「梅毒の初期症状」はご存知ですか?男女別に解説!【医師監修】
更新日:2025/09/18

梅毒は性感染症の一つで予防や治療が可能な病気です。 梅毒には特徴的な初期症状があり、早期に受診することが治癒と感染拡大防止に重要です。 この記事では、梅毒に感染する原因や発見するための検査などを詳しく解説します。また、発症した際の治療法や治療中の過ごし方も紹介します。 梅毒にかかる不安のある方やかかってしまい治療中の方のお役に立てれば幸いです。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
目次 -INDEX-
梅毒の原因や検査
梅毒の原因を教えてください。
梅毒は、らせん型の細菌である梅毒トレポネーマによって引き起こされる感染症のひとつです。主な感染経路は性行為で、性感染症として知られています。梅毒トレポネーマは人にのみ感染し、体外では生きていけません。そのため、同じお風呂に入る程度では感染リスクは低く、性行為など直接的な接触を伴う行為が感染の主な原因になります。病名は、症状として現れる赤い発疹が楊梅に似ていたことが由来です。感染者の粘膜や体液が接触することで感染します。コンドームの使用により感染リスクを低下させますが、キスやオーラルセックスでも感染しうるため、注意が必要です。妊娠中に梅毒が体内に存在する場合、胎盤を通過して胎児に感染することもあります。胎内で感染したことが原因で流産や先天梅毒が引き起こされる場合があります。
梅毒発症までの潜伏期間を教えてください。
潜伏期間とは、感染から症状が現れるまでの期間のことです。個人差がありますが次のような特徴があります。
- 早い期間では1週間
- 長い期間では90日間
- 平均で3週間
梅毒の検査はどのように行われますか?
梅毒は偽装の達人とも呼ばれ、症状の鑑別や検査での発見が難しい病気です。そのため、梅毒を理解したうえでの検査戦略が大切になります。また、梅毒を疑って検査を進めるためには正確な問診も重要です。梅毒の検査についての方法と特徴を以下に挙げます。
- 培養:ウサギの睾丸での培養が患者さんの検体から菌を発育することができる唯一の手段
- 菌の観察:Warthin-starry(ワルチン・スターリー)染色やギムザ染色などの特殊染色を行い鏡見
- CR:菌の遺伝子を特異的に増幅することで存在を証明する
- 非トレポネーマ抗原検査:カルジオリピンーコレステロールーレシチンの脂質抗原と呼ばれる梅毒に似た成分を検出する検査
- トレポネーマ抗原検査:梅毒そのものを検出する特異性が高い検査
梅毒の初期症状
男性の梅毒初期症状を教えてください。
梅毒は1期から4期まで長い期間をかけて進行します。初期の症状が出現するのが1期です。初期に早期発見し、早期治療することが自身とパートナーを守ることにつながります。梅毒の侵入した部位にしこりや潰瘍ができることが初期の症状です。具体的に注意して観察すべき部位は性器やお口のなか、肛門周囲が挙げられます。梅毒の男性の初期症状は、平均的に感染から3週間後に現れます。以下のような症状が特徴的です。
- 初期硬結:感染した部位に軟骨のような硬さのしこりができる
- 硬性下疳:進行して潰瘍が形成される
- リンパ節の腫れ:感染部位近く(鼠蹊部)のリンパ節が腫れる
女性の梅毒初期症状を教えてください。
女性の梅毒の初期症状は男性と似ていますがいくつか特有の点があります。初期硬結や硬性下疳の生じる場所です。
- 大陰唇
- 小陰唇
- 膣内
症状がまったく出ないこともありますか?
梅毒は症状がまったく出ないこともあります。これは、特に潜伏梅毒と呼ばれる状態です。潜伏梅毒とは血清反応が陽性であっても無症候性で、かつ中枢神経浸潤のない状態を指します。また、感染成立後1年以内であれば早期潜伏梅毒、1年以上経過していれば後期潜伏梅毒と区別可能です。特に、早期潜伏梅毒では性交渉での感染リスクが高く、一方で後期潜伏梅毒ではやや感染リスクは低くなります。身体的な症状が一切見られないものの、体内には梅毒トレポネーマが存在しており、経胎盤感染は起こりえるため注意が必要です。
梅毒と口内炎の見分け方を教えてください。
梅毒と口内炎は、どちらもお口の中にできる病変です。しかし原因や特徴が異なります。梅毒の特徴には次のようなものがあります。
- 原因:主に性的接触による梅毒トレポネーマの感染
- 病変の特徴:硬く痛みのないしこりや潰瘍
- 色:赤みのある境界明瞭の潰瘍
- 痛み:ほとんど痛みを感じない
- 治癒までの期間:数週間で自然に消失するが感染は進行する
- その他の症状:発疹やリンパ節の腫脹、発熱などの全身症状
- 原因:噛み傷や火傷などの物理的刺激とストレスや栄養不足などの内因性要因
- 病変の特徴:やわらかい円形や楕円形の潰瘍
- 色:中央が白く周囲が赤い
- 治癒までの期間:1〜2週間で自然治癒
- その他の症状:全身症状はなし
- 痛み:接触や刺激物により強い痛みが生じる
梅毒の治療法
梅毒の治療方法を教えてください。
梅毒の治療方法は、主にペニシリン系抗菌薬のアモキシリン投薬が一般的です。治療開始後24時間以内に、Jarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー)反応と呼ばれる副反応が現れることがあります。そのため、事前に医師から説明を受け、心構えをしておくことが重要です。この副反応は、抗菌薬によって破壊された菌体からサイトカインが放出されることによって生じ、以下のような症状が出現します。
- 発熱
- 悪寒
- 筋肉痛
- 頭痛
梅毒の治療期間はどのくらいですか?
梅毒の治療期間は個人差や病気の進行度によってさまざまです。
- 第一期(早期梅毒):治療期間は通常2〜4週間
- 第二期(進行した梅毒):治療期間は通常4〜8週間
- 第三期以降(晩期梅毒):感染が長期間放置されると8〜12週間の点滴治療が必要になる
梅毒の治療中に性行為を行うことはできますか?
梅毒の治療中は性行為を控えることが強く推奨されます。梅毒は皮膚や粘膜の接触で感染するため、治療中でも梅毒トレポネーマが完全に排除されていない場合、パートナーに感染させるリスクが生じます。コンドームは感染リスクを減少させる効果がありますが、病変部がコンドームで覆われない場合もあるため、治癒の確認を待つべきです。
編集部まとめ
梅毒は、梅毒トレポネーマによる感染症の一つです。感染経路は主に性行為による接触感染で、感染後約3週間の潜伏期間を経て、症状が出現します。 潜伏期間は長い期間で90日間との報告もあり、個人差があるため注意が必要です。初期の症状は痛みを伴わないしこりや潰瘍で、放置しても自然に消失します。 梅毒は進行すると神経梅毒と呼ばれる状態になり、中枢神経が侵されて重症化する可能性があります。治療後も定期的な検査が推奨され、治療中には性行為を控えることが望ましいです。



