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「レックリングハウゼン病(神経線維腫症Ⅰ型)指定難病34」とは?症状・原因についても解説!

 更新日:2023/03/27
「レックリングハウゼン病(神経線維腫症Ⅰ型)指定難病34」とは?症状・原因についても解説!

レックリングハウゼン病は、主に色素斑と神経線維腫がみられる遺伝性の病気です。

世間ではあまり知られていない病気で、生まれた赤ちゃんに薄いシミがあっても気に留めない方が多いのが現状です。

乳児健診で指摘されて初めて知り、不安にかられる親御さんも少なくありません。インターネットで検索して出て来る情報は、まれな重い症状だからです。

ここでは、レックリングハウゼン病の原因や症状をご紹介します。正しい情報を得て、正しく対処することが大切です。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

レックリングハウゼン病とは?

レックリングハウゼン病とは?

レックリングハウゼン病とはどんな病気ですか?

  • レックリングハウゼン病とは神経線維腫症1型と呼ばれ、日本では難病に指定されています。ドイツの病理学者であるレックリングハウゼン氏によって学会報告されたため、この病名がつきました。
  • 生まれたときからカフェ・オ・レ斑と呼ばれる色素斑がみられるのが特徴です。就学時には腋に雀卵斑に似た色素斑点を認めます。思春期の頃には神経線維腫が生じるようになります。
  • このほかに、骨の変形や骨折、軽度の知的障害、目(虹彩の異常)、神経系(視神経の腫瘍による視力低下)など、多臓器に病変が起こることもあります。しかし、重い症状を合併する割合は多くはありません。

レックリングハウゼン病は何が原因で発症するものですか

  • レックリングハウゼン病は遺伝子の異常が原因です。両親のどちらかがレックリングハウゼンの場合、50%の確率で子どもも発症します。
  • しかし、遺伝子の突然変異で発症するケースも多く、患者さんの約半数は両親ともに遺伝子異常はみられません。第1子に突然変異の遺伝子異常がみられて、第2子の心配をする親御さんは多いです。しかし、両親に異常がなければ、その心配は無用です。
  • なお、レックリングハウゼン病は他人にはうつりません。「触ったらうつる」というのは、いわれのない病気差別です。

発症した際にはどんな症状がみられるのか教えてください。

  • 主な症状は、カフェ・オ・レ斑と神経線維腫です。カフェ・オ・レ班とはミルクコーヒー色の色素斑で、生まれたときからみられるのが一般的です。カフェ・オ・レ斑が、一定数以上で一定以上の大きさがある場合に疑われます。
  • 神経線維腫は思春期頃から現れることが多く、その外見が患者さんの大きな悩みになります。指の先程度の柔らかい腫瘍で良性です。また、大きな「びまん性神経線維腫」ができることもあります。
  • 生まれつき骨に異常がみられることもあり、成長するにつれて徐々に骨が変形するケースもあります。

国内に患者さんはどれくらいいるのですか?

  • 約3,000人に1人の割合で生まれ、国内の患者数は約40,000人と推察されます。
  • 遺伝性の病気の中では、比較的患者数が多いです。遺伝性の病気ではありますが、患者さんの半数以上は突然変異によるといわれています。
  • 遺伝子の突然変異による発症は、10,000人に1人と報告されています。

レックリングハウゼン病の診断・検査内容

レックリングハウゼン病の診断・検査内容

レックリングハウゼン病は何科を受診すると良いのでしょうか?

  • 乳児健診などでカフェ・オ・レ斑がみつかった場合は、医師に紹介された科を受診しましょう。通常は、カフェ・オ・レ斑や神経線維腫は皮膚科での診察、あるいは小児科の遺伝・奇形などの先天異常を専門としている医師の診療となります。
  • 複数の症状がみられる場合は、複数の診療科の医師が、チームで患者さんのケアにあたることもあります。さまざまな症状があるため「どの病院で、どの科で診てもらうか」と悩む方も少なくありません。
  • 病院や診療科でお悩みの方は、日本レックリングハウゼン病学会に相談することをおすすめします。患者さんの相談にのってくれるだけでなく、この病気を専門としている医師や病院を紹介してくれます。

レックリングハウゼン病の検査内容を教えてください。

  • レックリングハウゼン病は、特徴的な症状の有無が重要なポイントです。しかし、生まれたときには症状がカフェ・オ・レ斑のみということが多く、診断が難しいケースもあります。
  • 骨の変形や神経系の腫瘍などを診断するため、レントゲン・MRI・CTといった検査を行うこともあります。目に虹彩小結節と呼ばれる病変が現れることもあるため、眼科の検査も必要です。また、遺伝病であるため、家族の病歴も需要な診断材料になります。
  • 成長するにつれて新たな症状が現れる病気のため、カフェ・オ・レ斑の形状や数が診断基準を満たして疾患が疑われる場合には、担当医の指示で経過観察となります。

レックリングハウゼン病の治療方法

レックリングハウゼン病の治療方法

レックリングハウゼン病ではどんな治療をするのでしょうか?

  • 根本的な治療法がなく、対処療法が中心です。
  • 神経線維腫は、外科的手術や電気焼灼術で取り除きます。カフェ・オ・レ斑に対してレーザー治療を行うこともあります。
  • その他、悪性腫瘍などの病変には、必要とされる治療を行います。骨の変形に対しては整形外科で、脳腫瘍に対しては脳外科にて治療が施されます。

治療による副反応などはありますか?あれば教えてください。

  • 対処療法が中心で特効薬というものはないため、副反応も報告されていません。
  • 治療による副反応といえるものは、色素斑に対するレーザー治療くらいです。レーザー治療では、まれに色素沈着がみられることもあります。主に審美的治療のため、事前にメリットデメリットを確認しましょう。
  • 海外では治療薬の開発が進んでいます。日本ではまだ認可されていませんが、近い将来には根本治療に繋がる可能性があります。効果や副反応については研究中ですが、特効薬が開発されれば患者さんにとって明るい報告となります。

レックリングハウゼン病には合併症があると聞いたのですが…

  • 目に虹彩小結節という腫瘍がみられることがあります。これは良性で、視力に問題はありません。成長期には脊椎の側弯など骨格異常も報告されています。
  • 悪性腫瘍が発症することもありますが、発症頻度は低いです。また、子どもの頃には注意欠如多動症や学習障害がみられることもあります。
  • すべての患者さんに、すべての症状がでてくるわけではなく、個人差が大きいのがこの病気の特徴です。多くの患者さんは普通に学校に行って、普通の生活を過ごしています。必要以上に合併症を気にする必要はありません。合併症が多く症状が重い場合は、医療費の助成金が受けられることもあります。

治療中、あるいは治療後の注意点を教えてください。

  • レックリングハウゼン病を専門の1つにしている医師にかかり、大人になっても定期的な通院がおすすめです。
  • 軽症の患者さんの多くは、大人になると定期的に通院しなくなる傾向があります。この病気は生まれたときには発症しており、成長した後もさまざまな症状が出現する可能性があります。
  • このため、こども医療センターや大学病院などの基幹病院でのフォローが原則となります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 病気を知り、インターネットで検索をして暗い気持ちになる親御さんも少なくありません。しかし、この病気は個人差が大きいのが特徴です。
  • 多くの患者さんは普通の生活をして就職もし、家族を持っています。しかし、遺伝性の病気のため、結婚時や妊娠時に悩む方も多くいます。悩んだときには、レックリングハウゼン病学会が用意している相談機関を利用しましょう。
  • 最近は有効な薬も開発が進み、根本治療への躍進が期待されています。成人して症状が安定している方も、医療機関に定期的に通院することをおすすめします。最適な時期に最良の治療を受けられる環境が大切だからです。

編集部まとめ

編集部まとめ
レックリングハウゼン病は、指定難病の1つです。すべての患者さんが対象ではありませんが、医療費の助成が出る場合もあります。

また、小児慢性特定疾病にも指定されています。症状が重い方は、主治医に相談してみましょう。

この病気には有効な治療法がないことにより、軽症の方は次第に受診されなくなる方も少なくありません。

定期的な通院はせずに「神経線維腫が気になれば、形成外科や美容外科で切除する」という方が多いと考えられています。

しかし、薬の開発が進んでいる今、信頼のおける医療機関での受診がおすすめです。神経線維腫ができないようになる日も近いかもしれません。

この記事の監修医師