「緑内障手術」の費用や術後の合併症はご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/02/03

緑内障は日本人では40代以上の人が発症しやすい目の病気で、20人に一人が発症しています。70歳以上になると罹患率は一気に上がって10%にもなり、失明の原因の第1位です。 緑内障は片目ずつ発症しますが、普段は両目で見るため、片目のみの症状は自覚しにくくなります。 日常生活で視界に異常を感じ、眼科医にかかったときには緑内障がかなり進行していた、ということも往々にしてあります。 症状を自覚しにくい病気だからこそ、眼科医の定期的な検診が重要です。 緑内障になってしまったらどのような手術をするのか、入院は必要か、費用はどのくらいなのかなど気になる点を解説します。

監修医師:
柳 靖雄(医師)
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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
目次 -INDEX-
緑内障手術・入院・費用
緑内障とはどのような病気ですか?
緑内障は視野障害を引き起こす病気です。症状には以下のようなものが挙げられます。
- 見える範囲が狭くなる
- 視野の一部が欠ける
- 視力が悪くなる
- 閉塞隅角緑内障
- 開放隅角緑内障
緑内障の手術はどのように行いますか?
緑内障と診断されたら、即手術ではありません。緑内障治療の目的は眼圧を下げることです。まずは薬物療法(点眼薬)により眼圧を下げる治療が行われます。点眼薬にも副作用が発生する場合があり、点眼薬を用いられない場合や効果が認められない場合、手術治療を行います。眼科医には緑内障のタイプ、つまり閉塞隅角緑内障か開放隅角緑内障かを確認しましょう。タイプにより術式も異なるためです。また手術によるデメリットの説明を受けたうえで手術を受けましょう。手術には大まかに以下のものがあります。
- レーザー手術
- 観血手術
- 選択的レーザー線維柱帯形成術(selective laser trabeculoplasty;SLT)
- マイクロパルス波毛様体光凝固(micro-pulse cyclophotocoagulation;MPCPC)
- レーザー虹彩切開術
- 流出路再建術(トラベクロトミー)
- 濾過手術(トラベクレクトミー)
入院が必要なケースについて教えてください。
レーザー治療では日帰りや1泊2日を推奨する病院があります。ただし、入院はなくとも通院は必要になることがあります。入院の有無は術式により違うため、眼科医に確認しておきましょう。観血手術のチューブシャント術式で14日の入院を推奨するケースもあります。
緑内障手術の費用はどのくらいになりますか?
緑内障手術や治療は、原則として保険適用です。原則70歳以上は1割負担、未満は3割負担となります。片目治療なのか両目治療なのか、また術式により金額は大きく変わるため、眼科医や病院に事前に確認しましょう。
緑内障手術後の合併症・注意点
術後の合併症について教えてください。
レーザー手術の術式により合併症も異なりますが、以下の症状の可能性があります。
- 疼痛
- 視力が低下する
- 炎症
- 瞳孔の位置異常
- 目の前房出血
- 角膜の異常や障害
- 白内障
- 術後の一過性眼圧上昇
- 周辺虹彩前癒着
- 毛様体剝離
- 硝子体出血
術後の安静期間はどのくらいですか?
術後1週間は安静が必要です。1週間後に顔以外のシャワーや入浴が可能になります。仕事は2週間後くらいから復帰が可能とされていますが、職種にもよるので眼科医に相談しましょう。
術後の注意点について教えてください。
顔以外の入浴は1週間後から可能です。自動車やバイクの運転も1週間は不可とされることが多く、激しい動作を伴うスポーツや旅行は約1ヶ月は控える方が望ましいとされています。ただし、患者さんの緑内障の進行状態や受けた術式により異なるので、眼科医の指導を受けましょう。
緑内障の治療方法・検査方法
手術以外の緑内障治療にはどのようなものがありますか?
薬物治療があります。点眼薬で眼圧を下げる治療です。開放隅角緑内障ではプロスタノイド受容体作動薬、眼圧下降効果の面でβ遮断薬およびEP2受容体作動薬などがあります。点眼は自ら行う治療の認識で、眼科医の指示どおりに行いましょう。注意する点は次のとおりです。
- 清潔な手で点眼
- 点眼容器がまつげに触れない
- 1回1滴
- 複数の点眼は5分間隔で行う
- 点眼後瞬きせずまぶたを閉じる
- 手についた薬液は洗う
緑内障の検査方法について教えてください。
検査には以下の工程があります。
- 問診・視診
- 視力検査・屈折検査
- 細隙灯顕微鏡検査
- 眼圧検査
- 隅角鏡検査
- 眼底検査(眼底写真・画像解析)
- 視野検査
- 角膜厚検査ほか
緑内障を予防する方法はありますか?
緑内障は生活習慣病ではないため、特に確立された予防方法はありません。自覚症状もあまりないため、眼科医の定期検診を受け早期発見することが予防となります。
編集部まとめ
緑内障の英語の異名は、Silent Thief of Sight(静かな視覚泥棒)です。緑内障の進行は自覚されにくいにもかかわらず、失明原因の第1位です。
眼圧を下げる点眼薬治療やレーザー手術、観血手術など保険で治療や手術は受けられますが、一旦失った視神経を復活させることはできません。
定期的に検診を受けて早期発見を心がけることが大切です。




