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「概日リズム障害」の原因・治療方法・対策はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/04/11
「概日リズム障害」の原因・治療方法・対策はご存知ですか?医師が監修!

概日リズム障害は体内時計の狂いによって起こる症状で、睡眠の質に関わってきます。

睡眠の質が悪くなることで様々な疾患を誘発する恐れがあるため、放置するのは好ましくありません。

この記事では概日リズム障害の特徴・原因・治療法などについて解説していきます。

受診すべき医療機関や具体的な検査方法についても解説するので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

概日リズム障害とは

疑問

概日リズム障害とはどのような病気でしょうか?

概日リズム障害とは体内時計の狂いにより睡眠や覚醒など生活リズムがおかしくなる病気です。体のリズムがおかしくなると

  • 遅延睡眠相症候群:就寝時間の遅れにより起床が遅くなる病気
  • 進行睡眠相症候群:就寝時間の繰り上がりにより早朝に目覚めてしまう病気

などの症状を引き起こします。三交代制のシフト勤務を行っている方や夜間勤務など、生活リズムが不安定な場合に発症するケースが多くみられます。最悪の場合、うつ病や不安障害にもつながる病気です。
生活リズムと密接に関連していることから日常生活に与える影響が大きく、早い段階で医師の診療を受けて治療するのが望ましいです。
主な治療法としては

  • 睡眠改善
  • 睡眠薬
  • 光療法
  • 認知行動療法

などが挙げられます。

さまざまなタイプがあると聞きましたが…。

一口に概日リズム障害といってもさまざまなタイプがあります。主なタイプは以下の通りです。

  • 遅延睡眠相症候群(Delayed Sleep Phase Syndrome, DSPS):一日の概日リズムが24時間よりも長いことから夜ふかしをする傾向にあり、早起きが難しくなる症状。
  • 進行睡眠相症候群(Advanced Sleep Phase Syndrome, ASPS):一日の概日リズムが24時間よりも短いことから就寝時間が早まる傾向にあり、早朝に目覚めてしまう症状。
  • 不規則睡眠・覚醒症候群(Irregular Sleep Wake Rhythm, ISWR):日々の睡眠・覚醒にばらつきが起こり、日中の活動時に眠気や倦怠感がみられる症状。
  • 無24時間睡眠覚醒症候群(Non-24 Hour Sleep Wake Disorder, Non-24):一日の概日リズムが24時間ではないことから就寝や起床のタイミングが大幅に前後する症状。視覚障害者に多い傾向があります。

それぞれのタイプに合った治療法があるため、医師の診療に基づいた適切な方法を選択しましょう。

発症する原因を教えてください。

概日リズム障害が発症する原因は様々です。以下、主な要因を紹介します。

  • 遺伝的:概日リズム障害には遺伝性が認められており、家庭内で複数の発症事例が確認されることは珍しくありません。
  • 環境要因:生活リズム・ストレス・空間の明るさなど、環境の変化によって概日リズムに影響を受けることがあります。
  • 薬物やアルコールの摂取:覚醒作用のある薬物・アルコールなどの摂取は睡眠に影響を与えるため、概日リズムの乱れにつながることがあります。
  • 時差ぼけ:海外旅行や夜勤は普段の生活リズムとのギャップが大きく、概日リズムに影響を与えることがあります。

一般的には上記の要因が複雑に影響し合うことで概日リズム障害が起こると考えられていますが、未知の部分も多いのが現状です。

概日リズム障害の治療

医師

何科を受診すれば良いでしょうか?

概日リズム障害は睡眠に関連した症状です。そのため睡眠医療の専門家に相談するのが適切です。
睡眠は個人差が大きい分野であるため、睡眠医療の専門家は各人の症状・睡眠歴・身体検査などを総合的に判断して治療法を検討します。
近場で睡眠医療の専門家が見つからない場合は内科や神経科で相談するのも一つの選択肢です。
しかし上記でお伝えしたように睡眠は個人差が大きくデリケートな分野なので、やはり睡眠医療の専門家に相談するのが良いでしょう。

どのような検査を行うのでしょうか?

代表的な概日リズムの検査は主に以下の通りです。

  • 睡眠日誌: 睡眠の習慣を日々記録する検査方法です。主に就寝時間・起床時間・睡眠の質・眠気の有無などが記録項目となっています。
  • 睡眠検査(ポリソムノグラフィー):センサーを装着し睡眠中の脳波・心拍数・呼吸・筋肉活動などを記録する検査です。
  • 覚醒時の体温変化測定: 日中の活動時間内における体温の変化を測定することで体内時計が正常に機能しているかどうか検査します。
  • メラトニン検査: メラトニンは睡眠と覚醒に関わる重要なホルモンです。そのため一日の尿中メラトニン濃度を測定することで体内時計の状態を把握することができます。

上記の検査を行うことで概日リズムの状態を把握し適切な診断・治療法を提案することができます。ただし概日リズム障害の症状には個人差があるため検査方法は状況に応じて異なるケースがあります。

治療方法を教えてください。

概日リズム障害の治療には個人差がありますが、一般的には以下が代表的な治療方法になります。

  • 睡眠・覚醒の習慣改善:概日リズム障害は就寝・起床の乱れであるため、生活リズムを一定にすることが大切です。基本的には起床時間の固定・朝日を浴びる・就寝前のリラックスなどが習慣の改善に当たります。
  • メラトニンの使用:メラトニンは体内時計に密接に関わっているホルモンです。人工的に服用することが可能で、概日リズムを正常化するために有効です。就寝前に服用することで睡眠の質をアップさせることができます。
  • 光療法: 体内時計を調整するために決まった時間に明るい光を浴びる治療法です。時間帯や光量は専門医によって調整されるため適切な診療の元で行う必要があります。
  • 薬物療法: 睡眠に関わる不調は精神面が影響している場合もあるため抗うつ薬・抗不安薬などの薬物を使用する場合があります。ただし副作用がある薬物もあるため、こちらも専門医の指導の元で適切に服用しましょう

上記のほかにも認知行動療法・栄養療法など様々な治療法があります。治療方法は個々人の症状に応じて専門医が判断します。

どのような治療薬を使うのでしょうか?

概日リズム障害の治療薬は主に以下のとおりです。

  • メラトニン製剤:上記で述べたとおり、メラトニンは体内時計に関わるホルモンです。市販でも手に入れることができ、入眠・起床のリズムを整える働きがあります。専門医の診療を受けている方は医師に処方してもらったメラトニン製剤を活用すると良いでしょう。
  • 鎮静薬:ベンゾジアゼピン系などの鎮静薬は入眠をスムーズにする働きがあります。ただし長期の使用は依存性・副作用などのリスクがあるため、あくまで一時的な対処療法として活用されるのが一般的です。
  • 抗うつ薬: トリプタン・SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などに代表される抗うつ薬は眠気を誘発する働きがあり、概日リズム障害の治療薬として活用されることがあります。

概日リズム障害は様々な要因が複合的に影響し合って起こる病気です。そのため専門医の診断の元に適切な治療薬・使用量・使用期間で治療しましょう。
また、複数の治療薬を服用する場合は副作用が起こる可能性もあるため注意しましょう。

概日リズム障害の対策

解決

概日リズム障害は完治しますか?

概日リズム障害の完治は難しいとされています。適切な治療や服薬で症状を改善できる場合もありますが基本的には治療が難しい疾患の一つです。
ただし概日リズム障害の症状・進行度によっては完治も可能な場合があります。概日リズム障害の症状がみられたときに早めに専門医へ相談し早期治療をすることが大切です。
治療方法は症状によってさまざまですが、薬物療法・光療法などが主な治療法です。
概日リズム障害はうつ病などの精神疾患を伴うケースもあるため、場合によっては精神科の診断も織り交ぜた治療が施されます。
専門医に相談しながら様々な側面から概日リズム障害の改善方法を検討しましょう。

概日リズム障害を放置するリスクを教えてください。

概日リズム障害の放置は思わぬリスクにつながります。以下、各リスクについて紹介します。

  • 睡眠障害:概日リズム障害は体内時計の乱れと関連しているため、睡眠の質にも影響があります。睡眠の質が悪くなると倦怠感を伴うことも多くなり、日常生活に支障が出てきます。
  • パフォーマンス低下:概日リズム障害は睡眠へ悪影響を及ぼすため疲れが取れにくくなり、日中の活動におけるパフォーマンス低下につながります。特に運転・スポーツにおけるパフォーマンス低下は重大な事故を起こす危険性が高まります。
  • 精神障害: 概日リズム障害による睡眠障害は精神障害を誘発する恐れがあります。精神的ストレス・社会生活の制限などはメンタル面だけでなく身体の健康に悪影響を及ぼします。
  • 健康リスクの増加:概日リズム障害になるとホルモンバランスや自律神経の乱れを引き起こすことがあります。その結果、身体の機能維持に異常をきたし、肥満・糖尿病・高血圧・心臓病などの健康リスク増加につながります。

上記で述べたように、概日リズム障害の放置によるリスクは様々です。症状が確認された段階で早めに専門医へ相談することが推奨されます。決して自分一人で抱えないようにしましょう。

自分でできる対策があれば教えてください。

以下、概日リズム障害を防ぐための対策を紹介します。

  • 日中の光の取り入れ方を調整する:概日リズム障害はすなわち体内時計が狂っている状態です。体内時計を調整するには起床後すぐにカーテンを開けて朝日を浴びることです。また、日中の活動時には暗い場所を避けて行動することが推奨されます。
  • 睡眠の習慣を改善する:睡眠の習慣の改善には毎日一定の時間に就寝・起床する必要があります。そのほか就寝前のスマホをやめたり、静かな部屋での就寝を心がけるなど、睡眠環境に配慮することも大切です。
  • 適度な運動を行う:体を動かすことで体内時計を調整することが可能です。適度な運動を心がけ、睡眠の質を向上させましょう。ただしきつすぎる運動は睡眠の質の観点から逆効果になる可能性があります。運動の強度には気をつけましょう。
  • 健康的な食生活を心がける:日々摂取する食事の内容でも体内時計に影響を与えます。特に就寝前の飲酒・カフェイン摂取は体内時計に悪影響を与えるため控えましょう。
  • ストレスを減らす:ストレスは概日リズム障害の症状をエスカレートさせる要因になり得ます。ストレスを減らすためには発散できる趣味・運動を行い、適度に急速をとることです。

概日リズム障害の対策は生活習慣の改善が中心であるため、自分でできるものが大多数です。ただし発症後の症状がひどいとき、長引いているときはしっかり専門医に相談し治療法を仰ぎましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

概日リズム障害は体内時計の乱れによって起こる症状です。日々の生活習慣を中心に見直すことで対策が可能です。
ただし概日リズム障害の症状が見られた場合は適切な診療を行うため専門医の診断を受けることが推奨されます。
治療法として光療法・薬物療法がありますが一般的には完治が難しい病気とされています。
「もしかしたら?」と思ったらすぐに専門医へ相談しましょう。

編集部まとめ

陽
「概日リズム障害」は耳慣れない症状だと思いますが、多くの方が発症する可能性があります。
睡眠障害や精神疾患を誘発する恐れがあるので、少しでも心当たりがある方は専門医の診療を受診しましょう。
この記事で概日リズム障害に関する知識を深めていただければ幸いです。
規則正しい生活リズムと適度な運動で体内時計を正確に保ちましょう。

この記事の監修医師