目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「ぶどう膜炎で失明する確率」はどれくらい?ぶどう膜炎の予後についても解説!

「ぶどう膜炎で失明する確率」はどれくらい?ぶどう膜炎の予後についても解説!

 公開日:2025/05/16
「ぶどう膜炎で失明する確率」はどれくらい?ぶどう膜炎の予後についても解説!

ぶどう膜炎という眼の病気をご存じですか?この病気は、目の内部に炎症を引き起こし、場合によっては視力に深刻な影響を及ぼすことがあります。

本記事ではぶどう膜炎で失明する確率について以下の点を中心にご紹介します。

  • ぶどう膜炎について
  • ぶどう膜炎が疑われる場合に行われる検査と治療
  • ぶどう膜炎で失明する確率

ぶどう膜炎で失明する確率について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

プロフィールをもっと見る
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

ぶどう膜炎とは

ぶどう膜炎とは

ぶどう膜炎はどのような疾患ですか?

ぶどう膜炎は、眼球の中層に位置するぶどう膜が炎症を起こす疾患の総称です。ぶどう膜は虹彩、毛様体、脈絡膜から構成されており、これらの部位が炎症を起こすと視力障害や目の不快感を引き起こす可能性があります。この炎症は眼内のほかの部位にも広がることがあり、網膜や強膜に影響を及ぼすこともあります。

ぶどう膜炎は、その炎症の位置に応じて、前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、そして汎ぶどう膜炎と分類されます。前部ぶどう膜炎は虹彩に影響を及ぼし、中間部ぶどう膜炎は硝子体を含む部位、後部ぶどう膜炎は網膜と脈絡膜に炎症が見られ、汎ぶどう膜炎はぶどう膜全体に炎症が広がる状態です。

ぶどう膜炎の原因は何ですか?

ぶどう膜炎の原因は多岐にわたり、主に非感染性感染性のぶどう膜炎の二つの大きなカテゴリに分類されます。

非感染性ぶどう膜炎では、免疫系の異常が炎症を引き起こすケースが多い傾向にあり、サルコイドーシスや原田病など、ほかの全身性の疾患が原因となることがあります。これらの状態は、眼の症状を通じて初めて診断されることも少なくありません。

一方で感染性ぶどう膜炎は、ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルス、細菌、真菌などの病原体による感染が原因です。これらの微生物は直接眼に感染を起こすことで炎症を引き起こし、時には重篤な視覚障害をもたらすことがあります。

ぶどう膜炎は、年齢を問わず発症する可能性がありますが、一部の症例では原因が特定できず、特発性ぶどう膜炎と診断されることもあります。このため、ぶどう膜炎の診断と治療は、眼科だけでなく、全身を診る総合的なアプローチとほかの診療科との連携も重要な病態です。

ぶどう膜炎の合併症を教えてください

ぶどう膜炎の主な合併症には、白内障と緑内障、虹彩後癒着や黄斑の障害があります。
白内障は水晶体が濁り、視力が低下する現象で、ぶどう膜炎による長期間の炎症やステロイド治療が原因となることがあります。

一方、緑内障は眼圧の上昇により視神経がダメージを受ける病状で、ぶどう膜炎に伴う炎症やステロイド薬の副作用が引き金となるとされています。

さらに、ぶどう膜炎では虹彩後癒着や黄斑の障害といった合併症も見られます。虹彩後癒着は虹彩が水晶体にくっついてしまう現象で、これが進行すると緑内障のリスクが増加します。また、黄斑の障害は視力低下を招く重要な因子で、黄斑に生じる浮腫が原因です。

これらの合併症はぶどう膜炎の進行に伴って発生しやすく、早期発見と適切な治療が視力保持の鍵となります。

ぶどう膜炎を発症するとどのような症状が現れますか?

ぶどう膜炎は、眼の虹彩、毛様体、脈絡膜などが炎症を起こす病状で、症状の種類や程度は炎症の位置や強度によって異なります。主な症状は以下のとおりです。

・霧視(視界がかすんで見える)
・飛蚊症(小さな物体が視野を飛び交うように見える)
・羞明(眩しさに対する過敏さ)
・視力低下
・目の痛み
・眼の充血など

これらの症状は片目だけでなく両目に起こることもあり、時には症状が交互に両眼に現れることもあります。
症状が出た場合は、速やかに眼科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

ぶどう膜炎の検査・治療

ぶどう膜炎の検査・治療

ぶどう膜炎が疑われる場合、どのような検査が行われますか?

ぶどう膜炎が疑われる場合に行われる検査は、以下のように分類されます。

1.細隙灯顕微鏡検査:眼の前部構造を詳細に観察し、炎症を発見する
2.眼圧検査:眼圧の測定を行い、緑内障のリスクや炎症による眼圧の変動を確認
3.眼底検査:目薬で瞳を広げた後、眼底カメラや特殊な顕微鏡を使用して網膜や脈絡膜の状態を詳しく調べ、炎症の具体的な位置や程度を把握する
4.光干渉断層計(OCT):眼底の三次元画像を取得し、網膜やその他の眼底構造の断層を詳細に分析し、炎症による組織の変化を正確に診断する
5.蛍光眼底造影検査:造影剤を用いて眼底の血管の状態を撮影し、炎症や血管の異常を詳しく観察する(炎症が眼底の深部に及んでいる場合に有効とされてる検査)

さらに、ぶどう膜炎が全身疾患に関連している可能性があるため、必要に応じて、血液検査、胸部X線検査、CTスキャンなどの全身検査が実施されることもあります。

非感染性ぶどう膜炎に対してどのような治療が行われますか?

非感染性ぶどう膜炎の治療は、主に炎症を抑えることと免疫反応の調整を目的として行われます。

軽度の場合にはステロイドの点眼薬が中心となり、炎症が強い場合には眼球への局所注射や、ステロイドの内服・点滴といった全身的な治療が必要になることもあります。さらに、ステロイドだけでは効果が不十分なケースでは、免疫抑制剤や生物学的製剤(TNF阻害薬など)が用いられることがあります。

これらは炎症の原因となる免疫反応を抑える治療で、一部は保険適用にも対応しています。

感染性ぶどう膜炎に対してどのような治療が行われますか?

感染性ぶどう膜炎の治療では、原因となる病原体(細菌・ウイルス・真菌など)に応じて、抗菌薬や抗ウイルス薬、抗真菌薬などが使用されます。これらの薬剤は、感染を引き起こしている病原体を排除し、炎症の進行を防ぐことを目的としています。

軽度の場合は点眼薬や内服薬が用いられますが、症状が重い場合や感染が眼球全体に及んでいる場合には、点滴による全身投与が必要になることもあります。

ぶどう膜炎の予後

ぶどう膜炎の予後

ぶどう膜炎で失明する確率はどのくらいですか?

ぶどう膜炎による失明のリスクは、炎症の程度や部位、原因疾患、治療の開始時期や内容によって大きく異なります。

特にベーチェット病によるぶどう膜炎は、以前は失明率が30〜40%にのぼることもありましたが、1990年代以降の治療法の進歩により、現在ではおおよそ20%程度まで低下しています。シクロスポリンやTNF阻害薬といった免疫調整薬の導入が、視力の維持に大きく貢献しています。

ただし、重症例や治療の遅れがある場合には、視力への重大な影響を避けられないこともあるため、失明のリスクを抑えるためには、継続的な経過観察と治療の調整が重要です。

ぶどう膜炎は再発しやすい疾患ですか?

ぶどう膜炎は再発を繰り返しやすい疾患であり、発作的に炎症が出現することも多く、長期間にわたる治療と管理が必要になります。

炎症が再発するたびに網膜や視神経などにダメージが蓄積され、視力の低下や、場合によっては失明に至る可能性もあります。

そのため、症状が落ち着いていても油断せず、定期的な通院と医師の指示に基づいた治療の継続が不可欠です。特に、自己判断による薬の中断や通院の中止は再発の引き金となるため注意が必要です。

ぶどう膜炎の方が日常生活を送るうえでの注意点を教えてください

ぶどう膜炎を管理するためには、日常生活でいくつかの注意点を守ることが重要です。
まず、身体的なストレスや過度の疲労を避け、規則正しい生活を心がけることが基本です。

また、喫煙は症状の悪化につながることが示されているため、禁煙も推奨されます。

さらに、定期的な通院と治療の継続は症状の管理と再発予防に不可欠であり、自己判断で治療を中断することは避けましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ぶどう膜炎は、再発を繰り返すこともある慢性的な目の病気であり、視力に影響を及ぼす可能性もあるため、早期の診断と継続的な治療がとても重要です。

症状が落ち着いている時期でも油断せず、定期的な通院と医師の指示に従った治療を続けることが、視機能を守るうえで大切なポイントとなります。不安や疑問がある場合には、ひとりで抱え込まず、医師に相談してください。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまでぶどう膜炎で失明する確率についてお伝えしてきました。ぶどう膜炎で失明する確率の要点をまとめると以下のとおりです。

  • ぶどう膜炎は、眼球の中層に位置するぶどう膜が炎症を起こす疾患の総称で、霧視や飛蚊症、羞明、目の痛み、眼の充血などの症状が現れ、主に非感染性と感染性のぶどう膜炎が原因で発症する病気
  • ぶどう膜炎が疑われる場合は、細隙灯顕微鏡検査、眼圧検査、眼底検査、光干渉断層計(OCT)、蛍光眼底造影検査、全身検査などが行われ、原因や重症度に応じてステロイド系の点眼薬や内服薬、免疫抑制剤や生物学的製剤、抗菌薬や抗ウイルス薬での治療が行われる
  • ぶどう膜炎による失明のリスクは、病状の重さ、炎症の位置、治療の適切性などさまざまな要因によって変わり、ベーチェット病による失明率の場合は20%程度

ぶどう膜炎の症状がある日突然改善することは難しいかもしれませんが、早期治療やケアを継続することで、失明を防ぎましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師