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「冬季うつの原因」はご存知ですか?対策や予防法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/02/04
「冬季うつの原因」はご存知ですか?対策や予防法も解説!【医師監修】

冬季うつ(ウインターブルー)という病名は、聞いたことあるでしょうか。

じつは季節の気候は、身体とこころの健康に影響を与えます。
秋から冬にかけてうつ症状が現れ、春先の3月頃になるとよくなるというパターンを繰り返す(周期性)のが冬季うつ病の特徴です。

今回の記事では、冬季うつ病の概要や主な症状、治療方法などについて解説していきます。

冬場に心身の変調を感じてる方、冬季うつ病について知りたいと考えている方も、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

舘野 歩

監修医師
舘野 歩(東京慈恵会医科大学附属病院)

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東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。現在は「東京慈恵会医科大学附属病院」勤務。専門は精神神経科。日本精神神経学会専門医・精神科指導医、日本森田療法学会認定医、精神保健指定医。東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授。

冬季うつの原因や症状

泣く女性

冬季うつとはどのような病気ですか?

冬季うつ病は、季節性感情障害(SAD)といい、秋から冬にかけてうつ症状が現れ、春先の3月頃になるとよくなるというパターンを繰り返す(周期性)のが特徴です。病気の発症時期として季節性があるというのがポイントで、発症年齢は20歳代前半で、女性に多く、冬季に高緯度地方では増大するといわれます。また明らかな心理的な原因やストレスがないことやライフイベントがないことも診断をするうえで重要です。また季節性感情障害には、うつ状態を繰り返す再発性うつ病と、躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害があります。双極性障害はI型とII型にわけられ、I型はうつ状態と躁状態がおなじくらいの状態で、II型は躁状態の程度が小さい状態です。冬季うつ病では、II型の患者さんの方が多いと言われています。日本人を対象に行なった調査では、冬季うつ病の可能性があるとの報告がされていて2,1%だそうです。

冬季うつの原因を教えてください。

冬季うつ病の発症は、光を浴びる時間と深く関係しているといわれてます。そのため冬季うつ病が多く報告されているのが、おもに冬場日照時間の少ない地方です。朝おきて太陽の光を浴びると目から脳に信号が伝わり、脳内ホルモンのセロトニンが合成され、それにより体内のリズムを調整し睡眠に関係するメラトニンの分泌が抑制されて、さらに体内時計が調整されます。日照時間がすくなることで、セロトニンが減少し体内時計も狂ってしまいます。こうして、睡眠リズムが乱れ、つかれやすかったり、うつ症状が現れてくるのです。

一般的なうつ病と冬季うつの原因は異なりますか?

一般的なうつ病の原因はさまざまなストレスや要因が絡み合い発症します。几帳面で責任感が強かったり物事を悲観的にとらえやすかったりといった性格面の特徴や仕事の過労や人間関係の問題、近しい方の死など患者さん自身にとって大きなストレスになるような周囲の環境が原因となることが多いです。しかし冬季うつ病は、このような明らかな心理的な原因やストレスやライフイベントがないのにうつ状態になります。また、季節に依存し秋から冬にかけて体調をくずすのが特徴で、冬場の日照時間の少なさが原因と言われています。

冬季うつになるとどのような症状が出ますか?

冬季うつ病に見られる症状の多くは、季節性ではない一般的なうつ病と同じです。一般的なうつ病では、眠れなかったり、食欲がないといった代表的な症状が出ます。しかし冬季うつ病では、逆に、睡眠時間が長くなったり、食欲が増すといった症状が出やすくなり体重増加もみられる疾患です。例えば冬の間、朝起きるのが辛く感じて、一日中眠く感じたり、またチョコレートなどの甘いもの、菓子パンなどの炭水化物食品を食べたくなり、まるで冬眠しているようだと表現されます。

冬季うつによる気分の落ち込みへの対策や予防

野島崎灯台の風景

冬季うつによる気分の落ち込みへの対策を教えてください。

冬季うつ病の原因は、日照不足ですから太陽の光を浴びることが大事です。朝太陽の光を浴びることで体内時計が調節されます。太陽の光を浴びることが難しい場合は、部屋の照明を明るくするなどして目から光を取り込み、セロトニンとメラトニンの活動を調整しましょう。また太陽の光が浴びられる地域への旅行もおすすめです。また外出が難しいときは日差しの入る窓際で過ごすことも効果的です。

食生活で気を付けたいポイントを教えてください。

食生活では、セロトニンを増やして、メラトニンが減らないよう注意します。メラトニンは脳の松果体で産生されるホルモンで、必須アミノ酸のトリプトファンを原料(基質)として合成されます。さらにセロトニンも同様に必須アミノ酸トリプトファンから生合成される脳内の神経伝達物質のひとつです。このトリプトファンは人間の体内では作り出すことができないため、食事で摂取する必要があります。トリプトファンはタンパク質に含まれ、体内吸収を助ける食材と組み合わせるのがおすすめです。

  • トリプトファンを含む食材
    肉類、魚介類(ぶり、いわしなど)、豆腐、のり、バナナ、牛乳、チーズなど
  • トリプトファンの吸収を助ける食材
    ビタミンB6(まぐろ、にんにく、鮭、ごま、抹茶など)
    ビタミンB12(青魚、かつお節、いか、レバーなど)

適度な運動は冬季うつの予防につながりますか?

運動することで脳から抗うつ作用のあるホルモンが分泌されます。また屋外で運動することにより日光にあたることができ、冬季うつ病の予防につながります。

冬季うつの治療法

診察する医師と頭痛の患者

冬季うつに光治療は効果がありますか?

季節性うつ病は、第一選択の治療法として高照度光療法が効果的です。これは1〜2時間程度、2,500〜10,000ルクスの高照度の光を照射するというものです。

  • 照度が高ければ1回の照射時間を短くしても効果があります。
  • 照度を高くすると抗うつ効果も比例して高くなります。

治療の効果は1週間程度で改善することが多いといわれ、また中断すると再発する可能性が高いので、冬季の間は毎日行なうのがおすすめです。

医療機関で治療を受けた方がよいのはどのようなケースですか?

症状が毎年冬に出る場合や症状が重く日々の生活に支障をきたす場合は、一度精神科あるいは心療内科の医療機関で相談してみてはいかがでしょうか。

冬季うつの治療法を教えてください。

まずはこの病気は冬場は太陽を浴びることが少なくなることが原因で発症しますので、高照度光療法が第一選択の治療法です。抑うつ症状が強い場合や光療法で効果がないときは、セロトニンなどを増やすSSRIなどの抗うつ薬を併用します。ただしこの病気のなかには、うつ症状と躁状態を繰り返す双極性障害の方もいるため注意が必要です。双極性障害の場合、春に躁に移行していくことがあるため、春や夏ではできるだけ抗うつ薬を減量あるいは中止します。光療法抗うつ薬のほか、認知行動療法つまり物事の考え方、見方を変えていく治療法もあります。抗うつ薬による治療や認知行動療法は冬季うつ病だけでなく、一般的なうつ病でも行われている治療法です。

編集部まとめ

白衣の若い女性
冬季うつ病は季節性があることで、悪くなる時期を予測することができ、早めの対策がとれる可能性がある病気です。特に冬季に太陽を浴びることが少なくなる地方のかたは注意が必要です。

光療法やおくすりによる治療法もあります。また太陽を浴びることのできる地方への旅行もおすすめです。

冬が近づくと体調が悪くなる方など気になる症状が続く場合には、早めに精神科や心療内科を受診することをおすすめします。

この記事の監修医師