「冬季うつ」を予防する可能性の高い「食べ物」はご存知ですか?【医師監修】

冬になると、気分が落ち込みやすくなったりやる気が出なかったりすることはないでしょうか。
それは、冬季うつ(ウィンターブルー)かもしれません。
冬季うつは、季節性うつ病もしくは季節性情動障害とも呼ばれ、秋から冬に発症し春になると自然に回復するサイクルを繰り返す病気です。
女性に多く、20歳前後から徐々に発症するケースがみられ、気分が落ち込むだけではなく身体にもさまざまな症状が現れます。
この記事では冬季うつとは何か、その原因や症状、対策と予防法そして治療法まで詳しく解説します。
毎年冬になると気分や体調が崩れがちな方は参考にしていただければ幸いです。

監修医師:
大迫 鑑顕(医師)
目次 -INDEX-
冬季うつの原因や症状
冬季うつとはどのような病気ですか?
冬季うつの症状を教えてください。
- 過眠:普段よりも睡眠時間が長くなり、日中にも眠気を感じます
- 過食:パンや白米などの炭水化物や甘いものを過剰に摂取する傾向があります
- 体重増加:過食と運動不足が重なり、体重が増える場合があります
これらの症状が現れた場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
どのような原因で発症しますか?
セロトニンは精神の安定や幸福感にも深く関わるため、分泌量が減少すると冬季うつのリスクが高まる可能性もあるでしょう。また、特定の遺伝子変異が関与しているケースも報告されており、遺伝的な要因で発症しやすい人もいる可能性があります。
一般的なうつ病とは違うのでしょうか?
冬季うつの対策・予防法
冬季うつにならないように自分で対策・予防が可能ですか?
睡眠不足はセロトニンの分泌を妨げるため、6〜8時間の十分な睡眠を確保してください。
また、日光を浴びることがセロトニンの分泌を促すことにつながるため、冬季うつ病の対策では重要となります。毎日15分程度の日光浴でも効果があるとされています。屋外で過ごす時間を意識的に増やし、朝や午前中の光を浴びることが効果的です。ストレス解消やバランスのよい食事も大切です。
日照時間の長い地域に旅行することもおすすめです。日常とは異なる環境で気分転換を図りましょう。
予防のために食事面で気を付けるべきことはありますか?
- 動物性タンパク質:肉・魚・卵・乳製品
- 大豆製品:豆腐・納豆・味噌
- ナッツ類:アーモンド・くるみ・カシューナッツ
- 種子類:ごま・ひまわりの種
- バナナ・カボチャ・チーズ
炭水化物やビタミンB6は、トリプトファンからセロトニンへの変換を助ける役割があります。ビタミンB6が多く含まれているのは、マグロやカツオなどの赤身魚や鶏むね肉・バナナやニンニクなどです。炭水化物の摂りすぎには注意が必要ですが、トリプトファンを含む食品をバランスよく摂取し、効率的にセロトニン分泌を促しましょう。
予防のために毎日の生活で注意するべきことを教えてください。
- 規則正しい生活
- 日光浴
- ストレスをためない
毎日同じ時間に起床・就寝することで体内リズムを整えましょう。6〜8時間の十分な睡眠を確保し、寝る前はブルーライトを避けると良い睡眠を得られます。
3食しっかりと食べることが理想ですが、1日最低2食はバランスのよい食事をしましょう。何よりも日光浴は重要で、朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びることで、体内時計をリセットできます。昼間に屋外で15分以上過ごすのもおすすめです。
ストレスをため込まないように、趣味を楽しんだりリラックスできる時間を作りましょう。適度な運動やヨガもおすすめです。冬は屋内に引きこもりがちですが、友人や家族との交流を積極的に持ち、孤独感を解消することも重要です。
冬季うつの治療方法
冬季うつは春になれば自然に治りますか?
また、軽躁もしくは躁状態を挟んで再発を繰り返す場合、双極性障害という別の診断が当てはまる可能性もあり、うつ状態が長期化したり重症化することもあるため注意が必要です。
症状が重い、もしくは日常生活に支障が出ていると感じたら、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。冬季うつには複数の型があり、自分に合った対策や治療法を選択することが大切です。相談機関やサポート団体を活用することも、有効な対策です。
医療機関に相談する目安を教えてください。
- 日常生活に支障が出るほどの強い眠気や倦怠感がある
- コントロールできない過眠症状がある
- 気分の落ち込みが強く仕事や家事など何もする気になれない
- 過食が止まらず、著しい体重増加がある
- 趣味や楽しいことに対する興味や関心がなくなってしまった
- 頭痛や吐き気などの身体症状が強い
- 自殺願望や自傷行為に対する衝動がある
医療機関ではどのような治療を行いますか?
- 高照度光療法
- 薬物療法
- 認知行動療法
高照度光療法は、太陽光に近い強い光を浴びてセロトニンの分泌を促す療法です。特殊なライトを利用して、2,500〜10,000ルクスの高照度の光を1〜2時間程度照射します。早ければ1週間程度で効果を期待できますが、冬の間は継続が推奨されます。
薬物療法は高照度光療法で効果が認められない場合に併用される治療です。脳内のセロトニン濃度を高める抗うつ薬(SSRIなど)が用いられます。春から夏にかけてうつ状態から躁状態に移行することがあり、可能な範囲で減量や中止をしていきます。
うつ症状が強い場合は認知行動療法が検討されるでしょう。心理療法の一つで、考え方や行動パターンを変えることでうつ症状の改善を目指します。
編集部まとめ
冬季うつは、冬が近づくと発症し春になると症状が軽快することが多い季節性のうつ病の一種です。
日照時間の減少や気温の低下などが原因であると考えられています。
気分の落ち込みや意欲の低下といった一般的なうつ病の症状のほかに、過食や過眠などの症状が現れるのが特徴です。
体内時計の調整や幸福感に関係するホルモンであるセロトニンの分泌バランスが崩れることで、冬季うつが引き起こされやすくなります。
セロトニンの分泌が安定するように、規則正しい生活や日光を浴びるなど生活習慣を見直すことで予防や対策ができます。
トリプトファンという栄養素はセロトニンの材料となるので、含有量の多い動物性たんぱく質や大豆製品などを意識的に摂取するとよいでしょう。
炭水化物やビタミンB6を一緒に食べるとトリプトファンを効率的に吸収できます。
冬季うつは冬が終われば自然に軽快することもありますが、放置すると症状の悪化や慢性化がみられることがあり注意が必要です。
日常生活に支障が出るほど重い症状があるときは、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
医療機関では主に、太陽の光に近い強さの光を浴びる高照度光療法や、抗うつ剤を用いた薬物療法が行われます。
日頃からセロトニンの分泌を促すような生活を心がけ、心身ともに健康を保ち、元気に冬を楽しみましょう。
参考文献