「ADHDの診断方法」はご存知ですか?症状や原因も解説!【医師監修】
ADHDと呼ばれる注意欠如・多動性障害という病気をご存知でしょうか。日常生活や社会生活のなかでさまざまな影響を与えることがあり、人間関係の悩みを持つ人も多い傾向にあります。
本記事ではADHDの診断について以下の点を中心にご紹介します。
・ADHDとは?
・ADHDの診断と検査
・ADHDの治療
ADHDの診断について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
大迫 鑑顕(医師)
目次 -INDEX-
ADHDの診断に至るまで
ADHDとは何ですか?
ADHDの主な特徴としては、集中力の欠如や衝動的な行動が挙げられますが、興味のある分野では高い集中力を発揮することもあります。また、ADHDは大人になってから症状が目立つようになり診断されるケースも少なくありません。生涯にわたり続く特性であるため、適切な理解と支援が求められます。
ADHDの主な症状を教えてください
・不注意:日常的な忘れ物や注意の散漫、計画や課題の遂行が難しい、掃除や片付けが苦手、部屋やデスクが散らかりやすい
・多動性:落ち着きがなく、常に何かを動かしている、静かに座っていることが苦手
・衝動性:順番待ちの難しさ、イライラしやすい、衝動買いをしてしまう、思いついたことをすぐに実行してしまう、喋りすぎるなど
これらの症状は表れ方に違いがあり、すべての症状が顕著であるわけではありませんが、日常生活や社会生活に影響を及ぼすことがあります。
ADHDの原因を教えてください
具体的には、脳の前頭葉に位置する前頭前野の調節機能の不均衡が挙げられます。前頭前野は思考や計画、自己抑制など複雑な認知機能を担っており、ADHDの患者さんはここが適切に機能しないため、不注意や多動、衝動的な行動が見られます。
また、神経伝達物質の不足も関係しており、ドーパミンやノルアドレナリンのバランスが重要です。これらの物質が不足すると、神経細胞間の情報伝達がうまく行われないため、ADHDの症状が引き起こされます。さらに、遺伝的要因や環境要因も症状の発現に影響を与えると考えられています。
ADHDの診断・検査方法
ADHDの診断基準を教えてください
診断のためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
A. 12歳以前から不注意または多動性・衝動性の症状が確認される。
B. これらの症状は、家庭、学校、職場など複数の環境で観察される。
C. 症状により社会的、学業的、職業的な活動に顕著な障害が生じている。
D. これらの症状は、ほかの精神疾患に起因するものではないことが明確である。
診断プロセスには、医師の診察のほか、心理検査や家族からの情報提供が含まれることが多く、詳細な臨床的評価が行われます。
DSM-5では、ADHDが子ども時代から成人期にかけて続く可能性を認めており、大人の診断基準も細かく定められています。
ADHDの検査はどのように行われますか?
まず、問診と質問用紙に基づいた評価が行われ、日本ではADHD-RSやConners 3 日本語版などの評価スケールが利用され、行動パターンや症状の一貫性が評価されます。
次に、心理検査で知能や発達の全体的な状況を把握し、発達のバランスを評価します。さらに、器質的疾患を除外するための脳波検査やMRI、血液検査なども必要に応じて行われ、てんかんや甲状腺異常の有無など、ほかの医療状態の影響を確認します。
これらの検査を総合的に判断し、ADHDの診断が行われます。
ADHDの診断を受けるメリット・デメリットは何ですか?
一方で、診断を受けることのデメリットとしては、レッテルを貼られたように感じてしまうことによる精神的な負担や、周囲からの偏見に直面するリスクがあります。また、自己イメージが損なわれることで、無力感や劣等感を感じることもあります。これらの点を理解し、慎重に診断を進めることが重要です。
ADHD診断後の対処法
ADHDはどのような経過をたどりますか?
ADHDは男女差も示唆されており、幼少期には男の子に多く診断される傾向にある一方で、成人期には男女の比率がほぼ等しくなるとされています。また、ほかの精神疾患と共存するケースも少なくないため、それが日常生活への適応を一層難しくしています。
このような背景から、ADHDの症状はただ単に子どもの問題として片付けられるものではなく、成人期においても適切な理解と支援が求められています。
ADHDと診断された際、治療法はありますか?
心理社会的治療
自己のADHD特性を理解し、日々の生活リズムを整えることで、人間関係や社会生活における困難を軽減します。医療スタッフの指導のもとで自己管理の技術を学び、環境を整えます。
薬物療法
お薬を服用し、神経伝達物質の不均衡を調整することにより、不注意や衝動性、多動性といったADHDの核となる症状を緩和します。うつ病や不眠などを伴っている場合は、抗うつ薬や睡眠薬を併用し処方されることもあります。
また、家族や周囲の理解と支援も重要であり、適切な治療とサポートが組み合わされることで、より充実した生活になります。
ADHDの診断後、自身で行える対処法はありますか?
日常生活では、物忘れを防ぐためにスマートフォンのアラームやカレンダーアプリを活用して予定管理を行うことや、重要な情報はノートに記録するなどして、外部のツールを用いる方法があります。また、作業スペースを整理整頓することで集中力を高めることもおすすめです。
加えて、適切な休息や運動を取り入れることも、気分の安定やストレス軽減、集中力の向上につながります。
家族または職場や学校でADHDと診断された方がいる場合、注意点はありますか?
家庭や学校では、注意散漫や衝動的な行動を改善するために、具体的なルールや手順を明確にすると効果的とされています。また、達成可能な小目標を設定し、それを達成した際には積極的に認めることが子どもの自尊心を支えます。
職場では、ADHDの特性に合わせた仕事の進め方や、環境の工夫が役立ちます。例えば、中断の少ない静かな環境を提供する、必要な情報を視覚的に表示するなど配慮するとよいでしょう。そして、ストレスが行動に直接影響するため、定期的な休息やリラックスできる時間を設けることが推奨されます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
編集部まとめ
ここまでADHDの診断についてお伝えしてきました。ADHDの診断の要点をまとめると以下のとおりです。
・ADHDとは発達障害の一種で、主な特徴に集中力の欠如や衝動的な行動が挙げられ、日常生活や学業、仕事において困難をもたらすことがある
・ADHDの診断は診断マニュアル(DSM-5)を基準に行われ、医師の診察のほか、心理検査や家族からの情報提供、器質的疾患を除外するための脳波検査やMRI、血液検査なども必要に応じて行われる
・ADHDの治療は、主に心理社会的治療と薬物療法が中心
ADHDは、自己理解を深めること、そして小さな成功を積み重ねていくことが、自信を育て、前向きな気持ちを支えることにつながります。日々の生活を少しでも楽にするための方法を模索していきましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。