、実際に失明するまでの期間はどのくらいなのでしょうか?

本記事では緑内障になってから失明までの期間はどのくらいなのかについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 緑内障の概要
  • 緑内障で失明する場合について
  • 緑内障の検査と治療

緑内障になってから失明までの期間はどのくらいなのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

緑内障の概要

緑内障の概要

緑内障はどのような病気ですか?

緑内障は、視神経が障害されることで視野が徐々に狭くなっていく病気です。眼圧の上昇が主な原因のひとつとされていますが、正常な眼圧でも発症するタイプもあり、誰にでも起こりうる疾患です。

初期にはほとんど自覚症状がないため、気づかないうちに進行していることも少なくありません。視野が欠け始めてから受診するケースでは、すでに病気が進行していることもあり、視野が戻ることはないため、早期発見と治療が重要です。

どのような方が緑内障になりやすいのかについて教えてください

緑内障になりやすい方には、いくつかの共通した特徴があります。

まず、家族に緑内障と診断された方がいる方は遺伝的な影響を受けやすく、発症リスクが高まるとされています。また、強い近視のある方も視神経が傷つきやすいため注意が必要です。

さらに、高血圧や低血圧、糖尿病などの全身疾患を持っている方、睡眠時無呼吸症候群や片頭痛がある方も、眼の血流や神経に影響を及ぼしやすく、緑内障のリスクが上がります。

加えて、眼圧が高くなくても視神経がもともと弱い方では、わずかな眼圧の変化でも視神経が傷つきやすくなります。
これらに該当する方は、40歳を過ぎたら定期的に眼科での検査を受け、早期発見や早期治療につなげることが大切です。

緑内障の種類を教えてください

緑内障にはいくつかの種類があり、原因や進行の仕方によって分類されます。

●原発開放隅角緑内障
房水の排出路(線維柱帯)が詰まりやすくなり、眼圧が徐々に上昇して視神経が傷つく病気です。進行がゆっくりで自覚症状が少なく、発見が遅れがちです。

●正常眼圧緑内障
眼圧が正常範囲内にも関わらず視神経が障害されるタイプで、日本人に多くみられます。視神経の弱さや血流不足が関与していると考えられています。

●原発閉塞隅角緑内障
房水の出口である隅角が狭くなることで眼圧が急上昇し、突然の眼痛、視力低下、吐き気などを伴う「急性型」を起こすことがあります。緊急治療が必要です。

●続発緑内障
ほかの病気や外傷、薬剤(ステロイドなど)により引き起こされる緑内障で、原因に応じた対応が必要です。

●先天緑内障
生まれつき隅角の異常があることで、乳幼児期に発症します。進行が早いため、早期の手術が必要とされます。

緑内障で失明する場合について

緑内障で失明する場合について

緑内障で失明する割合はどのくらいですか?

緑内障による失明率は1%程度とされています。つまり、緑内障は早期に見つけて継続的に治療を行えば、視力や視野を維持できる可能性がある病気です。

しかし、初期にはほとんど自覚症状がないため、気付かないうちに進行してしまうことが多くあります。また、治療を始めても症状の改善を実感しにくいために途中で治療を中断してしまう人も少なくありません。

緑内障になってから失明までの期間を教えてください

緑内障は進行がゆるやかな病気であり、発症したからといってすぐに視力を失うわけではありません。失明に至るまでには長い時間がかかることが多く、発症から10〜30年程かけて徐々に視野が狭くなっていきます。

急性緑内障発作について教えてください

緑内障のなかでも原発閉塞隅角緑内障(げんぱつへいそくぐうかくりょくないしょう)と呼ばれるタイプは、稀に“急性緑内障発作”といわれる重篤な症状を引き起こすことがあります。この発作が発生した場合、わずか数日間放置するだけで視力が著しく低下し、失明に至ることもあるため、早めの受診と治療が必要です。

緑内障の検査と治療

緑内障の検査と治療

緑内障の検査について教えてください

緑内障を診断するために、以下の検査が実施されます。

●眼圧検査
眼内の圧力を測定し、異常がないかを調べます。空気を当てる非接触型、器具を目に当てて測定するゴールドマン圧平眼圧計、小型センサーで測定するアイケアなどがあります。眼圧は日内変動があるため、定期的な測定が必要です。

●隅角検査
房水の排出路である「隅角」の状態を観察する検査です。麻酔点眼後、専用のレンズを装着して行い、隅角の広さや癒着の有無を確認します。

●眼底検査
眼の奥にある視神経乳頭の形状や色を確認し、視神経のダメージを診断します。初期の緑内障の発見にも役立ちます。

●視野検査
視野の欠けや狭まりの有無を調べます。光の点が見えたときにボタンを押すことで、見える範囲を測定します。

●OCT検査(光干渉断層計)
網膜や視神経の断面を画像化し、微細な変化をとらえる検査です。視野異常が現れる前の初期緑内障の診断にもおすすめです。

緑内障の治療について教えてください

緑内障の治療は、視神経の損傷を防ぐために「眼圧を下げて進行を抑えること」が目的です。治療法は症状や眼圧、視神経の状態に応じて選択されます。

●点眼治療
まず基本となるのは点眼薬による治療です。眼圧を下げる効果が期待できる複数の種類の点眼薬から、患者さんの症状やライフスタイルに合ったものを選び、必要に応じて複数の薬を併用します。

●内服薬・点滴治療
点眼薬で効果が不十分な場合や急な眼圧上昇時には、内服薬や点滴を使用して眼圧を一時的に下げることがあります。特に「炭酸脱水素酵素阻害薬」などが使われますが、副作用に注意が必要です。

●レーザー治療
「選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)」などでは、房水の排出を助け、眼圧を下げます。外来で短時間に行える治療で、点眼治療と組み合わせることもあります。

●手術治療
点眼やレーザーで効果が出ない場合には、手術が検討されます。「線維柱帯切除術」や「チューブシャント術」などにより、眼圧をよりコントロールします。必要に応じて白内障手術を併用する場合もあります。

いずれの治療も、医師と相談のうえ、自身の症状やリスクに応じた方法を選ぶことが大切です。

緑内障を早期発見するためにはどのようなことに気をつければよいですか?

緑内障は初期には自覚症状がほとんどなく、気付かないうちに進行することが多いとされるため、早期発見のためには以下の点に注意が必要です。

●定期的な眼科検診
40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても年に一度は眼科で検診を受けることが大切です。視野検査や眼底検査、眼圧測定などで緑内障の兆候を早期にとらえられます。

●家族歴の確認
家族に緑内障の方がいる場合、自身も発症するリスクが高くなるため、早めの受診と定期検査を心がけましょう。

●見え方の違和感に敏感になる
視野の一部が暗く感じる、見えにくい部分があるなど、わずかな違和感でも放置せず眼科を受診することが重要です。

これらを意識することで、緑内障の早期発見につながり視力を守れます。

最後に、読者へメッセージをお願いします

緑内障は珍しい病気ではありませんが、自覚症状がほとんどないといわれているため、気付いたときには進行している可能性があります。そのため、緑内障について正しく理解し、40歳を過ぎたら、定期的に眼科検診を受診してください。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで緑内障になってから失明までの期間はどのくらいなのかについてお伝えしてきました。緑内障になってから失明までの期間はどのくらいなのかについての要点をまとめると以下のとおりです。

  • 緑内障の種類には、「原発開放隅角緑内障」「正常眼圧緑内障」「原発閉塞隅角緑内障」「続発緑内障」「先天緑内障」がある
  • 緑内障は進行がゆるやかな病気であり、発症したからといってすぐに視力を失うわけではないが、発症から10〜30年程かけて徐々に視野が狭くなるため注意が必要
  • 緑内障を早期発見するためには、定期的な眼科検診、家族歴の確認、見え方の違和感に敏感になることが大切

緑内障は視神経が徐々に損傷し、視野が狭くなっていく進行性の病気です。初期は自覚症状が少ないため、気づいたときには進行していることもあります。40歳以上の方や家族歴のある方、全身疾患をお持ちの方は特に注意が必要です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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