「梅毒の初期症状」はご存知ですか?男女別に解説!【医師監修】

梅毒は性感染症の一つで予防や治療が可能な病気です。
梅毒には特徴的な初期症状があり、早期に受診することが治癒と感染拡大防止に重要です。
この記事では、梅毒に感染する原因や発見するための検査などを詳しく解説します。また、発症した際の治療法や治療中の過ごし方も紹介します。
梅毒にかかる不安のある方やかかってしまい治療中の方のお役に立てれば幸いです。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
梅毒の原因や検査
梅毒の原因を教えてください。
梅毒発症までの潜伏期間を教えてください。
- 早い期間では1週間
- 長い期間では90日間
- 平均で3週間
男女間での違いはありません。潜伏期間中も細菌は増殖を続けており、気付かないような粘膜症状から他者への感染リスクがあります。感染症に罹患していても検査で検出が不可能な潜伏期間の時期をウィンドウピリオドといい、検査が問題なくても再検査が必要になる場合があることも性感染症の注意点のひとつです。リスクのある行為後は自身の身体を注意深く観察したり、他者との性行為も避けたりするなど、自身と周囲を守る行動が求められます。
梅毒の検査はどのように行われますか?
- 培養:ウサギの睾丸での培養が患者さんの検体から菌を発育することができる唯一の手段
- 菌の観察:Warthin-starry(ワルチン・スターリー)染色やギムザ染色などの特殊染色を行い鏡見
- CR:菌の遺伝子を特異的に増幅することで存在を証明する
上記の方法は、いずれも実施可能な施設は限られています。しかし多くの場合は以下のような血清学的検査が実施されています。
- 非トレポネーマ抗原検査:カルジオリピンーコレステロールーレシチンの脂質抗原と呼ばれる梅毒に似た成分を検出する検査
- トレポネーマ抗原検査:梅毒そのものを検出する特異性が高い検査
この二つの検査結果をもとに正確に解釈を行います。しかし検査は万能ではありません。梅毒ではないが検査で検出される偽陽性と、梅毒に感染しているが検査で検出できない偽陰性に注意が必要です。
梅毒の初期症状
男性の梅毒初期症状を教えてください。
- 初期硬結:感染した部位に軟骨のような硬さのしこりができる
- 硬性下疳:進行して潰瘍が形成される
- リンパ節の腫れ:感染部位近く(鼠蹊部)のリンパ節が腫れる
初期硬結が生じる具体的な部位は亀頭や陰茎が多く、同性間でのアナルセックスがあった場合は肛門周囲にも生じます。直径は3mmから3cm程度で、痛みやかゆみなどの症状はほとんど認められません。硬性下疳はしこりが進行すると潰瘍が形成され、この潰瘍も痛みやかゆみなどの症状はほとんど伴わないため気付かれにくいことに注意が必要です。リンパ節が腫れる原因は、異物を排除しようと免疫反応が活発化し、免疫細胞が集まることでリンパ節の腫脹を引き起こします。これらの症状は治療しない場合でも数週間で自然に消失しますが、体内では感染が進行しているため、早期の正確な診断と治療が重要になります。
女性の梅毒初期症状を教えてください。
- 大陰唇
- 小陰唇
- 膣内
梅毒の初期症状である発疹などの皮膚症状は、出現したり消失したりを繰り返すことが特徴です。そのため、治ったと誤解し、進行してから感染が判明することもあります。また、痛みや違和感を伴わないことも症状や感染の自覚が乏しくなる原因です。女性器の方が、病変部を確認しづらいという報告もあります。リンパ節の腫れや口腔内や唇の病変は男性と同様です。
症状がまったく出ないこともありますか?
梅毒と口内炎の見分け方を教えてください。
- 原因:主に性的接触による梅毒トレポネーマの感染
- 病変の特徴:硬く痛みのないしこりや潰瘍
- 色:赤みのある境界明瞭の潰瘍
- 痛み:ほとんど痛みを感じない
- 治癒までの期間:数週間で自然に消失するが感染は進行する
- その他の症状:発疹やリンパ節の腫脹、発熱などの全身症状
次に口内炎の特徴をみてみましょう。
- 原因:噛み傷や火傷などの物理的刺激とストレスや栄養不足などの内因性要因
- 病変の特徴:やわらかい円形や楕円形の潰瘍
- 色:中央が白く周囲が赤い
- 治癒までの期間:1〜2週間で自然治癒
- その他の症状:全身症状はなし
- 痛み:接触や刺激物により強い痛みが生じる
梅毒は放置すると進行する病気のため、口内炎と見分け、疑わしい場合は早めの受診が重要です。
梅毒の治療法
梅毒の治療方法を教えてください。
- 発熱
- 悪寒
- 筋肉痛
- 頭痛
頻度は10〜35%程度であり、通常は24時間以内には自然に改善します。ペニシリン系抗菌薬にアレルギーがある場合は、ほかの薬剤(例:マクロライド系抗菌薬)が使用されることがあります。妊娠中の患者さんに対してテトラサイクリン系抗菌薬を使用すると胎児の骨や歯の発達に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
梅毒の治療期間はどのくらいですか?
- 第一期(早期梅毒):治療期間は通常2〜4週間
- 第二期(進行した梅毒):治療期間は通常4〜8週間
- 第三期以降(晩期梅毒):感染が長期間放置されると8〜12週間の点滴治療が必要になる
非トレポネーマ抗原検査は、梅毒の活動性を評価し、治療効果を判定するために使用されます。治療終了後も、半年程度の経過観察と血液検査で治癒の状態を確認する必要があります。
梅毒の治療中に性行為を行うことはできますか?
編集部まとめ
梅毒は、梅毒トレポネーマによる感染症の一つです。感染経路は主に性行為による接触感染で、感染後約3週間の潜伏期間を経て、症状が出現します。
潜伏期間は長い期間で90日間との報告もあり、個人差があるため注意が必要です。初期の症状は痛みを伴わないしこりや潰瘍で、放置しても自然に消失します。
梅毒は進行すると神経梅毒と呼ばれる状態になり、中枢神経が侵されて重症化する可能性があります。治療後も定期的な検査が推奨され、治療中には性行為を控えることが望ましいです。